8月27日 電子申請が義務となる労働安全衛生関係の手続き

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

社会保険の手続きを始めとし、様々な手続きについて、徐々に電子化される流れが進んでいます。これは、電子申請の義務化や、電子申請の利便性が向上したことの影響が大きいと言われています。そして、2025年1月からは、労働安全衛生関係の一部の手続きについて電子申請が義務化されることが決まっています。

 

[1]電子申請の対象となる手続き
 電子申請が原則義務化されるのは以下の手続きです。

  • 労働者死傷病報告
  • 総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告
  • 定期健康診断結果報告
  • 心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)結果等報告
  • 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
  • 有機溶剤等健康診断結果報告
  • じん肺健康管理実施状況報告

 義務化される手続き以外にも、足場/局所排気装置等の設置・移転・変更届(労働安全衛生法第88条に基づく届出)、特定化学物質などにかかる各種特殊健康診断結果報告など、多くの届出が電子申請することができます。

[2]電子申請のメリット
 電子申請を活用することで、労働基準監督署へ出向くことなく、時間や場所にとらわれず手続きすることが可能となります。電子申請と聞くと、電子署名や電子証明書が必要なイメージがありますが、電子申請が義務化される手続きにおいては不要です。なお、電子申請を行う際には以下の3ステップが求められます。

STEP1 e-Govアカウント登録
STEP2 ブラウザの設定
STEP3 アプリケーションのインストール

[3]労働者死傷病報告の提出に際して誤解しやすい点
 電子申請が義務化される手続きのなかで、労働者死傷病報告の提出について誤解しやすいポイントがありますので、改めて確認しましょう。労働者死傷病報告は、労災保険の休業補償給付を受けたときに提出するものだと誤解されることがありますが、労働災害が発生した際に提出すべきものであるため、休業4日未満で労災保険の休業補償給付を受けない場合であっても、提出する必要があります。これは、労働者死傷病報告の目的が労災事故を把握し、事故の防止につなげることにあるためです。提出する根拠は、労災保険法ではなく、労働安全衛生法および労働安全衛生規則にあります。

 電子申請の義務化まで数ヶ月ありますが、今のうちから電子申請に対応できるように準備を進めておきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます
厚生労働省「労働局・労働基準監督署への申請・届出はオンラインをご活用ください

 

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8月20日 引き続きトップとなった「いじめ・嫌がらせ」の相談件数

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

先月、厚生労働省より「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」の集計結果(以下、「集計結果」という)が公表されました。個別労働紛争解決制度とは、個々の労働者と事業主との間の労働に関する紛争について実情に即した迅速かつ適正な解決を図るためのものであり、具体的には、(1)都道府県労働局内や労働基準監督署内に設置された総合労働相談コーナーでの総合労働相談、(2)都道府県労働局長の助言・指導制度、(3)紛争調整委員会のあっせん制度の3つの仕組みがあります。

 

[1]集計結果の内容
 今回の集計結果をみると、令和5年度に寄せられた総合労働相談件数は1,210,400件と4年連続で120万件を超え、高止まりの状態となっています。
 また、労働基準法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げ等のいわゆる民事上の個別労働紛争に関する相談件数の推移をグラフ化したのが下図※になります。内容別で見ると、トップは「いじめ・嫌がらせ」に関する相談の122,976件で、不動の首位となっています(図はクリックで拡大されます)。
※2022年4月の改正労働施策総合推進法の全面施行に伴い、これまで「いじめ・嫌がらせ」に含まれていた同法上のパワーハラスメントに関する相談は全て別途集計することとなされたため、労働施策総合推進法に関するパワーハラスメントの相談件数(2022年は50,840件、2023年は62,863件)を加えています。

[2]パワーハラスメントの実態と防止措置
 「いじめ・嫌がらせ」は、パワーハラスメントの一類型となりますが、2024年5月に公表された令和5年度厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書によると、過去3年間に勤務先で受けたハラスメントとしては、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為の中では、パワーハラスメントが19.3%ともっとも多く、次いで顧客等からの著しい迷惑行為が10.8%、セクシュアルハラスメントが6.3%となっています。


 受けたパワーハラスメントの内容については、「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)」が48.5%ともっとも多くなっています。パワーハラスメントの防止対策のため、社内で研修を実施することがありますが、例えば「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)」との指摘を受けることなくコミュニケーションを図るため、どのように注意すべきかを具体的に解説して、受講する従業員に理解してもらうとよいでしょう。

 そもそも労働トラブルに発展させないための、予防的な労務管理が重要になってきます。取り組む際に何かお困りごとがございましたら早めに当事務所までご連絡ください。

 

■参考リンク
厚生労働省「「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します
厚生労働省「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況について
厚生労働省「「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します

 

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8月6日 2025年4月から厳格化される育児休業給付の延長手続き

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育児休業の延長・再延長時には、一定の要件を満たした場合、雇用保険の育児休業給付金についても支給が延長されることになっています。2025年4月1日より、この育児休業給付金の延長・再延長時の手続きが厳格化されます。以下では、この内容をとり上げます。

[1]手続き変更の背景

 今回、延長・再延長時の育児休業給付金の手続きの変更に関しては、令和5年の地方分権改革に関する提案募集において、自治体から「保育所等への入所意思がなく、給付延長のために申し込みを行う者への対応に時間が割かれる」、「意に反して保育所等への入所が内定となった方の苦情対応に時間を要している」として、見直しの要望があったという背景があります。これを受けて、「令和5年の地方からの提案等に関する対応方針」(2023年12月22日閣議決定)において、ハローワークで延長可否を判断することを明確化する方向で検討が行われ、検討の結果に基づいて必要な措置を講ずるとされていました。今回、これを受けて、雇用保険法施行規則が改正され、手続きの見直しが行われました。

[2]2025年4月以降の手続き
 2025年4月以降の延長時には、市区町村の発行する入所保留通知書などの確認に加え、保育所等の利用申し込みが、速やかな職場復帰のために行われたものであると認められることが必要になります。具体的には、次の書類を、延長時・再延長時の「育児休業給付金支給申請書」に必ず添付する必要があります。

  • 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
  • 市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し
  • 市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(入所保留通知書、入所不承諾通知書など)

 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書については、既に厚生労働省のホームページにおいて様式が公開されています。様式には保育所等の申込みの状況を記載することになります。裏面には記入する上での注意事項があり、従業員本人から会社に記載について質問が入る可能性があるため、先に目を通しておくとよいでしょう。

 今回の変更となる手続きの対象は、子が1歳に達する日または1歳6ヶ月に達する日が2025年4月1日以後となる従業員で、育児休業給付金の支給対象期間の延長を行う場合となります。円滑な手続きの実施のためには、書類を揃えておくように事前に従業員に案内しておくことが重要になります。厚生労働省から公開されているリーフレットを活用するなどして、早めに対象となる従業員に周知しておきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「育児休業給付金の支給対象期間延長手続き
厚生労働省「2025年4月から保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります

 

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7月30日 増加する精神障害の労災支給決定件数 求められるハラスメント対策

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多くの企業で、従業員がメンタルヘルス疾患を発症し、欠勤や休職をするケースが増加しています。その中には、仕事による強いストレスがその原因となっている事例もあるようです。2024年6月に発表された厚生労働省の資料によると、精神障害を理由とした労災の請求件数、そして支給決定件数が大幅に増加しています。そこで以下では発表された資料の内容を確認した上で、企業に求められる対策について見ていきます。

 

[1]精神障害の労災補償状況
 精神障害の労災補償状況は図のとおりとなっています。2023年度の請求件数は3,575件で、前年度の2,683件から892件の大幅増加となりました。請求件数は過去最多となり、今回、3,000件を初めて超えています。

 また、支給決定件数については883件となり、前年の710件から173件の増加となり、こちらも過去最多となっています。そして、支給決定件数の中で、多い業種(中分類)の上位4つをみてみると、社会保険・社会福祉・介護事業112件、医療業105件、総合工事業57件、道路貨物運送業56件で、医療・福祉の業種で多いことが分かります。認定率については34.2%で、申請の3件に1件の割合で労災として認定されています。
※図はクリックで拡大されます。

 

[2]具体的な出来事
 支給の決定は、その傷病に繋がる具体的な出来事があったかを確認して判断されますが、支給決定の内容を具体的な出来事別に分類すると、その上位は以下の通りとなっています。

  1. 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(157件)
  2. 業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(111件)
  3. セクシュアルハラスメントを受けた(103件)
  4. 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった(100件)
  5. 特別な事情(71件)
  6. 同僚等から、暴行又はひどいいじめ・嫌がらせを受けた(59件)

 支給決定件数(883件)のうち、上司等からのパワーハラスメント(157件)がトップとなっています。近年は多くの企業でパワーハラスメント防止対策が進められていますが、この問題はまだまだ解決には至っていません。定期的に研修を開催したり、管理職同士で注意しあえる関係を作ったりするなど、継続的な防止対策が求められます。

 

■参考リンク
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

 

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7月23日 来年4月に創設される「共働き・共育て」のための給付金

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

昨年12月25日に閣議決定された「こども未来戦略」では、共働き・共育ての推進として、「男性育休の取得促進」、「育児期を通じた柔軟な働き方の推進」および「多様な働き方と子育ての両立支援」の3つの方針が掲げられました。そこで今回は、これらの具体的な対応策として、2025年4月1日から始まる雇用保険の給付金をとり上げます。

 

[1]出生後休業支援給付金の創設
 育児休業を取得すると、従業員(雇用保険の被保険者)は所得の補てんとして育児休業給付を受け取ることができますが、育児休業を取得せずに給与を受け取ることと比較し、手取額が低くなります。このように手取額が低くなることが、男性の育児休業の取得が進まない理由の一つと言われています。
 その解消を目的として、子どもの出生直後の一定期間以内に、両親ともに14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額が「出生後休業支援給付金」として支給されることになります。この給付金に、出生時育児休業給付金または育児休業給付金をあわせると、給付率が80%となり、手取りとしては10割相当が支給される仕組みとなっています。なお、一定期間とは、男性が子どもの出生後8週間以内、女性が産後休業後8週間以内です。
 従業員の中には、配偶者が専業主婦(夫)であったり、ひとり親として育児をしていたりすることもあるため、配偶者が育児休業を取得していない場合であっても、出生後休業支援給付金が支給されます。

[2]育児時短就業給付金の創設
 育児休業中の支援の他に、2歳未満の子どもを養育するために、時短勤務をすることで給与額が下がる場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を上限に「育児時短就業給付金」が支給されることになります。
 この給付金は、単に時短勤務を推奨するものではなく、育児休業よりも時短勤務を、さらには時短勤務よりも従前の所定労働時間で勤務することを推進する目的で創設されており、これを前提に10%という給付率が決められています。なお、時短後に支給される賃金と給付金の合計額が時短前の賃金を超えないように給付率を調整する仕組みです。

 出生後休業支援給付金の創設により、出生後育児休業(産後8週間以内に4週間を上限として2回に分けて取得できる休業)の申出の増加が予想されます。また、これまで育児の時短勤務は女性従業員の利用が中心でしたが、今後は男性従業員の活用が増えてくることも予想されます。今後の申請方法や、それに沿った社内の手続きの流れを確認していく必要があります。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年雇用保険制度の改正内容について(子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律)
こども家庭庁「こども未来戦略(リーフレット等)

 

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7月16日 重要となる職場の熱中症予防対策

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2023年の職場における熱中症の発生状況を見ると、4日以上休業した死傷者数は1,106人、そのうち死亡者数は31人となり、前年を上回る結果となりました。厚生労働省の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」(以下、「キャンペーン」という)も7月1日から7月31日までを重点取組期間としており、今夏についても積極的に熱中症の予防対策が求められます。

 

[1]熱中症の定義
 熱中症とは、高温多湿な環境下において、体内の水分と塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどしたりして発症する障害の総称で、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温などの症状が現れるとことです。それぞれの症状によって、熱失神、熱けいれん、熱疲労および熱射病といった病名がつけられています。

[2]実施期間の取り組み
 キャンペーンの実施期間は5月1日から9月30日までとされていますが、この期間、以下の3点について重点的な対策の徹底が求められています。

  1. 暑さ指数(WBGT)の把握とその値に応じた熱中症予防対策を実施すること
  2. 作業を管理する人および労働者に対してあらかじめ労働衛生教育を行うこと
  3. 糖尿病、高血圧症など熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を有する人に対して、医師等の意見を踏まえた配慮を行うことなど

[3]重点取組期間の取り組み
 7月1日から7月31日までの重点取組期間中においては、実施すべき事項として、以下の内容が挙げられています。これらの項目を確実に実施しましょう。

  • 暑さ指数の低減効果を再確認し、必要に応じ対策を追加
  • 暑さ指数に応じた作業の中断等を徹底
  • 水分、塩分を積極的に取らせ、その確認を徹底
  • 作業開始前の健康状態の確認を徹底、巡視頻度を増加
  • 熱中症のリスクが高まっていることを含め教育を実施
  • 体調不良の人に異常を認めたときは、躊躇することなく救急隊を要請

 参考リンクにある厚生労働省「学ぼう!備えよう!職場の仲間を守ろう!職場における熱中症予防情報」では、「働く人の今すぐ使える熱中症ガイト」が公開され、予防法として3つの注意点や暑熱順化などの情報が掲載されています。これらの内容も活用しながら、予防対策を徹底していきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(職場における熱中症予防対策)
厚生労働省「学ぼう!備えよう!職場の仲間を守ろう!職場における熱中症予防情報

 

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7月9日 3年連続増加となった休業4日以上の死傷者数

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

7月1日から7日までは全国安全週間とされており、厚生労働省・都道府県労働局から各事業場に対して、積極的な労働災害防止活動の実施が働きかけられることになっています。これに関連して、先日、厚生労働省より昨年(令和5年)の労働災害発生状況が公表されました。以下では、労働災害による死傷者数と厚生労働省の取組みについてとり上げます。

 

[1]労働災害による死傷者数

 2023年1月から12月までの労働災害(新型コロナウイルス感染症へのり患によるものを除く)による休業4日以上の死傷者数(以下、「死傷者数」という)は135,371人で、前年より3,016人の増加となり、3年連続で増加となりました。
 業種別でみてみると、製造業の27,194人(対前年比500人増)が一番多く、小売業を含む商業が21,673人(同29人減)、社会福祉施設を含む保健衛生業が18,786人(同1,549人増)、陸上貨物運送事業が16,215人(同365人減)と続いています。
 業種別に事故の型別をみると、製造業では機械等による「はさまれ・巻き込まれ」が最多で、「動作の反動・無理な動作」が続いています。小売業では「転倒」が最も多く、「動作の反動・無理な動作」「墜落・転倒」が続いています。社会福祉施設では「動作の反動・無理な動作」が最も多く、「転倒」が続いています。

[2]厚生労働省の取組
 労働災害による死傷者数における状況を受け、厚生労働省では、小売業、社会福祉施設で多発している「転倒」や「動作の反動・無理な動作」等の減少を図るため、第14次労働災害防止計画に基づき、「労働者(中高年齢の女性を中心に)の作業行動に起因する労働災害防止対策」として、以下の事項を中心に取り組むとしています。

  • 中高年齢の女性労働者に多い転倒災害の発生状況の周知を行うとともに、転倒災害防止のための基本的事項(チェックリスト)の周知指導を行う。
  • エイジフレンドリー補助金等により、転倒災害防止等に資する装備や設備の導入のほか、理学療法士や健康運動指導士等の専門家による労働者の身体機能の維持改善のため取組みの支援を行う。
  • アプリ、動画等を活用した効率的・効果的な安全衛生教育(転倒防止教育を含む)の手法の普及啓発を行う。
  • 事業者による自発的な転倒災害防止対策の取組みの促進のため、転倒災害等による損失額の「見える化」及びその周知啓発を進めるほか、ナッジによる転倒災害防止対策等の行動経済学的アプローチについて引き続き研究を進める。

 労働災害を防止するためには、各事業場の安全衛生管理体制を確認し、不十分な場合は早めに整えていくことが求められます。また、安全作業マニュアルの整備・見直しを実施し、労働災害の防止につなげていきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和5年の労働災害発生状況を公表
厚生労働省「令和6年度「全国安全週間」を7月に実施

 

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7月2日 特別休暇を設ける際のポイントと注目を浴びる孫休暇

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多くの会社では、年次有給休暇のほかにも従業員に慶弔が生じた際などに休暇を与える「特別休暇」を設けています。特別休暇は任意の制度であることから、安定的な運用を行うには、細かな取扱いのルールを決めておくことが重要です。以下では、その取扱いルールを規定する上でのポイントと最近注目を浴びる孫休暇をとり上げます。

 

[1]特別休暇の種類
 厚生労働省作成のパンフレット「特別休暇制度導入事例集2023」では、特別休暇を以下の3つに分けています。

  1. 年次有給休暇の取得促進に資する特別休暇
     例:病気休暇(有給)
  2. 予測できない事情に備えた特別休暇
     例:裁判員休暇・犯罪被害者等の被害回復のための休暇・災害休暇
  3. 従業員の多様な活動を支援する特別休暇
     例:ボランティア休暇・ドナー休暇・自己啓発休暇

[2]特別休暇を設ける際のポイント
 休暇は就業規則への必要記載事項になることから、特別休暇を設ける場合、就業規則等へ規定する必要があります。その際に検討するポイントとして、以下の項目が挙げられます。

  1. 特別休暇を取得できる従業員の範囲
     特別休暇はその趣旨に基づき、対象者を決定することが必要です。例えば、勤続1年以上の従業員や試用期間満了後の従業員など、対象者を限定することが可能です。
  2. 特別休暇の対象となる事由と休暇日数
     従業員の結婚や配偶者の出産、身内の不幸など、特別休暇の対象とする事由(取得目的)は様々です。会社において特別休暇を設ける事由や、そのときの休暇日数を検討します。
  3. 特別休暇取得時の賃金の取扱い
     年次有給休暇を取得したときには、その名称の通り、有給休暇として「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」等の支払いが会社に求められます。一方で、特別休暇を取得したときの賃金の取扱いについては、会社が自由に定めることができます。一般的に慶弔に関する特別休暇は、祝福やお悔やみの意味から有給とする会社が多いことを前提に取扱いを検討するとよいでしょう。

[3]注目を浴びる孫休暇
 最近、自治体等で、孫休暇を設ける動きが見られます。これは、祖父母である従業員が孫の世話や看病のために取得できる休暇です。子育て世代を支援し、子育てを社会全体で行う機運を醸成する目的として、創設を検討する動きが見られます。
 育児・介護休業法では規定されていない休暇であるものの、育児の支援策の一環として創設が期待される休暇でもあります。

 特別休暇の運用において、複数日取得できる休暇を分割して取得する申出があったり、事由が発生した日から相当程度の期間をおいて取得する申出があったりと、会社が対応に困ったというケースもあるでしょう。この機会に、過去の事例を振り返り、規定を見直してもよいかもしれません。

■参考リンク
働き方・休み方改善ポータルサイト「特別な休暇制度-資料

 

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6月25日 今国会で改正された育児・介護休業法の概要

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2024年の通常国会で改正育児・介護休業法が成立し、同年5月31日に公布されました。2025年4月1日から段階的に施行されるため、その概要を確認しましょう。

 

[1]子どもの年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充

  1. 柔軟な働き方を実現するための措置等(公布後1年6ヶ月以内の政令で定める日に施行)
     3歳から小学校就学前の子どもを養育する従業員について、始業時刻等の変更、テレワーク等、保育施設の設置運営等、新たな休暇の付与および短時間勤務制度の5つの選択肢の中から、会社が2つ以上の制度を選択して導入し、従業員はその中から1つを利用できるようすることが義務づけられます。 
  2. 残業免除の対象者の拡大(2025年4月1日施行)
     現行、3歳に満たない子どもを養育する従業員は、請求することで所定外労働の制限(残業免除)の制度を利用できますが、この制度の対象となる従業員の範囲が、小学校就学前の子を養育する従業員にまで拡大されます。 
  3. 子の看護休暇の見直し(2025年4月1日施行)
     現行の「子の看護休暇」は、子どもの病気やけが、予防接種・健康診断の際に取得できるものですが、これらの取得事由の他に、感染症に伴う学級閉鎖等や入園(入学)式、卒園式が追加されます。これに合わせて休暇の名称も「子の看護等休暇」に変更となります。
     また、対象となる子どもの範囲が、現行の小学校就学の始期に達するまでから、小学校3年生修了までに延長されます。さらに、労使協定の締結により除外できる従業員について「引き続き雇用された期間が6ヶ月未満」という要件が廃止されます。 
  4. 個別の意向聴取・配慮の義務化(公布後1年6ヶ月以内の政令で定める日に施行)
     妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、従業員の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が会社の義務となります。

[2]育児休業の取得状況の公表義務の拡大(2025年4月1日施行)
 現行、従業員数1,000人超の企業に公表が義務づけられている育児休業取得状況の公表について、従業員数300人超の企業に拡大されます。

 

[3]介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等(2025年4月1日施行)

  1. 個別周知・意向確認の措置、情報提供の義務化
     介護に直面した旨の申出をした従業員に対し、介護両立支援制度等について個別の周知・意向確認を実施することが会社に義務づけられます。また、会社は、介護に直面する前の早い段階(40歳等)の従業員に対して、介護両立支援制度等に関する情報提供を行うことが必要になります。
  2. 雇用環境の整備の義務化
     仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備として、介護休業に係る研修の実施や介護休業に係る相談窓口設置等の複数ある制度の中から1つ以上を選択して実施することが会社の義務となります。 
  3. 介護休暇の対象者の変更
     労使協定の締結により除外できる従業員について「引き続き雇用された期間が6ヶ月未満」が廃止されます。この廃止の内容は子の看護休暇と同様のものです。

 このほかにも、3歳に満たない子どもを養育する従業員や、要介護状態の対象家族を介護する従業員がテレワークを選択できるような制度とすることが会社の努力義務となります。詳細は政省令の公布を待って、今後、厚生労働省から周知されると思われます。

 

■参考リンク
厚生労働省「育児・介護休業法について

 

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6月18日 今国会で改正された雇用保険法の注目ポイント

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

現在、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる従業員については、雇用保険の被保険者となります。2024年の通常国会で改正雇用保険法が成立し、この被保険者となる従業員の範囲が拡大することになりました。施行日は2028年10月1日とまだ先ですが、どのように変わるのかを確認しておきましょう。

 

[1]雇用保険の適用拡大
 雇用保険の被保険者でなければ、基本手当(いわゆる失業手当)や、育児休業取得時の育児休業給付等は受給できません。働き方や生計維持のあり方の多様化が進展している中で、週の所定労働時間が短い労働者が増えています。そのような背景から、雇用保険の被保険者の範囲を拡大する必要があると判断され、「1週間の所定労働時間が20時間以上」という要件が「1週間の所定労働時間が10時間以上」に変更されることになりました。

[2]被保険者期間の算定基準
 基本手当を受給するには、退職日前2年間に、雇用保険の被保険者であった期間が12ヶ月以上(倒産・解雇等の理由により退職した場合は退職日前1年間に6ヶ月以上)必要になります。ここでの「1ヶ月」とは、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ある月または賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上である月を指します。
 適用拡大に伴い、被保険者の賃金の支払の基礎となった日数が6日以上ある月または賃金の支払の基礎となった時間数が40時間以上である月を「1ヶ月」とすることに変わります。

 

[3]給付制限の見直し
 現在は、自己都合で退職した者が基本手当を受給しようとすると、原則として2ヶ月間の給付制限期間(基本手当が支給されない期間)が設けられています。

 今回の改正で、退職した後や、退職日前1年以内に、一定の教育訓練を受講した場合には、この給付制限が解除されることになりました。また、2ヶ月間の給付制限期間を1ヶ月に短縮する通達改正が行われる予定です。なお、現状、5年間で3回以上、自己都合で離職した場合には給付制限期間が3ヶ月となりますが、この点は改正されない予定です。
 この給付制限の見直しは、適用拡大に先立ち、2025年4月1日に施行されます。

 今回の適用拡大により、被保険者となる従業員が増えることで、雇用保険料の会社負担の増加、そして、各種手続き数の増加による事務負担が生じます。適用拡大が施行されるまでにはまだ時間がありますが、特に短時間のパートタイマー・アルバイトが多い企業では、施行後の影響を事前に確認しておきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要

 

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