12月17日 長時間労働者への実施が求められる医師の面接指導

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

長時間労働者に対する医師の面接指導は、過重労働対策として重要な取り組みです。実際に、この面接指導を実施するにあたり、制度の内容、面接指導の実施後に行うべき対応について押さえておく必要があります。以下では、この内容を確認します。

 

[1]医師による面接指導制度とは
 労働時間の管理は長時間労働にならないように対応することが最も重要ですが、対応を進めていても、状況によっては長時間労働が発生することがあります。そのため、長時間労働が発生した後には、医師による面接指導の確実な実施が重要となります。
 この面接指導は、長時間の労働により疲労が蓄積し健康障害発症のリスクが高まった労働者に対し、行われるものです。医師が面接をすることにより、その労働者の健康の状況を把握し、これに応じて本人に対する指導を行うとともに、その結果を踏まえた措置を講じることになります。
 面接指導の実施が求められる者は、以下の通りです。

  1. 労働者(裁量労働制、管理監督者含む)
    • 1ヶ月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労蓄積があり面接を申し出た人
  2. 研究開発業務従事者
    • 1の基準に該当する人または、1ヶ月100時間超の時間外・休日労働を行った人
  3. 高度プロフェッショナル制度適用者
    • 1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合のその超えた時間について1ヶ月100時間を超えて行った人

 対象となる人を確実に洗い出し、医師による面接指導を実施していく必要があります。

 

[2]事後措置の実施
 面接指導の実施後、企業は実施した医師から事後措置に関する意見を受領し、就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮や深夜業の回数の減少等、必要な措置を講じます。
 また、面接指導により労働者のメンタルヘルス不調を把握した場合は、必要に応じて精神科医等と連携をしつつ対応を図ることが求められます。

 働き方改革において、産業医の位置付けが大きくなり、産業医を選任した事業所では、時間外・休日労働時間が1ヶ月80時間を超えた労働者の氏名やその労働者の1ヶ月80時間を超えた時間に関する情報等を、産業医に提供する必要があります。この機会に、面接指導の実施や情報提供の流れが適切にできているか、確認してみるとよいでしょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「過重労働による健康障害を防ぐために

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

12月10日 36協定の限度時間を超えて時間外労働をさせる際の注意点

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

年末や年度末に向けて、業務が繁忙となり、「時間外労働・休日労働に関する協定」(以下、「36協定」という)に定める限度時間を超えて時間外労働を行わざるを得ないケースが発生しがちです。そこで今回は、そうした場合に求められる手続きや注意点をとり上げます。

 

[1]特別条項の有無と手続きの確認
 そもそも従業員に36協定に定める限度時間(月45時間など)を超えて時間外労働をさせるためには、36協定に特別条項を設ける必要があります。よってまずは締結している36協定に特別条項を設けられているかの確認をします。特別条項には、限度時間を超えて労働をさせる際の手続きが定められているため、その手続きを取った上で時間外労働を命じることとなります。例えば、「過半数代表者への申し入れ」とされている場合には、事前に会社が従業員の過半数代表者へ限度時間を超えた時間外労働を命じる旨を書面等で申し入れ、その記録を残しておくことが求められます。

 

[2]特別条項を適用する際の注意点
 実際に特別条項を適用し、時間外労働を命じる際には、「1箇月(時間外労働及び休日労働を合算した時間数。100時時間未満に限る。)」の項目で定めた以下の2点について特に注意が必要です。

  1. 限度時間を超えて労働させることができる回数
  2. 延長することができる時間数及び休日労働の時間数

 例えば限度時間を超えて労働させることができる回数を6回と定めている場合、36協定で定めた1年のうち6回(6ヶ月)までしか特別条項を適用することができません。そのため、従業員ごとに適用した回数をカウントし、6回以下となるように管理が必要です。
 また、この特別条項を設ける場合の前提条件として、法令で上回ることができない労働時間数等の基準が設けられています。具体的には、以下の1から4のすべてを満たす必要があります。

  1. 時間外労働が年720時間以内
  2. 時間外労働と法定休日労働の合計が月100時間未満
  3. 時間外労働と法定休日労働の合計について、2ヶ月平均、3ヶ月平均、4ヶ月平均、5ヶ月平均、6ヶ月平均(以下、「2~6ヶ月平均」という)がすべて1ヶ月当たり80時間以内
  4. 時間外労働が月45時間(※)を超えることができるのは年6ヶ月まで
    ※3ヶ月を超える1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間

 そのため、1ヶ月の時間外労働時間数の上限を90時間と協定しているケースにおいて、その月の時間外労働時間数が90時間で協定の範囲に収まっていたとしても、上記3のとおり2~6ヶ月平均で月80時間以内という基準を満たすためには、その翌月は70時間以内に収める必要があります。単月の管理のみではなく、複数月の時間数の管理も必要になります。

 また、特別条項を適用した従業員に対して、会社は36協定に定めた従業員の健康および福祉を確保する措置を実施し、この実施状況に関する記録を36協定の有効期間中および有効期間の満了後3年間保存する必要があります。実施した際には必ず記録を残しておきましょう。

 

 

■参考リンク
厚生労働省「時間外労働の上限規制
厚生労働省「時間外労働の上限規制わかりやすい解説

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

12月3日 次世代法における一般事業主行動計画の策定等と改正

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

急激な少子化の進行に対応して、次代の社会を担う子どもの健全な育成を支援するため、2005年に次世代育成支援対策推進法(以下、「次世代法」という)が施行されました。2025年3月末までの時限立法でしたが、2024年の通常国会で2035年3月末まで延長され、また一部の内容が改正されたことから、法律のポイントと改正点を確認します。

 

[1]行動計画の策定・変更
 次世代法では、次世代育成支援のための一般事業主行動計画(以下、「行動計画」という)の策定・届出、公表・周知を、従業員数100人超の企業に義務付けています。
 行動計画では、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むに当たり、以下の項目を定めるものです。

[行動計画に定める項目]

  1. 計画期間
  2. 目標
  3. 目標達成のための対策およびその実施時期

 企業によって、仕事と子育ての状況に違いがあります。そのため、どのような行動計画を策定するかは、企業の判断に委ねられています。ただし、今回の改正では、行動計画に育児休業取得の状況(男性の育児休業等取得率)や労働時間の状況(フルタイム労働者の各月の時間外・休日労働時間数等)に関する数値目標を設定することが義務付けられました。

[2]自社の状況の把握・分析
 行動計画を効果的なものにするためには、自社の現状の課題に沿った内容を策定する必要があります。そのため、今回の改正では、行動計画策定・変更時に、自社の育児休業の取得状況や労働時間の状況を把握することも企業に義務付けています。改正法施行後に新たに策定する行動計画は、改善すべき事情を分析した上で、分析結果を勘案して策定をすることとなります。

 

[3]育休取得率の公表義務拡大
 育児・介護休業法の改正により、現在、従業員数1,000人超の企業を対象に義務付けられている育児休業の取得状況の公表が、2025年4月以降、従業員数300人超の企業に拡大されます。
 若年層の採用においては、育児休業の取得状況に着目する者も多くいることを念頭に置くと、自社の状況を把握・分析し、効果的な対応を取っていくことは人材採用の観点からも重要となります。

 改正次世代法の施行は、2025年4月1日であり、施行日以降に開始または内容を変更する行動計画から義務の対象となります。自社の状況の把握には時間を要することもありますので、特に行動計画の策定等が義務とされている企業では、現在の行動計画の内容を確認し、早めの取組みを進めましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「次世代育成支援対策推進法

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

11月26日 改めて確認したい労働時間の取り扱い

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

9月に厚生労働省から労働時間の適正把握に関するリーフレット「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」(以下、「リーフレット」という)が公開されました。以下では、このリーフレットの内容と労働時間を取り扱う際の注意点についてとり上げます。

 

[1]労働基準法違反とされる取り扱い
 本リーフレットの内容の多くは「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の重要箇所となっていますが、今回は労働時間の端数処理に関して、以下の取り扱いが労働基準法違反となることが示されています。
 (1) 勤怠管理システムの端数処理機能を使って労働時間を切り捨てている
 (2) 一定時間以上でしか残業申請を認めない
 (3) 始業前の作業を労働時間と認めていない
 この中で、「(1)勤怠管理システムの端数処理機能を使って労働時間を切り捨てている」という項目については、勤怠管理システムの端数処理機能を設定し、例えば日々の時間外労働時間のうち15分に満たない時間を一律に切り捨て(丸め処理)をしている例が違反事例として挙げられています。一番のポイントは、労働時間であるにも関わらず切り捨てられていることです。この機会に、自社の勤怠管理システムの端数処理機能の設定を確認し、取り扱いに問題があれば対応を検討しましょう。

[2]労働時間を取り扱う際の注意点
 適正な労働時間管理を行うためには、そもそも労働時間の定義を確認しておくことが重要です。労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことを言い、使用者の明示または黙示の指示によって、労働者が業務に従事する時間は労働時間となります。
 具体例を挙げるとすれば、通勤ラッシュの回避等の理由で、労働者が自発的に始業時刻より前に会社に到着するようなケースがあります。このケースにおいては、始業時刻までの間、業務に従事しておらず、業務の指示も受けていないような場合には、労働時間に該当しませんが、業務を行っている場合は、黙示の指示があったとされる可能性があります。そのため、始業時刻までの時間に業務を行う必要がなければ、始業時刻になってから業務を開始するよう労働者に周知・徹底することが求められます。会社としては、後になって労働時間だとの指摘を受けないように対応しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

11月19日 12月2日から変わる社会保険の資格取得手続き

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

2024年12月2日以降、現行の健康保険証が発行されなくなり、マイナンバーカードを健康保険証として利用登録する「マイナ保険証」の本格運用が開始されます。これに伴い、従業員が入社したときの社会保険の手続き等が一部変更になるため、その内容を確認しておきましょう。

 

[1]現行の健康保険証の発行
 現行の健康保険証は、2024年12月2日以降は、発行されなくなります。これは、新たに資格取得をする従業員はもちろんのこと、家族が被扶養者として認定を受けるときも同様です。また、婚姻等で氏名変更となる場合や現行の健康保険証を紛失した場合に関しても、再発行は行われません。
 なお、現行の健康保険証が発行されるタイミングは、交付年月日を基準とすることになっており、資格取得日や扶養の異動の認定日が基準となるわけではありません。

[2]12月2日以降の手続き
 2024年12月2日以降は、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」および「被扶養者(異動)届」に新たに「資格確認書発行要否」欄が設けられます。
 マイナンバーカードを作っていない人や、健康保険証として利用登録を行っていない人等(以下、「マイナ保険証を利用できない人」という)の手続きを行う際には、資格確認書の発行が必要かを確認の上、発行が必要なときには要否欄の「□発行が必要」にチェックを入れることになります。これにより、資格確認書が発行され、医療機関等の窓口で提示することにより保険診療での受診ができるようになります。
 なお、要否欄にチェックが入っていない場合でも、マイナ保険証を利用できない人には、資格確認書が発行されることになっています。ただし、その場合は資格確認書の発行までに時間がかかるとされています。

 

[3]手続きに必要な情報の確認
 今後、資格取得届や被扶養者異動届の作成をする際には、マイナ保険証を利用できない人か否かを確認する必要があります。そのため、従業員の入社が決まった際などには、以下の情報を入手しておくとスムースな運用になります。
 1.マイナンバーカードを作っているか
 2.マイナ保険証の利用登録状況
特に、2.については自らが登録したか否かを把握していない人も見受けられます。入社後等に確認していると、手続きに時間を要することにもなりかねません。

 健康保険証の利用登録状況は、マイナポータルのログイン後のトップ画面で確認できます。具体的には、「証明書」エリアから開くことのできる「健康保険証」ページにて確認ができます。登録が完了している場合は、健康保険証としての登録状況に「登録済」と表示されます。必要な情報を確認する際には、このような案内を加えてもよいでしょう。

■参考リンク
日本年金機構「令和6年12月2日以降は健康保険証が発行されなくなります
マイナポータル「健康保険証の登録が出来ているか確認する方法はありますか。

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

11月12日 自転車の危険運転に対する罰則の創設とその対応

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

自転車を通勤や業務のために利用しているケースが見られますが、自転車の事故のリスクは高く、しばしば問題になります。また2024年11月から自転車運転に関して改正道路交通法が施行されたこともあり、以下では、この改正内容と自転車関連事故件数の状況をとり上げます。

 

[1]2024年11月施行の改正道路交通法の内容
 2024年11月1日より改正道路交通法が施行され、自転車の危険な運転に対して新しく罰則が適用されることになりました。内容は、「運転中のながらスマホ」と「酒気帯び運転および幇助」の2つがあり、詳細は以下のとおりです。

  1. 運転中のながらスマホ
     スマートフォンなどを手で保持して、自転車に乗りながら通話する行為、画面を注視する行為が新たに禁止され、以下の罰則の対象となりました。

    • 違反者:6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金
    • 交通の危険を生じさせた場合:1年以下の懲役または30万円以下の罰金
       
  2. 酒気帯び運転および幇助
     自転車の酒気帯び運転のほか、酒類の提供や同乗・自転車の提供に対して以下の通り、新たに罰則が整備されました。

    • 違反者:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
    • 自転車の提供者:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
    • 酒類の提供者・同乗者:2年以下の懲役または30万円以下の罰金

[2]自転車関連事故件数の状況と保険加入の義務化
 2023年中の自転車関連事故(自転車が第1当事者又は第2当事者となった交通事故をいう。)の件数は、72,339件で前年より2,354件増加しています。また、全交通事故に占める構成比は23.5%で、約4件に1件の割合となっています。

 自転車事故が原因で、加害者が高額な損害賠償を請求されるケースが出てきています。そのため、条例により自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化する動きが広がっています。2024年4月1日現在、34都府県において条例により自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化し、10道県において努力義務化する条例が制定されています(下表参照。表はクリックで拡大できます。)。  

 このように自転車による事故はかなりの件数に上ることから、自転車通勤をしている従業員に対しては、自転車損害賠償保険等への加入を促すことが有効です。

 今回の施行された改正道路交通法の内容については、参考リンクにある警察庁のホームページからポスターやリーフレットをダウンロードすることができます。事故防止の観点からも、社内にポスター等を掲示するなどして、従業員に対して注意喚起をしていきましょう。

 

■参考リンク
警察庁「自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~
国土交通省「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

11月5日 今年も11月に実施される過重労働解消キャンペーン

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

厚生労働省では、長時間労働の削減等の過重労働解消に向けた気運を更に高めるために、例年11月に実施している過重労働解消キャンペーンを、今年も2024年11月1日(金)から11月30日(土)までの1ヶ月間において実施することにしています。

 

[1]過重労働解消キャンペーン
 このキャンペーンは、2014年に施行された過労死等防止対策推進法に基づき、11月が過労死等防止啓発月間とされていることから実施されるものであり、過労死等の一つの要因である長時間労働の削減等、過重労働解消に向けた取組を推進するため、使用者団体・労働組合への協力要請、リーフレットの配布などによる周知・啓発等の取組が集中的に実施されます。

[2]過重労働解消キャンペーンの実施内容
 過重労働解消キャンペーンの一つとして、長時間労働が行われていると考えられる事業場等への重点監督が予定されています。監督の対象となる事業場等や確認される事項は以下のとおりです。

  1. 監督の対象となる事業場等
    1. 長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場や各種情報から時間外・休日労働時間数が1ヶ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場等
    2. 労働基準監督署およびハローワークに寄せられた相談等から、離職率が極端に高いなどの問題があると考えられる事業場等
  2. 重点的に確認される事項
    1. 時間外・休日労働が、時間外・休日労働に関する協定届(36協定)の範囲内であるか等について確認され、法違反が認められた場合は是正指導が行われる。
    2. 賃金不払残業が行われていないかについて確認され、法違反が認められた場合は是正指導される。
    3. 不適切な労働時間管理が行われているときは、労働時間を適正に把握するよう指導される。
    4. 長時間労働者に対しては、医師による面接指導等、健康確保措置を確実に講じるよう指導される。
  3. 厳正な対応監督指導の結果、重大・悪質な法違反が認められた場合は、送検され、公表される。

 なお、監督指導の結果、1年間に2回以上、同一条項の違反について是正勧告を受けた場合等は、ハローワークにおいて、求人を一定期間受理しないこととされています。また、職業紹介事業者や地方公共団体に対しても、ハローワークと同様の取組を行うように要請されています。

 この機会に、自社の労働時間の状況を把握し、適正な労働時間の管理が行われているかを確認しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「過重労働解消キャンペーン
厚生労働省「11月は「過労死等防止啓発月間」です

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

10月29日 2024年10月より支給要件が見直しとなった特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

厚生労働省では、雇入れや仕事と家庭の両立支援等を図るために様々な助成金制度を設けていますが、そのひとつに、特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)(以下、「成長分野等人材確保・育成コース」という)があります。この助成金について、2024年10月から支給要件の見直しが行われました。以下では、この内容をとり上げます。

 

[1]成長分野等人材確保・育成コースとは
この成長分野等人材確保・育成コースには、2つの助成メニューがあり、1つ目の成長分野メニューは、高年齢者や障害者等の就職困難者を、ハローワーク等の紹介により雇い入れて、成長分野の業務に従事させ、人材育成や職場定着に取り組む場合に、特定求職者雇用開発助成金の他のコースと比較して、1.5倍の助成が行われます。この成長分野の業務とは、次の1と2が該当します。

  1. 「情報処理・通信技術者」または「その他の技術の職業」(データサイエンティストに限る)に該当する業務
  2. 「研究・技術の職業」に該当する業務(脱炭素・低炭素化などに関するものに限る)

 2つ目の人材育成メニューは、未経験の就職困難者を、ハローワーク等の紹介により雇い入れて、人材開発支援助成金による人材育成を行い、賃上げを行った場合に、特定求職者雇用開発助成金の他のコースと比較して、1.5倍の助成を行うというものです。

[2]2024年10月からの支給要件の見直し
 [1]でとり上げた2つのメニューに関して、共通した見直しとして、対象となる労働者の要件を、「過去に通算1年以上の就労経験がない場合」から「過去5年間に通算1年以上の就労経験がない場合」に変更し、就労経験のない職業の判断について期間が限定されています。また、過去のパート・アルバイトとしての就労については、就労経験がないものとして扱われることになりました。
 次に、[1]でとり上げた2つ目の人材育成メニューに関して、「実施する教育訓練は50時間以上の訓練であること」が要件とされていましたが、「実施する教育訓練において、厚生労働大臣の指定する教育訓練給付の指定講座のうち公的職業資格の取得を目的とした教育訓練は50時間未満の訓練でも対象とすること」に緩和されています。この公的職業資格には、例えば普通自動車第2種運転免許等の業務独占資格や介護福祉士等の名称独占資格等が該当します。

 今回取り上げた成長分野等人材確保・育成コースは、例えば、対象労働者が障害者、60歳以上の者、母子家庭の母等の場合、特定求職者雇用開発助成金の「特定就職困難者コース」の支給要件も満たしていることが必要です。そのため、助成金の活用を検討される場合は、早めに支給要件の内容を確認しましょう。

■参考リンク
厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)は、より利用しやすくなるよう制度の見直しを行います
厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

 

10月22日 厚生労働省調査からみる男女別の離職理由 

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

先日、厚生労働省から「令和5年雇用動向調査結果の概要」が公開されました。この雇用動向調査は、全国の主要産業における入職者数・離職者数、入職者・離職者の性・年齢階級、離職理由等の状況を明らかにすることを目的に、上半期と下半期の年2回実施されており、今回の結果は、この2回の調査結果を合算し年計として取りまとめたものです。以下では、入職と離職の状況、転職入職者が前職を辞めた理由別割合をとり上げます。

 

[1]入職と離職の状況
 2023年における1年間の入職者数は8,501.2千人、離職者数は7,981.0千人となり、入職者が離職者を520.2千人上回りました。年初の常用労働者数に対する割合である入職率、離職率をみると、入職率は16.4%(前年比1.2ポイント上昇)、離職率15.4%(前年比0.4ポイント上昇)と、いずれも前年を上回っています。また、入職超過率は1.0ポイントとなっており、前年と比べると0.8ポイント拡大しています。

[2]転職入職者が前職を辞めた理由
 2023年における転職入職者が前職を辞めた理由をみてみると、「その他の個人的理由」「その他の理由(出向等を含む)」が多くの割合を占めていますが、これらを除いた各年齢区分におけるもっとも割合の高い理由は以下のようになっています。

[男性]
19歳以下 労働時間、休日等の労働条件が悪かった 28.4%
20~24歳 労働時間、休日等の労働条件が悪かった 11.4%
25~29歳 仕事の内容に興味が持てなかった 14.1%
30~34歳 給料等収入が少なかった 14.1%
35~39歳 職場の人間関係が好ましくなかった/給料等収入が少なかった 11.3%
40~44歳 職場の人間関係が好ましくなかった 14.6%
45~49歳 職場の人間関係が好ましくなかった 11.1%
50~54歳 仕事の内容に興味が持てなかった 10.9%
55~59歳 職場の人間関係が好ましくなかった 12.9%
60~64歳 定年・契約期間の満了 54.6%
65歳以上 定年・契約期間の満了 61.0%

[女性]
19歳以下 職場の人間関係が好ましくなかった 22.9%
20~24歳 労働時間、休日等の労働条件が悪かった 15.6%
25~29歳 労働時間、休日等の労働条件が悪かった 18.4%
30~34歳 職場の人間関係が好ましくなかった 9.6%
35~39歳 職場の人間関係が好ましくなかった 13.1%
40~44歳 労働時間、休日等の労働条件が悪かった 17.6%
45~49歳 職場の人間関係が好ましくなかった 18.7%
50~54歳 定年・契約期間の満了 10.1%
55~59歳 職場の人間関係が好ましくなかった 15.7%
60~64歳 定年・契約期間の満了 43.3%
65歳以上 定年・契約期間の満了 31.0%

 このように各年齢区分によって、もっとも高い割合の前職を辞めた理由が異なっていますが、この背景には、仕事に対する考え方や仕事と家庭の両立などの従業員自身を取り巻く状況などが影響していると考えられます。人材採用が難しい中、既存従業員の定着がこれまで以上に重要になっています。人材の定着の進める上で、労働条件や職場環境の見直しが必要なのかを点検し、問題があれば見直しをしていきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和5年 雇用動向調査結果の概要

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

10月15日 連続する勤務や休憩時間に関するよくある質問

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

労働時間や休憩時間に関する素朴な質問は多く、何日間連続で働かせても問題ないか等、現場から総務に質問が入ることもあるでしょう。そこで今回は、連続勤務や休憩時間に関するよくある質問についてとり上げます。

 

[1]連続勤務における留意点
 大型の受注対応や機械の故障等により、休日出勤をして対応することが必要となり、結果的に休みなく連続した勤務となることがあります。このようなときには、36協定と過重労働対策の両方に目を向ける必要があります。

  1. 36協定
     時間外労働をさせることができる時間数や休日出勤をさせることができる日数等は、36協定で定めており、休日出勤させる場合は、この協定で定めた範囲内とする必要があります。連続出勤の日数に上限はありませんが、36協定の「労働させることができる法定休日の日数」を超えて休日出勤させることはできません。
     また、特別条項における1ヶ月の時間数には、時間外労働の時間のみでなく、休日労働の時間数等が含まれるため、休日労働の時間数の管理も必要です。
  2. 過重労働対策
     36協定の範囲内であれば、理論的に休日を与えることなく連続で勤務させることができますが、36協定の範囲内であっても、過重労働対策は必須です。連続した勤務では、休みが取れないことで、徐々に疲労が蓄積し、健康障害に繋がるリスクが高まります。36協定の内容に関わらず、少なくとも週に1日の休日は確保することが望まれます。

[2]休憩時間
 就業規則等では休憩時間を60分と定めているものの、業務の都合等で休憩を取らせることができず、また、短い時間しか取れないこともあります。
 休憩時間は、労働時間の途中に取らせる必要がありますが、一括して取らせなければならないという定めはありません。そのため、例えば60分の休憩を午前に10分、お昼に40分、午後に10分といったように分割することもできます。一方で、休憩時間は食事の時間や疲労の回復を目的としているため、細かく分割しすぎるとその目的を達成することが難しくなり、従業員の不満にもつながります。休憩の時間帯や長さは、休憩の目的も考えた上での設定が求められます。
 また、休憩時間は事業場全体で一斉に取ることが原則ですが、労使協定を締結することにより、交替で取るようにすることもできます。休憩の時間が確保しづらいようなときには、交替制で取ることができないかという検討も考えられます。

 

 後になって実は労働基準法の違反であったことが発覚することもあるため、事前に現場の管理者から総務に相談してもらえるような体制をつくっていきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「時間外労働の上限規制
厚生労働省「休憩時間を分割する場合どのようなことに注意が必要でしょうか。

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)