7月23日 来年4月に創設される「共働き・共育て」のための給付金

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

昨年12月25日に閣議決定された「こども未来戦略」では、共働き・共育ての推進として、「男性育休の取得促進」、「育児期を通じた柔軟な働き方の推進」および「多様な働き方と子育ての両立支援」の3つの方針が掲げられました。そこで今回は、これらの具体的な対応策として、2025年4月1日から始まる雇用保険の給付金をとり上げます。

 

[1]出生後休業支援給付金の創設
 育児休業を取得すると、従業員(雇用保険の被保険者)は所得の補てんとして育児休業給付を受け取ることができますが、育児休業を取得せずに給与を受け取ることと比較し、手取額が低くなります。このように手取額が低くなることが、男性の育児休業の取得が進まない理由の一つと言われています。
 その解消を目的として、子どもの出生直後の一定期間以内に、両親ともに14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額が「出生後休業支援給付金」として支給されることになります。この給付金に、出生時育児休業給付金または育児休業給付金をあわせると、給付率が80%となり、手取りとしては10割相当が支給される仕組みとなっています。なお、一定期間とは、男性が子どもの出生後8週間以内、女性が産後休業後8週間以内です。
 従業員の中には、配偶者が専業主婦(夫)であったり、ひとり親として育児をしていたりすることもあるため、配偶者が育児休業を取得していない場合であっても、出生後休業支援給付金が支給されます。

[2]育児時短就業給付金の創設
 育児休業中の支援の他に、2歳未満の子どもを養育するために、時短勤務をすることで給与額が下がる場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を上限に「育児時短就業給付金」が支給されることになります。
 この給付金は、単に時短勤務を推奨するものではなく、育児休業よりも時短勤務を、さらには時短勤務よりも従前の所定労働時間で勤務することを推進する目的で創設されており、これを前提に10%という給付率が決められています。なお、時短後に支給される賃金と給付金の合計額が時短前の賃金を超えないように給付率を調整する仕組みです。

 出生後休業支援給付金の創設により、出生後育児休業(産後8週間以内に4週間を上限として2回に分けて取得できる休業)の申出の増加が予想されます。また、これまで育児の時短勤務は女性従業員の利用が中心でしたが、今後は男性従業員の活用が増えてくることも予想されます。今後の申請方法や、それに沿った社内の手続きの流れを確認していく必要があります。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年雇用保険制度の改正内容について(子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律)
こども家庭庁「こども未来戦略(リーフレット等)

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

7月16日 重要となる職場の熱中症予防対策

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

2023年の職場における熱中症の発生状況を見ると、4日以上休業した死傷者数は1,106人、そのうち死亡者数は31人となり、前年を上回る結果となりました。厚生労働省の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」(以下、「キャンペーン」という)も7月1日から7月31日までを重点取組期間としており、今夏についても積極的に熱中症の予防対策が求められます。

 

[1]熱中症の定義
 熱中症とは、高温多湿な環境下において、体内の水分と塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどしたりして発症する障害の総称で、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温などの症状が現れるとことです。それぞれの症状によって、熱失神、熱けいれん、熱疲労および熱射病といった病名がつけられています。

[2]実施期間の取り組み
 キャンペーンの実施期間は5月1日から9月30日までとされていますが、この期間、以下の3点について重点的な対策の徹底が求められています。

  1. 暑さ指数(WBGT)の把握とその値に応じた熱中症予防対策を実施すること
  2. 作業を管理する人および労働者に対してあらかじめ労働衛生教育を行うこと
  3. 糖尿病、高血圧症など熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を有する人に対して、医師等の意見を踏まえた配慮を行うことなど

[3]重点取組期間の取り組み
 7月1日から7月31日までの重点取組期間中においては、実施すべき事項として、以下の内容が挙げられています。これらの項目を確実に実施しましょう。

  • 暑さ指数の低減効果を再確認し、必要に応じ対策を追加
  • 暑さ指数に応じた作業の中断等を徹底
  • 水分、塩分を積極的に取らせ、その確認を徹底
  • 作業開始前の健康状態の確認を徹底、巡視頻度を増加
  • 熱中症のリスクが高まっていることを含め教育を実施
  • 体調不良の人に異常を認めたときは、躊躇することなく救急隊を要請

 参考リンクにある厚生労働省「学ぼう!備えよう!職場の仲間を守ろう!職場における熱中症予防情報」では、「働く人の今すぐ使える熱中症ガイト」が公開され、予防法として3つの注意点や暑熱順化などの情報が掲載されています。これらの内容も活用しながら、予防対策を徹底していきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(職場における熱中症予防対策)
厚生労働省「学ぼう!備えよう!職場の仲間を守ろう!職場における熱中症予防情報

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

7月9日 3年連続増加となった休業4日以上の死傷者数

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

7月1日から7日までは全国安全週間とされており、厚生労働省・都道府県労働局から各事業場に対して、積極的な労働災害防止活動の実施が働きかけられることになっています。これに関連して、先日、厚生労働省より昨年(令和5年)の労働災害発生状況が公表されました。以下では、労働災害による死傷者数と厚生労働省の取組みについてとり上げます。

 

[1]労働災害による死傷者数

 2023年1月から12月までの労働災害(新型コロナウイルス感染症へのり患によるものを除く)による休業4日以上の死傷者数(以下、「死傷者数」という)は135,371人で、前年より3,016人の増加となり、3年連続で増加となりました。
 業種別でみてみると、製造業の27,194人(対前年比500人増)が一番多く、小売業を含む商業が21,673人(同29人減)、社会福祉施設を含む保健衛生業が18,786人(同1,549人増)、陸上貨物運送事業が16,215人(同365人減)と続いています。
 業種別に事故の型別をみると、製造業では機械等による「はさまれ・巻き込まれ」が最多で、「動作の反動・無理な動作」が続いています。小売業では「転倒」が最も多く、「動作の反動・無理な動作」「墜落・転倒」が続いています。社会福祉施設では「動作の反動・無理な動作」が最も多く、「転倒」が続いています。

[2]厚生労働省の取組
 労働災害による死傷者数における状況を受け、厚生労働省では、小売業、社会福祉施設で多発している「転倒」や「動作の反動・無理な動作」等の減少を図るため、第14次労働災害防止計画に基づき、「労働者(中高年齢の女性を中心に)の作業行動に起因する労働災害防止対策」として、以下の事項を中心に取り組むとしています。

  • 中高年齢の女性労働者に多い転倒災害の発生状況の周知を行うとともに、転倒災害防止のための基本的事項(チェックリスト)の周知指導を行う。
  • エイジフレンドリー補助金等により、転倒災害防止等に資する装備や設備の導入のほか、理学療法士や健康運動指導士等の専門家による労働者の身体機能の維持改善のため取組みの支援を行う。
  • アプリ、動画等を活用した効率的・効果的な安全衛生教育(転倒防止教育を含む)の手法の普及啓発を行う。
  • 事業者による自発的な転倒災害防止対策の取組みの促進のため、転倒災害等による損失額の「見える化」及びその周知啓発を進めるほか、ナッジによる転倒災害防止対策等の行動経済学的アプローチについて引き続き研究を進める。

 労働災害を防止するためには、各事業場の安全衛生管理体制を確認し、不十分な場合は早めに整えていくことが求められます。また、安全作業マニュアルの整備・見直しを実施し、労働災害の防止につなげていきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和5年の労働災害発生状況を公表
厚生労働省「令和6年度「全国安全週間」を7月に実施

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

7月2日 特別休暇を設ける際のポイントと注目を浴びる孫休暇

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

多くの会社では、年次有給休暇のほかにも従業員に慶弔が生じた際などに休暇を与える「特別休暇」を設けています。特別休暇は任意の制度であることから、安定的な運用を行うには、細かな取扱いのルールを決めておくことが重要です。以下では、その取扱いルールを規定する上でのポイントと最近注目を浴びる孫休暇をとり上げます。

 

[1]特別休暇の種類
 厚生労働省作成のパンフレット「特別休暇制度導入事例集2023」では、特別休暇を以下の3つに分けています。

  1. 年次有給休暇の取得促進に資する特別休暇
     例:病気休暇(有給)
  2. 予測できない事情に備えた特別休暇
     例:裁判員休暇・犯罪被害者等の被害回復のための休暇・災害休暇
  3. 従業員の多様な活動を支援する特別休暇
     例:ボランティア休暇・ドナー休暇・自己啓発休暇

[2]特別休暇を設ける際のポイント
 休暇は就業規則への必要記載事項になることから、特別休暇を設ける場合、就業規則等へ規定する必要があります。その際に検討するポイントとして、以下の項目が挙げられます。

  1. 特別休暇を取得できる従業員の範囲
     特別休暇はその趣旨に基づき、対象者を決定することが必要です。例えば、勤続1年以上の従業員や試用期間満了後の従業員など、対象者を限定することが可能です。
  2. 特別休暇の対象となる事由と休暇日数
     従業員の結婚や配偶者の出産、身内の不幸など、特別休暇の対象とする事由(取得目的)は様々です。会社において特別休暇を設ける事由や、そのときの休暇日数を検討します。
  3. 特別休暇取得時の賃金の取扱い
     年次有給休暇を取得したときには、その名称の通り、有給休暇として「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」等の支払いが会社に求められます。一方で、特別休暇を取得したときの賃金の取扱いについては、会社が自由に定めることができます。一般的に慶弔に関する特別休暇は、祝福やお悔やみの意味から有給とする会社が多いことを前提に取扱いを検討するとよいでしょう。

[3]注目を浴びる孫休暇
 最近、自治体等で、孫休暇を設ける動きが見られます。これは、祖父母である従業員が孫の世話や看病のために取得できる休暇です。子育て世代を支援し、子育てを社会全体で行う機運を醸成する目的として、創設を検討する動きが見られます。
 育児・介護休業法では規定されていない休暇であるものの、育児の支援策の一環として創設が期待される休暇でもあります。

 特別休暇の運用において、複数日取得できる休暇を分割して取得する申出があったり、事由が発生した日から相当程度の期間をおいて取得する申出があったりと、会社が対応に困ったというケースもあるでしょう。この機会に、過去の事例を振り返り、規定を見直してもよいかもしれません。

■参考リンク
働き方・休み方改善ポータルサイト「特別な休暇制度-資料

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

6月25日 今国会で改正された育児・介護休業法の概要

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

2024年の通常国会で改正育児・介護休業法が成立し、同年5月31日に公布されました。2025年4月1日から段階的に施行されるため、その概要を確認しましょう。

 

[1]子どもの年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充

  1. 柔軟な働き方を実現するための措置等(公布後1年6ヶ月以内の政令で定める日に施行)
     3歳から小学校就学前の子どもを養育する従業員について、始業時刻等の変更、テレワーク等、保育施設の設置運営等、新たな休暇の付与および短時間勤務制度の5つの選択肢の中から、会社が2つ以上の制度を選択して導入し、従業員はその中から1つを利用できるようすることが義務づけられます。 
  2. 残業免除の対象者の拡大(2025年4月1日施行)
     現行、3歳に満たない子どもを養育する従業員は、請求することで所定外労働の制限(残業免除)の制度を利用できますが、この制度の対象となる従業員の範囲が、小学校就学前の子を養育する従業員にまで拡大されます。 
  3. 子の看護休暇の見直し(2025年4月1日施行)
     現行の「子の看護休暇」は、子どもの病気やけが、予防接種・健康診断の際に取得できるものですが、これらの取得事由の他に、感染症に伴う学級閉鎖等や入園(入学)式、卒園式が追加されます。これに合わせて休暇の名称も「子の看護等休暇」に変更となります。
     また、対象となる子どもの範囲が、現行の小学校就学の始期に達するまでから、小学校3年生修了までに延長されます。さらに、労使協定の締結により除外できる従業員について「引き続き雇用された期間が6ヶ月未満」という要件が廃止されます。 
  4. 個別の意向聴取・配慮の義務化(公布後1年6ヶ月以内の政令で定める日に施行)
     妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、従業員の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が会社の義務となります。

[2]育児休業の取得状況の公表義務の拡大(2025年4月1日施行)
 現行、従業員数1,000人超の企業に公表が義務づけられている育児休業取得状況の公表について、従業員数300人超の企業に拡大されます。

 

[3]介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等(2025年4月1日施行)

  1. 個別周知・意向確認の措置、情報提供の義務化
     介護に直面した旨の申出をした従業員に対し、介護両立支援制度等について個別の周知・意向確認を実施することが会社に義務づけられます。また、会社は、介護に直面する前の早い段階(40歳等)の従業員に対して、介護両立支援制度等に関する情報提供を行うことが必要になります。
  2. 雇用環境の整備の義務化
     仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備として、介護休業に係る研修の実施や介護休業に係る相談窓口設置等の複数ある制度の中から1つ以上を選択して実施することが会社の義務となります。 
  3. 介護休暇の対象者の変更
     労使協定の締結により除外できる従業員について「引き続き雇用された期間が6ヶ月未満」が廃止されます。この廃止の内容は子の看護休暇と同様のものです。

 このほかにも、3歳に満たない子どもを養育する従業員や、要介護状態の対象家族を介護する従業員がテレワークを選択できるような制度とすることが会社の努力義務となります。詳細は政省令の公布を待って、今後、厚生労働省から周知されると思われます。

 

■参考リンク
厚生労働省「育児・介護休業法について

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

6月18日 今国会で改正された雇用保険法の注目ポイント

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

現在、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる従業員については、雇用保険の被保険者となります。2024年の通常国会で改正雇用保険法が成立し、この被保険者となる従業員の範囲が拡大することになりました。施行日は2028年10月1日とまだ先ですが、どのように変わるのかを確認しておきましょう。

 

[1]雇用保険の適用拡大
 雇用保険の被保険者でなければ、基本手当(いわゆる失業手当)や、育児休業取得時の育児休業給付等は受給できません。働き方や生計維持のあり方の多様化が進展している中で、週の所定労働時間が短い労働者が増えています。そのような背景から、雇用保険の被保険者の範囲を拡大する必要があると判断され、「1週間の所定労働時間が20時間以上」という要件が「1週間の所定労働時間が10時間以上」に変更されることになりました。

[2]被保険者期間の算定基準
 基本手当を受給するには、退職日前2年間に、雇用保険の被保険者であった期間が12ヶ月以上(倒産・解雇等の理由により退職した場合は退職日前1年間に6ヶ月以上)必要になります。ここでの「1ヶ月」とは、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ある月または賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上である月を指します。
 適用拡大に伴い、被保険者の賃金の支払の基礎となった日数が6日以上ある月または賃金の支払の基礎となった時間数が40時間以上である月を「1ヶ月」とすることに変わります。

 

[3]給付制限の見直し
 現在は、自己都合で退職した者が基本手当を受給しようとすると、原則として2ヶ月間の給付制限期間(基本手当が支給されない期間)が設けられています。

 今回の改正で、退職した後や、退職日前1年以内に、一定の教育訓練を受講した場合には、この給付制限が解除されることになりました。また、2ヶ月間の給付制限期間を1ヶ月に短縮する通達改正が行われる予定です。なお、現状、5年間で3回以上、自己都合で離職した場合には給付制限期間が3ヶ月となりますが、この点は改正されない予定です。
 この給付制限の見直しは、適用拡大に先立ち、2025年4月1日に施行されます。

 今回の適用拡大により、被保険者となる従業員が増えることで、雇用保険料の会社負担の増加、そして、各種手続き数の増加による事務負担が生じます。適用拡大が施行されるまでにはまだ時間がありますが、特に短時間のパートタイマー・アルバイトが多い企業では、施行後の影響を事前に確認しておきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

6月11日 賃上げに取り組む企業への公的支援

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

今年は歴史に残る賃上げの春となりました。中小企業では、賃上げの原資となる業績の改善が見られない中でも、人材の確保・採用、物価上昇への対応などから賃上げを実施したところもあれば、今後、賃上げを検討しているところもあるでしょう。賃上げを行う企業に対しては、いくつかの公的支援が設けられていることから、今回はその内容をとり上げます。

 

[1]業務改善助成金
 業務改善助成金とは、事業場内で最も低い賃金を30円以上引き上げ、設備投資等を行った中小企業・小規模事業者等に、設備投資等の費用の一部を助成する制度です。
 本制度は、事業場内の最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内の事業場が対象となります。例えば地域別最低賃金が950円で、事業場内の最低賃金が985円の場合、差額が50円以内であることから対象となります。
 賃金引上げの際の注意点としては、地域別最低賃金の発効に対応して事業場内の最低賃金を引き上げる場合、発効日の前日までに引き上げる必要があります。また、今年度より、複数回に分けての事業場内の最低賃金引上げが認められなくなり、同一事業場の申請は年1回までとなりました。
 費用の助成率は、下表のとおりです。なお、引き上げる労働者の数と引上げ額の区分に応じて、助成上限額が設けられています。

表 費用の助成率

事業場内最低賃金 助成率
900円未満 9/10
900円以上950円未満 4/5(9/10)
950円以上 3/4(4/5)

※( )は生産性要件を満たした事業場の場合

[2]キャリアアップ助成金
 キャリアアップ助成金に設けられている「賃金規定等改定コース」は、有期雇用労働者等の基本給を定める賃金規定等を3%以上増額する形で改定し、その規定を適用させた場合に助成されるものです。要件としては、以下のすべてに当てはまる必要があります。

  1. キャリアアップ計画の作成・提出
    賃金規定等を増額改定する前日までにキャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局へ提出していること。
  2. 賃金規定等の適用
    有期雇用労働者等の基本給を賃金規定等に定めていること。
  3. 賃金アップ
    2.の賃金規定等を3%以上増額改定し、改定後の規定に基づき6ヶ月分の賃金を支給していること。

 3%以上5%未満増額改定した場合に、1人当たり5万円(大企業3.3万円)、5%以上増額改定した場合に6.5万円(大企業4.3万円)が助成されます。なお、1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は100人までです。

 

[3]事業再構築補助金
 事業再構築補助金には、成長分野進出枠(通常類型)、成長分野進出枠(GX進出類型)、コロナ回復加速化枠(通常類型)、コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)、サプライチェーン強靱化枠の5つがあります。この中で、短期的に大規模な賃上げを行う場合に補助率が引き上げられているものや、継続的な賃金引上げと従業員の増加に取り組む場合に補助上限の上乗せが設けられているものがあります。
 なお、この補助金は、期間を区切って公募されているため、最新情報を確認ください。

 上記の他、賃上げ促進税制という、中小企業の場合、全雇用者の給与等支給額の増加額の最大45%、大・中堅企業の場合、全雇用者の給与等支給額の増加額の最大35%を税額控除するものがあります。活用を検討される場合は、参考リンク先より詳細をご確認ください。

 

■参考リンク
厚生労働省「業務改善助成金
厚生労働省「キャリアアップ助成金
経済産業省「事業再構築補助金
経済産業省「賃上げ促進税制

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

6月4日 労災保険特別加入者の給付基礎日額の変更

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

労働者災害補償保険(労災保険)は、労働者の業務中や通勤途上の災害等に対して保険給付を行うものであり、労働者ではない事業主や法人の役員等は保険給付の対象になりません。ただし、中小企業の事業主等で、労働者でなくとも、業務の実態や災害の発生状況から見て、労働者に準じて保護することがふさわしいと認められる場合には、一定の手続きを経ることで、労災保険に任意で加入することができます。この仕組みを労災保険の特別加入といいます。以下では、特別加入における給付基礎日額の決定方法、変更方法と変更時の留意点をとり上げます。

 

[1]特別加入者の給付基礎日額の決定方法
 通常の労働者が業務中に発生した災害により、労災保険から休業したときの給付を受け取る場合等では、災害が発生したときの平均賃金をもとに給付基礎日額を計算します。これに対し、特別加入者の給付基礎日額は、事前に16に分かれた給付基礎日額(3,500円~25,000円)から一つを選択し、申請を行うことで決定されます。そして、一旦、決定された給付基礎日額は、年度の途中では変更できません。

[2]特別加入者の給付基礎日額の変更方法
 特別加入者の給付基礎日額は、年度単位(4月から翌年3月)で変更することができ、変更のタイミングは2つあります。1つ目が事前申請といわれ、3月2日から3月31日までに申請をすることで翌年度の給付基礎日額を変更することができます。2つ目が年度更新期間中である6月1日から7月10日までに行うことにより年度の初日に遡って変更することができます。この際、給付基礎日額の変更申請前に災害が発生している場合は、当年度の給付基礎日額変更は認められません。可能な限り、給付基礎日額の変更は、事前申請での対応としたいものです。

 給付基礎日額の変更によって、給付の額が変わります。まもなく年度更新の期間になることから、一度、給付基礎日額が適当な額になっているか確認しておくとよいでしょう。なお、特別加入をするときには、労働保険事務組合に労働保険の事務処理を委託している必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「労災保険 特別加入制度のしおり(中小事業主用)

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

5月28日 在宅勤務手当と割増賃金の算定基礎等の整理

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

新型コロナウイルス感染症の感染防止のために、在宅勤務を導入する企業が増加しましたが、5類移行後は、在宅勤務を廃止し、従業員に出社を求める企業もあるようです。今後、仕事と育児・介護との両立の観点から在宅勤務の活用が求められています。そこで今回は、在宅勤務者へ支給する「在宅勤務手当」の割増賃金に関する取扱いが整理されたため、関連事項も含めまとめます。

 

[1]社会保険の取扱い
 在宅勤務手当は、日本年金機構の「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の中で、社会保険の報酬や賞与(以下、「報酬等」という)に該当するか否かは、在宅勤務手当が実費弁償に当たるか否かによって、基本的に以下の判断基準で考えることになります。なお、支給要件や支給実態などを踏まえて個別に判断する必要があります。

  • 在宅勤務者に毎月5,000円を渡し切りで支給するように、従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を会社に返還する必要がないものであれば、労働の対償として支払われる性質があるとして報酬等に含まれる。
  • 業務に使用するパソコンの購入や通信に要する費用を会社が従業員に支払うような場合、その手当が業務遂行に必要な費用にかかる実費分に対応するものと認められるのであれば、実費弁償に当たるものとして、報酬等に含まれない。

[2]割増賃金の取扱い
 割増賃金の基礎となる賃金(以下、「割増算定基礎賃金」という)には、家族手当、通勤手当、別居手当等の7つの除外賃金が定められており、除外賃金以外の賃金は割増算定基礎賃金に算入する必要があります。
 在宅勤務手当はこれまで除外賃金に含まれていませんでしたが、厚生労働省は「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて」(令和6年4月5日基発0405第6号)を発出し、在宅勤務手当が事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理される場合には、労働基準法上の「賃金」には該当せず、割増算定基礎賃金への算入は不要と示しました。

 

[3]所得税の取扱い
 所得税については、国税庁から「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」が公開されており、その中で「在宅勤務に通常必要な費用について、その費用の実費相当額を精算する方法により、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はありません」と示されています。

 これまで割増算定基礎賃金として算入してきた在宅勤務手当を、割増算定基礎賃金から除外するときは、割増賃金額の減少につながり、労働条件の不利益変更に当たると考えられます。そのため、労使で十分な議論を行った上で見直しを進めることが求められます。

■参考リンク
日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集
厚生労働省「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて
国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)

5月21日 注意が必要な36協定の「1ヶ月の時間数」の考え方

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

労働基準法では、従業員に対し、1日8時間、1週40時間を超えて働かせてはならないとしています(法定労働時間)。また、休日については、毎週少なくとも1日与えなければならないとしています(法定休日)。この法定労働時間を超え、または法定休日に働かせる場合には、事前に「時間外労働・休日労働に関する協定」(以下、「36協定」という)を締結し、労働基準監督署に届出する必要があります。以下では、この36協定で定める時間外労働・休日労働の時間数についてとり上げます。
※本記事では、法定休日の労働のことを「休日労働」と呼びます。

[1]36協定で定める時間
 36協定には、以下の通り一般条項と特別条項があります。

[一般条項]
 36協定では時間外労働や休日労働の時間数を定めます。時間外労働については、以下の通り、上限の時間数が決まっています。

 1ヶ月:45時間(42時間)
 1年:360時間(年320時間)
※()内は1年単位の変形労働時間制の場合

[特別条項]
 一般条項の上限を超えて、一時的または突発的に時間外労働や休日労働等を命じなければならないことがあります。このようなときを想定し、一般条項を超える時間数を、特別条項として定めることができます。なお、特別条項にも以下の通り、上限の時間数が設けられています。

 1ヶ月:100時間未満(2~6ヶ月平均で80時間以内)
 1年:720時間以内

 さらに特別条項には、この上限の時間数のほか、1年について6ヶ月(6回)以内という回数の上限も設けられています。

[2]一般条項と特別条項の違い
 一般条項の1ヶ月の時間数は、時間外労働の時間数のみをカウントすることになっています。これに対し、特別条項の1ヶ月の時間数は、時間外労働に加え、休日労働の時間数もカウントすることになっています(以下の例参照)。

[36協定における1ヶ月の時間数の考え方]

●一般条項
 時間外労働:30時間
 →この時間数のみで判断し、30時間となる
 休日労働:24時間
 →カウントの対象にならない

●特別条項
 時間外労働:50時間
 休日労働:24時間
 →両方の時間数をカウントし、74時間となる

 このため、時間外労働と同時に休日労働も命じているときは、特別条項を適用する段階になって、想定した時間数を超える1ヶ月の時間数となっていることがあります。そのため、一般条項を適用しているときも休日労働の時間数を意識する必要があります。

 各種情報から1ヶ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場に対して、労働基準監督署が指導を実施する方向となっています。特別条項の1ヶ月の時間数の上限は100時間未満となっていますが、特別条項を設けるときには、これを上限と考えるのではなく、特別条項の位置づけも念頭におき、実効性のある時間外労働等の時間数の削減も考える必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

 

福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)では、就業規則の制定及び変更、制度設計、労務相談、各種助成金に関するご相談、申請代行等も承っております。
小さなご相談もぜひ一度お問い合わせください。(お問い合わせはこちらから)