4月16日 今すぐ確認したい転倒災害の現状と防止対策

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

労働災害における事故の型別では「転倒」が最多であり、2022年の発生状況では、死傷災害全体に占める割合で4分の1を超えています。そこで、転倒災害の実態と防止対策をとり上げます。

 

[1]転倒災害の実態
 2022年の発生状況における転倒の性別・年齢別の割合をみると、以下のようになっています。50歳以上の女性の割合が約47%を占めており、高齢者雇用が進む中、確実な対策が求められる事項となっています。

[男性]
 40歳~49歳 7.3%
 50歳~59歳 10.8%
 60歳以上  14.6%
[女性]
 40歳~49歳 6.6%
 50歳~59歳 18.5%
 60歳以上  29.1%

 転倒によるケガの内容としては「骨折」が約70%を占め、転倒災害による平均休業日数(※)47日です。また、転倒時の類型では「つまずき」が37.8%、「滑り」が31.8%となっています。
※労働者死傷病報告による休業見込日数

 

[2]必要となる防止対策
 厚生労働省発行のリーフレット「労働者の転倒災害(業務中の転倒による重傷)を防止しましょう」では、この「つまずき」や「滑り」について、次のように原因ごとに対策を挙げています。

[つまずき]

  • 何もないところでつまずいて転倒、足がもつれて転倒
    ⇒対策:転倒や怪我をしにくい身体づくりのための運動プログラム等の導入
  • 作業場・通路に放置された物につまずいて転倒
    ⇒対策:バックヤード等も含めた整理、整頓(物を置く場所の指定)の徹底

[滑り]

  • 凍結した通路等で滑って転倒
    ⇒対策:従業員用通路の除雪・融雪/凍結しやすい箇所への融雪マット等の設置
  • 作業場や通路にこぼれていた水、洗剤、油等により滑って転倒
    ⇒対策:水、洗剤、油等がこぼれていることのない状態の維持(清掃中エリアの立入禁止、清掃後乾いた状態を確認してからの開放の徹底)
  • 水場(食品加工場等)で滑って転倒
    ⇒対策:滑りにくい履き物の使用
        防滑床材・防滑グレーチング等の導入、摩耗している場合は再施工
        隣接エリアまで濡れないよう処置

[3]職場のチェックリスト
 転倒事故の防止のためには、以下のような項目についてチェックを行い、できていない項目については対策を行う必要があります。

  • 通路、階段、出口に物を放置していないか
  • 安全に移動できるように十分な明るさが確保されているか
  • 転倒を予防するための教育を行っているか
  • 作業靴は、作業に適したものを選んでいるか
  • ヒヤリハット情報を活用して、転倒しやすい場所の危険マップを作成・従業員に周知しているか

 従業員の転倒災害防止の取組を支援するものとして、エイジフレンドリー補助金があります。以前は60歳以上の労働者を雇用する中小事業者が対象でしたが、2024年度からは全ての中小事業者に拡充されています。このような補助金も活用しながら、転倒災害の防止対策を行っていきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和4年の労働災害発生状況を公表
厚生労働省「労働者の転倒災害(業務中の転倒による重傷)を防止しましょう
厚生労働省「エイジフレンドリー補助金について

 

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4月9日 今年も4月より始まった「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

新年度になり、新しくアルバイトを始める学生も多いことから、厚生労働省では例年実施している「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを今年も実施しています。今回はこのキャンペーンの内容について確認をしましょう。

[1]主な取組内容

 今回のキャンペーンでは、4月1日から7月31日にかけて都道府県労働局による大学等への出張相談や大学等でのリーフレットの配布等による周知・啓発等が実施されることになっています。具体的にはアルバイトを始める前に労働条件の確認を促すことなどが呼びかけられます。特に重点的に呼びかけが行われる項目として、以下の5点が挙げられています。

  1. 労働条件の明示
  2. シフト制労働者の適切な雇用管理
  3. 労働時間の適正な把握
  4. 商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止
  5. 労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止

[2]特に注意したいシフト制での勤務
 学生アルバイトについては、学業との両立があることからシフト制で働くことで時間の調整が可能となり、企業側にとっても業務の状況により勤務を柔軟に調整できるというメリットがあります。ただし、企業が半ば一方的にシフトを変更するようなケースも見られ、学生アルバイトが予定していた勤務がなくなることで思うように収入が得られなくなったり、急なシフト変更により学業との両立が難しくなったりするなどのトラブルに発展することがあります。

 このシフト制に関しては、2022年1月に厚生労働省より「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」が公表されています。この中で、特に留意する事項として「始業・終業時刻」、「休日」が挙げられ、例えば「休日」については、具体的な曜日等が確定していない場合でも、休日の設定にかかる基本的な考え方などを明記することが求められています。


※表はクリックで拡大されます。

 2024年4月より労働条件の明示ルールが変わり、書面明示事項が追加となりました。これに対応した労働条件通知書を用いて、労働条件の明示を行い、合わせて口頭で説明するなどして、学生アルバイトが安心して働くことができるようにしていきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和6年度「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを全国で実施します
厚生労働省「いわゆる「シフト制」について

 

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4月2日 労働基準監督署の「定期監督等」において違反件数が多い項目

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

厚生労働省では、毎年、労働基準監督年報を発行しており、労働基準監督署等による様々な活動実績を見ることができます。今回は、令和4年版の労働基準監督年報の中から、多くの方の関心が高いと思われる「定期監督等」の違反状況とその注意点をとり上げます。

[1]定期監督等における違反の上位10項目

 労働基準監督官が企業に訪問するような調査(監督)は、年間171,528件行われており、そのうち、毎月一定の計画に基づいて実施される「定期監督等」が142,611件(全体の83.1%)、労働者からの申告に基づいて実施される「申告監督」が16,639件、(全体の9.7%)、再監督が12,278件(全体の7.2%)となっています。このように見ると大半が「定期監督等」であることが分かります。
 そして、この「定期監督等」における違反状況について、件数の多いものからみてみると、以下のようになっています。このように健康診断や安全基準など、労働安全衛生に関する違反の指摘が多くなされており、労働時間や割増賃金が続いています。

項目 令和4年 令和3年
1 健康診断(労働安全衛生法66条~66条の6) 29,974件 22,139件
2 安全基準(労働安全衛生法20~25条) 27,041件 23,823件
3 労働時間(労働基準法32条) 22,305件 18,007件
4 割増賃金(労働基準法37条) 20,554件 16,521件
5 年次有給休暇(労働基準法39条) 14,264件 9,783件
6 労働条件の明示(労働基準法15条) 13,853件 10,025件
7 賃金台帳(労働基準法108条) 12,254件 10,030件
8 年次有給休暇管理簿(労働基準法施行規則24条の7条) 11,264件 7,370件
9 就業規則(労働基準法89条) 9,546件 9,148件
10 時間把握(労働安全衛生66条の8の3) 8,837件 6,414件

 

[2]2024年4月以降に注意したい「労働条件の明示」に関する違反
 2024年4月より、労働条件の明示ルールが変わり、明示事項が追加されます。これにより、来年度以降の労働基準監督署の調査において、この確認が行われることが考えられます。2024年4月1日以降に締結するものより対応が必要になりますので、まだ準備していない場合は早めに対応しましょう。

 労働条件の明示以外の項目についても、法令の条文に立ち返って問題がないか確認し、労働基準監督署から指摘を受けないようにすることが求められます。

■参考リンク
厚生労働省「労働基準監督年報

 

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3月26日 労働者数が50人以上の事業場で求められる労働安全衛生法上の対応

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近年の労働基準行政においては過重労働対策に重きが置かれており、労働者に対する安全や健康に対する配慮義務が強く求められています。加えて、事業場の労働者数が常時50人以上になると、労働安全衛生法の中で実施が求められる事項があります。以下ではその内容をとり上げます。

 

[1]常時50人以上の労働者を使用する事業場とは
 まず常時雇用する労働者の定義を確認します。労働安全衛生法の対象となる「労働者」とは、原則、労働基準法と同じとされています。次に「常時使用する」とは、企業の通常の状況により判断するとされており、臨時的に雇い入れた場合や欠員を生じた場合は労働者の数に変動が生じたものとして取り扱う必要はないものの、パートタイマー・アルバイトであっても臨時的な雇入れでなければ、常時使用する労働者数に含める必要があるとされています。
 そして、労働安全衛生法では、職場で働くすべての労働者の安全を守る法律であることから、派遣労働者を受け入れている事業場は、常時雇用する労働者数に派遣労働者を含めて算出することになります。例えば、事業場で雇用している労働者数が45人で、派遣労働者が5人いる場合には、合計50人となります。

[2]労働者50人以上の事業場で実施が求められている事項
 労働者数が50人以上の事業場において実施が求められている事項は、以下の5点です。

  • 衛生管理者の選任・報告
  • 衛生委員会の開催
  • 産業医の選任・報告
  • ストレスチェックの実施・報告
  • 定期健康診断結果報告書の提出

 この中で、衛生管理者の選任については、業種を問わず選任する必要があり、50人以上の事業場が複数ある場合は事業場ごとに選任することになります。選任後、衛生管理者が休業等やむを得ない事由によって職務を行うことができないときは、代理の選任が必要です。その際、代理者の資格については、通達(昭和23年1月16日 基発第83号、昭和33年2月13日 基発第90号)で、以下のように示されています。

  1. 衛生管理者の資格を有する者がいれば、その者に代理させること
  2. 上記によることが不可能または不適当な場合は、保健衛生の業務に従事している者または保健衛生の業務に従事した経験のある者

 また、同じ通達の中で、衛生管理者が長期にわたって職務を行うことができない場合には、別に衛生管理者を選任することとされています。そのため、衛生管理者が育児休業や介護休業などの取得で長期休業に入る場合については、別に選任する必要があります。

 

 年度末や新年度を迎える中で、従業員の入退社が多い時期になります。労働者数を確認し、50人以上の事業場に該当する場合は、上記の事項を着実に実施していきましょう。

 

■参考リンク
東京労働局「衛生管理の充実
厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等
厚生労働省「健康診断結果報告の提出の仕方を教えて下さい。

 

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3月19日 3月分以降の協会けんぽの健康保険料率・介護保険料率

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全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率および介護保険料率は、例年3月分(4月納付分)から見直しが行われています。今回は2024年度の各都道府県の保険料率についてお伝えします。

[1]2024年度の健康保険料率

 協会けんぽの保険料率は、各都道府県支部別に設定されますが、2024年3月分から適用される健康保険料率は下表のとおりとなりました。※表はクリックで拡大されます。
 47都道府県のうち、前年度より健康保険料率が引上げとなったのが24、引下げとなったのが22、変更なしが1でした。そして、もっとも高い保険料率は佐賀県の10.42%、もっとも低い保険料率は新潟県の9.35%となっており、佐賀県と新潟県の保険料率の開きは大きなものになっています。

 

[2]引下げとなった介護保険料率
 介護保険料率は単年度で収支が均衡するよう毎年見直しが行われますが、2024年3月分からは、1.82%から1.60%への引下げとなりました。

 健康保険料率および介護保険料率は3月分から変更になるため、3月に賞与を支給する会社では、賞与にかかる保険料から新しい保険料率で計算して賞与からの控除が必要となります。また、給与計算では自社の社会保険料の控除のタイミングに合わせて控除する保険料率を変更しましょう。なお、健康保険組合に加入している会社においては、各健康保険組合の情報をご確認ください。

 

■参考リンク
協会けんぽ「令和6年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます

 

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3月12日 2024年4月1日から労災保険率が変更になります

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労災保険率は、業種ごとに定められており、それぞれの業種の過去3年間の災害発生状況などを考慮して原則3年ごとに改定されています。3年前の見直しでは、労災保険率の改定は行われなかったため、今回は6年ぶりの改定となります。

 

[1]労災保険率
 2024年4月からの労災保険率は、全体の平均では4.5/1000から4.4/1000となり、1000分の0.1の引き下げとなります。54業種のうち、引下げとなるのは17業種、引上げとなるのは3業種です。主な変更業種は以下のとおりです。※表はクリックで拡大されます。

[2]特別加入保険料率
 一人親方などの特別加入に係る第2種特別加入保険料率の改正も行われ、25区分のうち、以下の5区分が引下げとなります。※表はクリックで拡大されます。

[3]請負による建設の事業に係る労務費率
 労災保険料は、事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額(以下、「賃金総額」という)に、労災保険率を乗じて算定することを原則としていますが、事業の特殊性により賃金総額を正確に算定することが困難な場合は、賃金総額算定方法の特例が認められています。
 この特例では、請負金額に労務費率を乗じて得た額を賃金総額としますが、ここで用いる労務費率についても改定が行われ、鉄道又は軌道新設事業が24%から19%に引下げとなり、その他の建設事業が24%から23%に引下げとなります。

 2024年度の年度更新の際には、概算保険料について、新しい労災保険率で計算することになります。また、来年度に向けた事業計画検討の中で人件費の予算策定などを行う際には、自社に適用される労災保険率が変更されていないか確認しましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和6年度の労災保険率について(令和6年度から変更されます)

 

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3月5日 広範な変更が予定される雇用保険法の改正動向

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1月26日に開会された通常国会には、雇用保険法の改正に関する法案(改正法案)が提出されました。改正は広範にわたりますが、その中で実務に大きな影響が出ることが想定される点について、以下で確認します。

[1]被保険者範囲の拡大
 現在の法令では、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる人が、雇用保険の被保険者とされています。
 この被保険者の範囲について、2028年10月1日以降は、1週間の所定労働時間が10時間以上の人も対象となる予定です。

[2]出生後休業支援給付金の創設
 現在、一定の要件を満たした従業員(雇用保険の被保険者)が育児休業を取得する場合、出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給されます。
 これらの給付率は、休業開始時賃金日額の67%または50%とされていますが、2025年4月1日以降、従業員とその配偶者がともに14日以上の育児休業を取得するときには、28日間を限度に、出生後休業支援給付金として、休業開始時賃金日額の13%が支給されることになる予定です。

 

[3]育児時短就業給付金の創設
 育児・介護休業法には、3歳未満の子どもを養育する従業員が希望したときには、1日所定労働時間を6時間に短縮する育児短時間勤務制度があります。
 育児短時間勤務制度を利用する場合、ノーワークノーペイの原則により、短縮した時間分の給与を支払わない企業が多いことから、2025年4月1日以降は、2歳未満の子どもを養育するために育児短時間勤務をし、給与が少なくなったときには、給付率10%を上限として、育児時短就業給付金が支給される予定です。

[4]高年齢雇用継続給付の変更
 高年齢雇用継続給付の変更の改正はすでに決定しており、今回の改正法案の内容ではありませんが、今後の動きとしてとり上げます。
 高年齢雇用継続給付は、原則として60歳以上の従業員の給与が、60歳時点よりも一定割合を超えて低下したときに支給されるものです。現在の給付率の上限は15%となっていますが、2025年4月1日以降は、給付率の上限が10%に引き下げられることが決まっています。

 このほかにも、教育訓練給付や就業促進手当も改正法案に盛り込まれています。自己啓発や学び直しを考えている従業員が活用できるような内容が含まれているため、改正法が成立したときには、全体の内容をしっかり押さえておく必要がありそうです。

 

■参考リンク
厚生労働省「第202回労働政策審議会職業安定分科会資料

 

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2月27日 36協定を締結する際の注意点

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「時間外労働・休日労働に関する協定」(以下、「36協定」という)を締結する際、前年と同じ内容で、日付と人数だけ確認して36協定の協定書を作成しているケースが見受けられます。会社は協定した内容を遵守する必要があり、協定内容を超えて時間外労働・休日労働を命じることは、労働基準法違反となります。以下では、36協定の締結において理解しておきたい労働者数と休日労働に関する項目の意味について解説します。

 

[1]労働者数とは
 協定事項には、労働者数がありますが、この労働者数とは、在籍している労働者の人数ではなく、時間外労働・休日労働を行わせることが想定される人数をいいます。
 この労働者数については、協定の有効期間中に、入社や退職により記入した人数と実態が乖離することがあります。このような場合であっても、再度、36協定を締結して届け出る必要はなく、締結後に入社した労働者に対しても協定の範囲内で時間外労働や休日労働を命じることができます。

[2]休日労働に関する項目 

協定事項には「労働させることができる休日の日数」があり、36協定の協定届には「労働させることができる法定休日の日数」と「労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻」があります。
 まず、「労働させることができる法定休日の日数」とは、法定休日に労働させる可能性のある日数をいいます。厚生労働省が公開しているリーフレット「36協定の適正な締結」にある36協定届の記載例では、「1か月に1日」という内容になっており、この場合、法定休日に労働させることができるのは1ヶ月に1日のみとなります。そのため、例えば繁忙期は法定休日のうち、2日は出勤してもらう可能性がある場合には、「1ヶ月に2日」と記載します。
 次に、「労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻」とは、法定休日に労働させる場合の始業時刻と終業時刻をいいます。この時刻について、会社の通常の始業時刻と終業時刻を記載しているケースを見かけますが、この時刻が法定休日に労働させることのできる始業時刻と終業時刻となります。通常の始業時刻よりも早く出勤させる可能性がある場合などは、会社が想定する時刻を記載しましょう。

 年度末に向け、36協定の締結に係る準備を始める企業も多いかと思います。協定する内容や数字にどのような意味があるのかを確認した上で、業務の実態を踏まえ、内容を決定し、締結しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「労働時間・休日
厚生労働省「36協定の適正な締結

 

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2月20日 給与計算をする際に押さえておきたい端数処理の実務

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

給与計算をしていると、労働時間や円未満の賃金額の端数が出ることがあります。今回はこうした端数処理について、法律に沿った扱いがどのようなものであるかを確認しましょう。

[1]労働時間の端数処理
 給与計算をする際には、まず労働時間を集計することになりますが、労働時間は1分単位で集計し、賃金を支払うことが大原則となっています。そのため、所定労働時間、時間外労働時間、深夜労働時間、休日労働時間の各々を1分単位で集計する必要があります。
 その際、1ヶ月における時間外労働・深夜労働・休日労働の各々の合計については、端数処理をすることが認められています。具体的には、合計時間について1時間未満の端数がある場合には、30分未満を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げても差し支えないとされています。

[2]割増賃金の端数処理
 割増賃金を計算する際に端数処理については、1時間あたりの賃金額を計算した際に端数処理をすることが認められており、その際には50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を切り上げることとなります。具体的には以下のとおりです。

【例】
1ヶ月の所定賃金額:230,000円 1ヶ月の(平均)所定労働時間数:168時間の場合
1時間あたりの賃金額=230,000÷168時間=1,369.0476…
→50銭未満の端数の切り捨てを行うと、1時間あたりの賃金額:1,369円

 この取扱いは1ヶ月における時間外労働・深夜労働・休日労働の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合も同様となります。

[3]賃金支払時の端数処理
 賃金の支払いについては、従業員の指定する銀行口座への振込みが多いため、賃金支払時に端数処理を行うことは稀かと思われますが、1ヶ月の賃金支払額における端数処理についても一定の範囲内で認められています。
 具体的には、1ヶ月の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合に、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を切り上げて支払うことが認められています。また、1ヶ月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越すことも認められています。なお、この取扱いをするためには賃金規程にその旨の定めが必要です。

 端数処理について、すべて切り捨てるなどという誤った取扱いをしていないか、この機会に確認しましょう。お困りごと等ございましたら、当事務所までお問合せください。

■参考リンク
東京労働局「3.残業手当等の端数処理はどうしたらよいか

 

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2月13日 民間企業の障害者実雇用率 過去最高の2.33%の実績

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先日、厚生労働省から「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」(以下、「集計結果」という)が公表されました。現在の民間企業の障害者に係る法定雇用率は2.3%とされており、従業員数43.5人以上規模の企業において障害者を雇用する義務があります。以下では、実際の障害者雇用状況を確認しましょう。

 

[1]障害者雇用数と法定雇用率達成企業
 障害者の雇用義務のある43.5人以上規模の民間企業で雇用されている障害者の数は642,178.0人で、前年より28,220.0人増加し、過去最多となりました。障害種別にみると、以下のようにいずれの種別でも増加していますが、特に精神障害者の雇用が伸びていることが分かります。

  • 身体障害者 360,157.5人(前年比2,390人増加)
  • 知的障害者 151,722.5人(前年比5,296.5人増加)
  • 精神障害者 130,298.0人(前年比20,533.5人増加)

 これにより、法定雇用率を達成している企業の割合は、50.1%と半数を超えました。これを企業規模別にみると、43.5~100人未満が47.2%(前年45.8%)、100~300人未満が53.3%(同51.7%)、300~500人未満が46.9%(同43.9%)、500~1,000人未満が52.4%(同47.2%)、1,000人以上が67.5%(同62.1%)となり、すべての規模の区分で前年より増加しています。

 

[2]障害者雇用率達成の指導状況
 今回の集計結果において、実雇用率は2.33%となっています。この実雇用率の過去20年間の動きをみてみると下図のように着実に増加していることが分かります。※図はクリックで拡大されます。

 一方で、実雇用率が低い企業に対しては、障害者雇用率が達成できるように、ハローワークから指導が行われますが、2022年度の指導に係る実績は以下のとおりです。

  • 障害者雇入れ計画作成命令の発出 244社
  • 障害者雇入れ計画の適正実施勧告 94社
  • 特別指導の実施 55社

 2024年4月より法定雇用率が2.5%に引上げとなります。そのため、対象となる企業においては法定雇用率を達成できるよう、継続的に採用と定着の取り組みを進める必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「令和5年 障害者雇用状況の集計結果

 

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