2月13日 民間企業の障害者実雇用率 過去最高の2.33%の実績

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

先日、厚生労働省から「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」(以下、「集計結果」という)が公表されました。現在の民間企業の障害者に係る法定雇用率は2.3%とされており、従業員数43.5人以上規模の企業において障害者を雇用する義務があります。以下では、実際の障害者雇用状況を確認しましょう。

 

[1]障害者雇用数と法定雇用率達成企業
 障害者の雇用義務のある43.5人以上規模の民間企業で雇用されている障害者の数は642,178.0人で、前年より28,220.0人増加し、過去最多となりました。障害種別にみると、以下のようにいずれの種別でも増加していますが、特に精神障害者の雇用が伸びていることが分かります。

  • 身体障害者 360,157.5人(前年比2,390人増加)
  • 知的障害者 151,722.5人(前年比5,296.5人増加)
  • 精神障害者 130,298.0人(前年比20,533.5人増加)

 これにより、法定雇用率を達成している企業の割合は、50.1%と半数を超えました。これを企業規模別にみると、43.5~100人未満が47.2%(前年45.8%)、100~300人未満が53.3%(同51.7%)、300~500人未満が46.9%(同43.9%)、500~1,000人未満が52.4%(同47.2%)、1,000人以上が67.5%(同62.1%)となり、すべての規模の区分で前年より増加しています。

 

[2]障害者雇用率達成の指導状況
 今回の集計結果において、実雇用率は2.33%となっています。この実雇用率の過去20年間の動きをみてみると下図のように着実に増加していることが分かります。※図はクリックで拡大されます。

 一方で、実雇用率が低い企業に対しては、障害者雇用率が達成できるように、ハローワークから指導が行われますが、2022年度の指導に係る実績は以下のとおりです。

  • 障害者雇入れ計画作成命令の発出 244社
  • 障害者雇入れ計画の適正実施勧告 94社
  • 特別指導の実施 55社

 2024年4月より法定雇用率が2.5%に引上げとなります。そのため、対象となる企業においては法定雇用率を達成できるよう、継続的に採用と定着の取り組みを進める必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「令和5年 障害者雇用状況の集計結果

 

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2月6日 29.7%の企業が70歳まで働ける制度を導入

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2021年4月から改正高年齢者雇用安定法が施行され、65歳までの雇用確保措置の義務に加え、70歳までの就業機会を確保する措置(以下、「就業確保措置」という)が努力義務として定められました。先月、厚生労働省から公表された2023年の「高年齢者雇用状況等報告」に関する集計結果(以下、「集計結果」という)では、この就業確保措置の努力義務に対応した企業の状況等を確認することができます。※表はクリックで拡大されます。

 

[1]就業確保措置

 就業確保措置としては、以下の1~5のいずれかの措置を講ずることが企業の努力義務とされています。65歳までの雇用確保措置と異なり、雇用だけでなく、業務委託契約など直接雇用をしない形で、70歳まで就業できる機会を与えることも措置に含まれています。

  1. 70歳までの定年引上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
    ※特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む
  4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5. 70歳まで継続的に以下の社会貢献事業に従事できる制度の導入
    1. 事業主が自ら実施する社会貢献事業
    2. 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業


[2]就業確保措置の実施状況

 今回の集計結果では、報告した全企業の中で就業確保措置が実施済みである企業が全体の29.7%となっています。企業規模別では、中小企業では30.3%(前年比1.8ポイント増加)、大企業では22.8%(前年比2.4ポイント増加)となっており、中小企業よりも大企業において対応を進める動きが強まっています。なお、この集計では従業員21人~300人規模を「中小企業」、301人以上規模を「大企業」としています。
 また、就業確保措置の内訳を全体でみると、70歳までの定年引上げが2.3%、定年制廃止が3.9%、継続雇用制度の導入が23.5%、創業支援等措置の導入が0.1%となっています(※)。
※端数処理の都合上、合計数にズレが生じています。

 

[3]定年制の状況
 就業確保措置に向けた対応や人材確保の観点から、定年年齢を引き上げるケースが見受けられます。企業における定年制の状況については、65歳以上定年企業(定年制の廃止企業を含む)は全体の30.8%で、年齢区分でみてみると以下のようになっています。

  • 60歳    66.4%
  • 61~64歳 2.7%
  • 65歳    23.5%
  • 66~69歳 1.1%
  • 70歳以上 2.3%

 深刻な人手不足の中、65歳以降の人材をどのように活用していくか悩まれている企業は少なくないでしょう。今回の集計結果なども参考にしながら、検討を進めましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します

 

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1月30日 2024年4月から変わる無期転換に関する明示ルール

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2024年4月から労働条件の明示ルールが変わり、すべての労働者に対し、「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要になりますが、これ以外にも、有期契約労働者に対して新しく追加される明示事項があります。そこで今回は、明示ルールに追加される無期転換に関連する事項と実務上の注意点をとり上げます。

[1]無期転換とは

 そもそも無期転換とは、パートタイマーやアルバイト、契約社員などの有期契約労働者について、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超える契約を締結した場合、有期契約労働者からの申込みにより、次の契約から無期労働契約に転換できるというものです。
 図のように労働契約期間が1年の場合、5回目の更新後に無期転換申込権が発生し、無期転換の申込みをすることができます。※図はクリックで拡大されます。

[2]追加される無期転換に関する事項の明示
 2024年4月からは、この無期転換申込権が発生する有期契約労働者に対して、無期転換の申込みができることを労働条件通知書で明示する必要があります。さらに、無期転換後に有期労働契約時の労働条件から変わる場合には、その内容も明示することになります。なお、その内容については別紙を添付するなどして明示することも認められています。これらの内容に係る労働条件通知書の記載例は以下のとおりです。

本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをすることにより、本契約期間の末日の翌日(〇〇年〇月〇日)から、無期労働契約での雇用に転換することができる。
この場合の本契約からの労働条件の変更の有無(無・有(別紙のとおり))

[3]実務上の注意点
 実務上の注意点として2点あります。1点目は、無期転換に関する明示は、無期転換の申込みができる有期契約労働者が対象になります。有期契約労働者全員が対象になる訳ではないため、有期労働契約が通算5年を超えているか否かの管理が必要です。
 2点目は、定年後の再雇用の取扱いです。定年後の再雇用においては、1年契約を更新していくことが一般的ですが、このような定年後に再雇用する従業員も有期労働契約に含まれます。この定年後に再雇用した従業員については、労働局に申請をして認定を受けることで、有期労働契約が通算5年を超えたとしても無期転換申込権が発生しない、という特例が認められています。一方、労働局の認定を受けていない場合は、定年後に再雇用した従業員も有期労働契約が通算5年を超えると、原則通り、無期転換の申込みができることになりますので、この場合には2024年4月から変更される労働条件の明示事項に関して、無期転換の申込みができること等を労働条件通知書に明示する必要が出てきます。

 定年後の再雇用者の取扱いに関して、労働局の認定の必要性を検討し、認定を受ける場合は準備を進めましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます
厚生労働省「無期転換ルールについて

 

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1月23日 2024年1月から新設された育休代替要員等に対する助成金

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昨年6月に政府が閣議決定した「こども未来戦略方針」では、男女ともに職場へ気兼ねなく育児休業を取得できるようにするため、育児休業を支える体制整備を行う中小企業に対する助成措置を大幅に強化することが示されました。これを踏まえ、2024年1月1日から両立支援等助成金に、「育休中等業務代替支援コース」が新設されました。そこで、今回はこの概要を確認しておきましょう。

[1]新設される助成金の概要
 今回の新設コースは、両立支援等助成金のいくつかのコースに設けられていた「代替要員加算」が廃止・再編されたものです。
 支給は、労働者が育児休業を取得するか、育児短時間勤務制度を利用する場合において、育児休業期間中に代替要員の新規雇用(派遣社員の受け入れも含む)、または、育児休業期間中や育児短時間勤務制度利用期間中に業務を代替する労働者への手当支給等を行うときに対象になります。整備・運用した制度によって表の額が支給されます。なお、助成の対象は中小企業に限ります。※表はクリックで拡大されます。

[2]助成金の加算
 新設されるコースには、助成金に以下の加算が設けられています。

  1. 有期雇用労働者加算
    育児休業取得者・育児短時間勤務制度利用者が有期雇用労働者の場合は10万円が加算される。
  2. 情報公表加算
    自社の育児休業等の取得状況に関する情報を厚生労働省のホームページ「両立支援のひろば」で公表した場合には2万円が加算される。

 同僚が育児休業を取得すると、その職場で一緒に働く労働者には何らかの負担が生じることがあるでしょう。このような助成金を活用することで、その負担が少しでも軽減し、職場内で、スムースに育児休業の送り出しができる環境を構築したいものです。

 

■参考リンク
厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内

 

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1月16日 今後数年のうちに施行される人事労務関連の法令改正

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人事労務管理を行う中で、実務に関連する法令改正の動向を押さえておくことはとても重要です。特に近年、人事労務分野においては様々な法令改正が頻繁に行われています。そこで、今回は今後数年のうちに施行が予定される法令改正の内容を確認しておきます。

 

[1]注目すべき法令改正
 現時点で施行が決定されている主な法令改正は下表のとおりです。細かな対応として、労働条件通知書のひな形を修正したり、障害者の法定雇用率が2024年4月と2026年7月に引き上げとなることから、法定雇用率を満たしていない場合は障害者雇用を強化したりしていくなどの必要があります。

表 今後の主な法令改正内容

施行時期 内容
2024年4月 建設業・自動車運転業務・医師等の限度基準適用除外の廃止
トラック・バス・タクシー運転者の拘束時間・休息期間の変更
障害者法定雇用率を2.5%に引き上げ
短時間労働者(週10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者)の実雇用率に算定する特例
労働条件の明示事項に、就業場所・業務の変更の範囲、更新上限の有無・内容、無期転換申込機会・無期転換後の労働条件が追加
通算契約期間・有期労働契約の更新回数について、上限を定めたり、引き下げたりしようとするときの理由の事前説明
募集時の明示事項に、就業場所・業務の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準が追加
裁量労働制の対象者の要件変更、手続き変更、報告期間変更、健康福祉確保措置導入、苦情処理措置導入等
障害者雇用調整金・報奨金の支給方法の見直し
2024年10月 社会保険加入(週20時間等の加入基準)の適用拡大(51人以上の従業員規模)
2025年4月 高年齢雇用継続給付の給付率を10%に縮小
障害者雇用における除外率の引き下げ
2026年7月 障害者法定雇用率を2.7%に引き上げ

 

[2]影響が大きい社会保険加入の適用拡大
 直近で企業に大きな影響が出ることが想定されるものとして、社会保険の適用拡大があります。2024年10月1日より、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業では、週の所定労働時間が20時間以上で、その他の要件を満たす従業員について、社会保険の加入が必要となります。新たに適用拡大の対象となる予定の企業で、例えば2024年4月からの労働条件について、週の所定労働時間を25時間、契約期間1年間で締結した場合、契約当初は社会保険の加入要件を満たさなくても、2024年10月1日からは加入要件を満たすことになります。

 厚生労働省では、年収の壁を意識せずに働ける環境づくりとして、年収の壁・支援強化パッケージを用意しています。従業員に大きな影響の出る内容です。こうした支援策の活用も含めて、早めに対応を検討していきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます
厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ

 

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1月9日 2024年4月1日より変わる裁量労働制

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

裁量労働制には、専門業務型裁量労働制(以下、「専門業務型」という)と企画業務型裁量労働制(以下、「企画業務型」という)という2つの制度があります。令和5年就労条件総合調査によると、専門業務型を採用している企業割合は2.1%、企画業務型を採用している企業割合は0.4%と採用している企業割合は少ないですが、今回、比較的大きな制度改正が行われ、2024年4月1日より施行されます。以下では、その主な変更点をとり上げます。

[1]専門業務型
 専門業務型とは、業務の性質上、その遂行の方法を大幅にその業務に従事する労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務の遂行の手段や時間配分の決定等に関して、会社が具体的な指示をすることが困難なものとして定められた業務の中から、対象となる業務等を労使協定で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使協定であらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度です。
 2024年4月1日より、この対象業務にいわゆるM&Aアドバイザーの業務が加わります。そして、この専門業務型を適用する場合には、労働者本人の同意が必要になります。その際、会社は労使協定の内容等の制度の概要、賃金・評価制度の内容、同意しなかった場合の配置・処遇について明示した上で説明することが求められています。


 

また、以下の事項を労使協定に追加する必要があります。

  • 労働者本人の同意を得ること
  • 労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと
  • 同意の撤回の手続き
  • 同意とその撤回に関する記録を協定の有効期間中およびその期間満了後3年間保存すること

[2]企画業務型
 企画業務型とは、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査および分析の業務であって、業務の性質上、これを適切に遂行するには、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務遂行の手段や時間配分の決定等に関し、会社が具体的な指示をしないこととする業務等について労使委員会で決議し、労働基準監督署に決議の届出を行い、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使委員会の決議であらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度です。


 もともとこの企画業務型は労働者本人の同意が必要とされていますが、2024年4月1日からは同意の撤回手続きを定める必要があります。
 また、労使委員会で決議が必要となる事項として、以下の3点が追加されます。

  • 同意の撤回の手続き同意とその撤回に関する記録を協定の有効期間中およびその期間満了後3年間保存すること
  • 対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと
  • 同意とその撤回に関する記録を協定の有効期間中・その期間満了後3年間保存すること

 これら以外にも細かな変更点があります。2024年4月1日以降、新たにまたは継続して導入する企業は、早めに法改正対応の準備を進めましょう。

■参考リンク
厚生労働省「裁量労働制の概要

 

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■年始のご挨拶■

あけましておめでとうございます。
福岡助成金支援センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

新しい年が始まりました。

2024年は・・・

4月から時間外労働の上限規制(建設事業、自動車運転の業務、医師)の適用、労働条件明示のルールの追加、裁量労働制の導入・継続の手続きの見直し、障害者雇用率の変更があります。

10月から社会保険加入対象企業の拡大があります。

今年も法改正を含め、お役に立てる情報をお届けして参りますので、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

12月26日 拡充されたキャリアアップ助成金「正社員化コース」

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

有期雇用労働者等を正社員に登用したり、処遇改善の取組を実施したりする企業への支援としてキャリアアップ助成金が設けられていますが、2023年11月29日に、キャリアアップ助成金の「正社員化コース」が拡充されました。以下ではこの内容をとり上げます。

[1]キャリアアップ助成金の正社員化コース
 「正社員化コース」とは、就業規則等で規定した制度に基づき、有期雇用労働者等を正社員化した場合に助成されるものです。有期雇用労働者以外にも、無期雇用労働者を正社員に転換した場合、また、正社員への転換だけでなく、多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)に転換した場合等も「正社員化コース」の対象となります。

[2]拡充された内容
 今回、拡充された内容は以下の4点です。

  1. 助成金の見直し
     支給対象期間が「6ヶ月」から「12ヶ月」に拡充されたことに伴い、助成金額も有期雇用労働者が正社員に転換した場合、6ヶ月(1期)で57万円(大企業の場合42.75万円)だったものが、12ヶ月(2期)で80万円(大企業の場合60万円)に拡充されました。また、無期雇用労働者が正社員に転換した場合についても、6ヶ月(1期)で28.5万円(大企業の場合21.375万円)だったものが、12ヶ月(2期)で40万円(大企業の場合30万円)に拡充されています。
  2. 対象となる有期雇用労働者の要件緩和
     有期雇用労働者から正社員に転換する場合、有期雇用の期間が6ヶ月以上で、通算3年以内という要件が設けられていましたが、「6ヶ月以上」に緩和されました。なお、有期雇用の期間が通算5年を超えた有期雇用労働者を正社員に転換する場合、助成金額は、無期雇用労働者が正社員に転換した場合と同額になります。
  3. 正社員転換制度の規定に関する加算措置
     今回、新たに正社員転換制度の導入に取り組む場合に、20万円(大企業の場合15万円)が加算されます。なお、1事業所あたり1回のみです。
  4. 多様な正社員制度規定に関する加算措置
     多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)制度を新たに規定し、この雇用区分に転換等した場合の助成金額が、9.5万円(大企業の場合7.125万円)から40万円(大企業の場合30万円)に大幅拡充されました。なお、これも1事業所あたり1回のみです。

    このキャリアアップ助成金を利用する際は、事前にキャリアアップ計画書を管轄の労働局へ提出することが必要です。手続きについては、キャリアアップ計画書がチェックボックス式に変更され、記載方法が簡素化されています。

■参考リンク
厚生労働省「キャリアアップ助成金「正社員化コース」を拡充しました!2023年11月29日以降における変更点のご案内

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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12月19日 退職後に引き続き傷病手当金を受給する際のポイント

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

健康保険の傷病手当金を受給している従業員が、職場復帰の目途が立たないことから退職するケースがありますが、一定の要件を満たすことで、退職後も引き続き傷病手当金を受給することが可能です。以下では、退職後に引き続き傷病手当金を受給する際のポイントを解説します。

[1]傷病手当金を受給するための要件
 傷病手当金は、被保険者である従業員が病気やけがによる療養のために会社を休み、給与を受けられないときに、その所得の補てんとして受けることできるものです。この給付を受けるためには以下の4つの要件をすべてを満たす必要があります。

  1. 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  2. 仕事に就くことができないこと
  3. 連続する3日間(待期期間)を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  4. 休業した期間について給与の支払いがないこと


[2]継続給付の要件
 [1]の受給要件を満たした上で、退職後も引き続き傷病手当金を受給するためには、更に以下の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 健康保険の資格喪失日の前日(退職日等)までに被保険者期間が継続して1年以上あること
  2. 健康保険の資格喪失日の前日(退職日等)に傷病手当金の支給を受けているか、または、受けられる状態にあること

 上記の2.について、退職日に引継ぎ等で出勤した場合は、医師が労務不能と証明していたとしても、仕事ができる状態になったと判断され、退職後に傷病手当金を受給できなくなります。

 

[3]傷病手当金を受給しないまま退職した場合の取扱い
 傷病手当金を受給しないまま、年次有給休暇を取得し、退職となるようなケースがありますが、傷病手当金の受給は[1]でとり上げたとおり、連続する3日間の待期期間と4日目以降に傷病手当金を受給できる状態であれば、傷病手当金を受給していなかったとしても退職後に受給することが可能です。年次有給休暇を取得して退職したときは、給与が支払われていることになるため[1]の4.の要件について該当せず、受給できる状態であるものの、不支給という判断が行われます。そして、給与が支払われなくなった退職後から支給が開始されます。

 

[4]傷病手当金の受給期間
 2021年1月より、傷病手当金の受給期間は、同一傷病について受給を開始した日から、支給期間を通算して1年6ヶ月とされています。そのため、退職後は、残りの期間について傷病手当金を受給することができます。

 私傷病により退職する場合には、この継続給付は貴重な収入となります。対象となる従業員には、要件を確認の上、通常の退職手続きに加えて説明をすることが求められます。

 

■参考リンク
協会けんぽ「傷病手当金について

 

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12月12日 2024年4月から変わる有期労働契約の更新上限に関する事項

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2024年4月から労働条件の明示ルールが変わり、すべての労働者に対し、「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要になりますが、これ以外にも、有期契約労働者に対して新しく追加される明示事項があります。そこで今回は、追加される更新上限に関連する事項についてとり上げます。

[1]更新上限の明示事項
 パートタイマーやアルバイト、契約社員などの有期契約労働者について、「契約期間は通算4年を上限とする」、「契約の更新回数は3回まで」といった更新上限を設定しているケースがありますが、このように更新上限を設定しているときは、2024年4月から労働条件通知書にこの更新上限の明示が必要になります。
 実際に記載する際に、労働契約の当初から数えた回数を記載するのか、残りの契約更新回数を記載するのかなど対応に迷うことがありますが、記載方法は、労働者と会社の認識が一致するような明示となっていれば差し支えないとされています。例えば、契約の当初から数えた更新回数または通算契約期間の上限を明示し、その上で、現在が何回目の契約更新であるか等を併せて示しておくと、認識のズレを避けることができるでしょう。

[2]更新上限を新設・短縮する場合の説明事項
 現在締結している労働契約には更新上限を設定していないものの、何らかの理由があり今後について、更新上限を新設するといったケースもあり得ます。例えば、当初予定していた出資が受けられず、担当してもらう予定の事業を縮小することになったため、更新上限を設定するケースや、通算契約期間の上限を5年としていたが3年に短縮したいといったケースなどが考えられます。このような更新上限を新設・短縮しようとする場合には、その理由を労働者に説明することが必要になります。
 説明方法については、文書を交付して個々の労働者ごとに面談等により説明を行う方法が基本とされていますが、説明資料を交付する方法や説明会を行う等の方法も考えられます。会社としては、労働者に対して分かりやすく説明することが求められます。

 有期契約労働者の労働条件通知書については、以前から明示が必要となっている雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口の項目が漏れているケースが見受けられます。この機会に、ひな形に不備がないか点検し、問題があれば改善しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます

 

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