6月18日 今国会で改正された雇用保険法の注目ポイント

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

現在、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる従業員については、雇用保険の被保険者となります。2024年の通常国会で改正雇用保険法が成立し、この被保険者となる従業員の範囲が拡大することになりました。施行日は2028年10月1日とまだ先ですが、どのように変わるのかを確認しておきましょう。

 

[1]雇用保険の適用拡大
 雇用保険の被保険者でなければ、基本手当(いわゆる失業手当)や、育児休業取得時の育児休業給付等は受給できません。働き方や生計維持のあり方の多様化が進展している中で、週の所定労働時間が短い労働者が増えています。そのような背景から、雇用保険の被保険者の範囲を拡大する必要があると判断され、「1週間の所定労働時間が20時間以上」という要件が「1週間の所定労働時間が10時間以上」に変更されることになりました。

[2]被保険者期間の算定基準
 基本手当を受給するには、退職日前2年間に、雇用保険の被保険者であった期間が12ヶ月以上(倒産・解雇等の理由により退職した場合は退職日前1年間に6ヶ月以上)必要になります。ここでの「1ヶ月」とは、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ある月または賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上である月を指します。
 適用拡大に伴い、被保険者の賃金の支払の基礎となった日数が6日以上ある月または賃金の支払の基礎となった時間数が40時間以上である月を「1ヶ月」とすることに変わります。

 

[3]給付制限の見直し
 現在は、自己都合で退職した者が基本手当を受給しようとすると、原則として2ヶ月間の給付制限期間(基本手当が支給されない期間)が設けられています。

 今回の改正で、退職した後や、退職日前1年以内に、一定の教育訓練を受講した場合には、この給付制限が解除されることになりました。また、2ヶ月間の給付制限期間を1ヶ月に短縮する通達改正が行われる予定です。なお、現状、5年間で3回以上、自己都合で離職した場合には給付制限期間が3ヶ月となりますが、この点は改正されない予定です。
 この給付制限の見直しは、適用拡大に先立ち、2025年4月1日に施行されます。

 今回の適用拡大により、被保険者となる従業員が増えることで、雇用保険料の会社負担の増加、そして、各種手続き数の増加による事務負担が生じます。適用拡大が施行されるまでにはまだ時間がありますが、特に短時間のパートタイマー・アルバイトが多い企業では、施行後の影響を事前に確認しておきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要

 

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6月11日 賃上げに取り組む企業への公的支援

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

今年は歴史に残る賃上げの春となりました。中小企業では、賃上げの原資となる業績の改善が見られない中でも、人材の確保・採用、物価上昇への対応などから賃上げを実施したところもあれば、今後、賃上げを検討しているところもあるでしょう。賃上げを行う企業に対しては、いくつかの公的支援が設けられていることから、今回はその内容をとり上げます。

 

[1]業務改善助成金
 業務改善助成金とは、事業場内で最も低い賃金を30円以上引き上げ、設備投資等を行った中小企業・小規模事業者等に、設備投資等の費用の一部を助成する制度です。
 本制度は、事業場内の最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内の事業場が対象となります。例えば地域別最低賃金が950円で、事業場内の最低賃金が985円の場合、差額が50円以内であることから対象となります。
 賃金引上げの際の注意点としては、地域別最低賃金の発効に対応して事業場内の最低賃金を引き上げる場合、発効日の前日までに引き上げる必要があります。また、今年度より、複数回に分けての事業場内の最低賃金引上げが認められなくなり、同一事業場の申請は年1回までとなりました。
 費用の助成率は、下表のとおりです。なお、引き上げる労働者の数と引上げ額の区分に応じて、助成上限額が設けられています。

表 費用の助成率

事業場内最低賃金 助成率
900円未満 9/10
900円以上950円未満 4/5(9/10)
950円以上 3/4(4/5)

※( )は生産性要件を満たした事業場の場合

[2]キャリアアップ助成金
 キャリアアップ助成金に設けられている「賃金規定等改定コース」は、有期雇用労働者等の基本給を定める賃金規定等を3%以上増額する形で改定し、その規定を適用させた場合に助成されるものです。要件としては、以下のすべてに当てはまる必要があります。

  1. キャリアアップ計画の作成・提出
    賃金規定等を増額改定する前日までにキャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局へ提出していること。
  2. 賃金規定等の適用
    有期雇用労働者等の基本給を賃金規定等に定めていること。
  3. 賃金アップ
    2.の賃金規定等を3%以上増額改定し、改定後の規定に基づき6ヶ月分の賃金を支給していること。

 3%以上5%未満増額改定した場合に、1人当たり5万円(大企業3.3万円)、5%以上増額改定した場合に6.5万円(大企業4.3万円)が助成されます。なお、1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は100人までです。

 

[3]事業再構築補助金
 事業再構築補助金には、成長分野進出枠(通常類型)、成長分野進出枠(GX進出類型)、コロナ回復加速化枠(通常類型)、コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)、サプライチェーン強靱化枠の5つがあります。この中で、短期的に大規模な賃上げを行う場合に補助率が引き上げられているものや、継続的な賃金引上げと従業員の増加に取り組む場合に補助上限の上乗せが設けられているものがあります。
 なお、この補助金は、期間を区切って公募されているため、最新情報を確認ください。

 上記の他、賃上げ促進税制という、中小企業の場合、全雇用者の給与等支給額の増加額の最大45%、大・中堅企業の場合、全雇用者の給与等支給額の増加額の最大35%を税額控除するものがあります。活用を検討される場合は、参考リンク先より詳細をご確認ください。

 

■参考リンク
厚生労働省「業務改善助成金
厚生労働省「キャリアアップ助成金
経済産業省「事業再構築補助金
経済産業省「賃上げ促進税制

 

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6月4日 労災保険特別加入者の給付基礎日額の変更

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労働者災害補償保険(労災保険)は、労働者の業務中や通勤途上の災害等に対して保険給付を行うものであり、労働者ではない事業主や法人の役員等は保険給付の対象になりません。ただし、中小企業の事業主等で、労働者でなくとも、業務の実態や災害の発生状況から見て、労働者に準じて保護することがふさわしいと認められる場合には、一定の手続きを経ることで、労災保険に任意で加入することができます。この仕組みを労災保険の特別加入といいます。以下では、特別加入における給付基礎日額の決定方法、変更方法と変更時の留意点をとり上げます。

 

[1]特別加入者の給付基礎日額の決定方法
 通常の労働者が業務中に発生した災害により、労災保険から休業したときの給付を受け取る場合等では、災害が発生したときの平均賃金をもとに給付基礎日額を計算します。これに対し、特別加入者の給付基礎日額は、事前に16に分かれた給付基礎日額(3,500円~25,000円)から一つを選択し、申請を行うことで決定されます。そして、一旦、決定された給付基礎日額は、年度の途中では変更できません。

[2]特別加入者の給付基礎日額の変更方法
 特別加入者の給付基礎日額は、年度単位(4月から翌年3月)で変更することができ、変更のタイミングは2つあります。1つ目が事前申請といわれ、3月2日から3月31日までに申請をすることで翌年度の給付基礎日額を変更することができます。2つ目が年度更新期間中である6月1日から7月10日までに行うことにより年度の初日に遡って変更することができます。この際、給付基礎日額の変更申請前に災害が発生している場合は、当年度の給付基礎日額変更は認められません。可能な限り、給付基礎日額の変更は、事前申請での対応としたいものです。

 給付基礎日額の変更によって、給付の額が変わります。まもなく年度更新の期間になることから、一度、給付基礎日額が適当な額になっているか確認しておくとよいでしょう。なお、特別加入をするときには、労働保険事務組合に労働保険の事務処理を委託している必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「労災保険 特別加入制度のしおり(中小事業主用)

 

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5月28日 在宅勤務手当と割増賃金の算定基礎等の整理

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新型コロナウイルス感染症の感染防止のために、在宅勤務を導入する企業が増加しましたが、5類移行後は、在宅勤務を廃止し、従業員に出社を求める企業もあるようです。今後、仕事と育児・介護との両立の観点から在宅勤務の活用が求められています。そこで今回は、在宅勤務者へ支給する「在宅勤務手当」の割増賃金に関する取扱いが整理されたため、関連事項も含めまとめます。

 

[1]社会保険の取扱い
 在宅勤務手当は、日本年金機構の「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の中で、社会保険の報酬や賞与(以下、「報酬等」という)に該当するか否かは、在宅勤務手当が実費弁償に当たるか否かによって、基本的に以下の判断基準で考えることになります。なお、支給要件や支給実態などを踏まえて個別に判断する必要があります。

  • 在宅勤務者に毎月5,000円を渡し切りで支給するように、従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を会社に返還する必要がないものであれば、労働の対償として支払われる性質があるとして報酬等に含まれる。
  • 業務に使用するパソコンの購入や通信に要する費用を会社が従業員に支払うような場合、その手当が業務遂行に必要な費用にかかる実費分に対応するものと認められるのであれば、実費弁償に当たるものとして、報酬等に含まれない。

[2]割増賃金の取扱い
 割増賃金の基礎となる賃金(以下、「割増算定基礎賃金」という)には、家族手当、通勤手当、別居手当等の7つの除外賃金が定められており、除外賃金以外の賃金は割増算定基礎賃金に算入する必要があります。
 在宅勤務手当はこれまで除外賃金に含まれていませんでしたが、厚生労働省は「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて」(令和6年4月5日基発0405第6号)を発出し、在宅勤務手当が事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理される場合には、労働基準法上の「賃金」には該当せず、割増算定基礎賃金への算入は不要と示しました。

 

[3]所得税の取扱い
 所得税については、国税庁から「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」が公開されており、その中で「在宅勤務に通常必要な費用について、その費用の実費相当額を精算する方法により、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はありません」と示されています。

 これまで割増算定基礎賃金として算入してきた在宅勤務手当を、割増算定基礎賃金から除外するときは、割増賃金額の減少につながり、労働条件の不利益変更に当たると考えられます。そのため、労使で十分な議論を行った上で見直しを進めることが求められます。

■参考リンク
日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集
厚生労働省「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて
国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)

 

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5月21日 注意が必要な36協定の「1ヶ月の時間数」の考え方

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労働基準法では、従業員に対し、1日8時間、1週40時間を超えて働かせてはならないとしています(法定労働時間)。また、休日については、毎週少なくとも1日与えなければならないとしています(法定休日)。この法定労働時間を超え、または法定休日に働かせる場合には、事前に「時間外労働・休日労働に関する協定」(以下、「36協定」という)を締結し、労働基準監督署に届出する必要があります。以下では、この36協定で定める時間外労働・休日労働の時間数についてとり上げます。
※本記事では、法定休日の労働のことを「休日労働」と呼びます。

[1]36協定で定める時間
 36協定には、以下の通り一般条項と特別条項があります。

[一般条項]
 36協定では時間外労働や休日労働の時間数を定めます。時間外労働については、以下の通り、上限の時間数が決まっています。

 1ヶ月:45時間(42時間)
 1年:360時間(年320時間)
※()内は1年単位の変形労働時間制の場合

[特別条項]
 一般条項の上限を超えて、一時的または突発的に時間外労働や休日労働等を命じなければならないことがあります。このようなときを想定し、一般条項を超える時間数を、特別条項として定めることができます。なお、特別条項にも以下の通り、上限の時間数が設けられています。

 1ヶ月:100時間未満(2~6ヶ月平均で80時間以内)
 1年:720時間以内

 さらに特別条項には、この上限の時間数のほか、1年について6ヶ月(6回)以内という回数の上限も設けられています。

[2]一般条項と特別条項の違い
 一般条項の1ヶ月の時間数は、時間外労働の時間数のみをカウントすることになっています。これに対し、特別条項の1ヶ月の時間数は、時間外労働に加え、休日労働の時間数もカウントすることになっています(以下の例参照)。

[36協定における1ヶ月の時間数の考え方]

●一般条項
 時間外労働:30時間
 →この時間数のみで判断し、30時間となる
 休日労働:24時間
 →カウントの対象にならない

●特別条項
 時間外労働:50時間
 休日労働:24時間
 →両方の時間数をカウントし、74時間となる

 このため、時間外労働と同時に休日労働も命じているときは、特別条項を適用する段階になって、想定した時間数を超える1ヶ月の時間数となっていることがあります。そのため、一般条項を適用しているときも休日労働の時間数を意識する必要があります。

 各種情報から1ヶ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場に対して、労働基準監督署が指導を実施する方向となっています。特別条項の1ヶ月の時間数の上限は100時間未満となっていますが、特別条項を設けるときには、これを上限と考えるのではなく、特別条項の位置づけも念頭におき、実効性のある時間外労働等の時間数の削減も考える必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

 

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5月14日 障害者雇用の現状と障害者を雇用する際の課題・配慮事項

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

障害者雇用に関しては、2024年4月より法定雇用率が2.5%に引き上げられ、更に2026年7月には2.7%に引き上げられます。法定雇用率の引き上げに対応すべく、新規雇用を進めている企業も多いかと思われます。重要性を増す障害者雇用ですが、これに関連して、先日、厚生労働省から「令和5年度障害者雇用実態調査」の結果(以下、「調査結果」という)が公表されました。以下では、この調査結果から、障害者雇用の現状と障害者雇用に当たっての課題・配慮事項について確認します。

 

[1]障害者雇用の現状
 この調査は、2023年6日1日現在(賃金および労働時間については2023年5月中)で実施されたもので、常用労働者5人以上を雇用している民営事業所(以下、「従業員規模5人以上の事業所」という)から無作為に抽出した約9,400事務所を対象に行われたものです。
 調査結果によれば、従業員規模5人以上の事業所に雇用されている障害者数は110万7,000人で、前回調査が行われた2018年度と比べて25万6,000人増加しました(2018年度は85万1,000人)。この内訳をみてみると、身体障害者が52万6,000人(同42万3,000人)、知的障害者が27万5,000人(同18万9,000人)、精神障害者が21万5,000人(同20万人)、発達障害者が9万1,000人(同3万9,000人)でした。
 一方、職業別に雇用者数の割合をみてみると、身体障害者と精神障害者では事務的職業、知的障害者と発達障害者ではサービスの職業がもっとも多くなっています。

[2]障害者雇用に当たっての課題・配慮事項
 障害者を雇用する際の課題について、すべての障害の種別において、「会社内に適当な仕事があるか」がもっとも多くなっています。また、身体障害者では、「職場の安全面の配慮が適切にできるか」という項目が続いています。
 次に、雇用している障害者への配慮事項について、割合の多いものをみてみると、以下のようになっています。障害の種別に応じて、様々な配慮が行われていることが分かります。

※()は割合

[身体障害者]
休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等休養への配慮(40.2%)
通院・服薬管理等雇用管理上の配慮(38.3%)
短時間勤務等勤務時間の配慮(37.9%)

 

[知的障害者]
能力が発揮できる仕事への配置(51.1%)
短時間勤務等勤務時間の配慮(50.9%)
業務実施方法についてのわかりやすい指示(50.3%)

 

[精神障害者]
短時間勤務等勤務時間の配慮(54.3%)
休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等休養への配慮(50.9%)
通院・服薬管理等雇用管理上の配慮(49.2%)

 

[発達障害者]
休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等休養への配慮(61.2%)
短時間勤務等勤務時間の配慮(50.9%)

 

 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、障害者の雇い入れや雇用の継続などに取り組む事業主に対する助成金制度を設けています。下記の参考リンクから、取り組み内容や目的別に利用可能な助成金を探すことが可能です。このような助成金も活用しながら、障害者の雇用・定着を進めていきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査の結果を公表します
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金関係助成金 取り組み事例で探す

 

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5月7日 企業の不妊治療への支援制度と助成金制度

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

従業員が不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりに取り組む動きが広がりつつあります。不妊治療と仕事の両立については、2021年2月に次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定指針が改正され、一般事業主行動計画に盛り込むことが望ましい事項として追加され、2021年4月より適用されています。以下では、先月、厚生労働省から公表された「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」(以下、「調査」という)の結果から、企業の不妊治療への支援制度の導入状況を見ると同時に、関連する助成金制度についてとり上げます。

 

[1]不妊治療への支援制度
 この調査は、「女性の活躍推進企業データベース」においてデータ公表を行っている企業を対象として、2023年7月から8月にかけて実施されたもので、回答があった従業員規模10人以上の企業1,859社(労働者アンケート調査については男女労働者2,000人)に行い、その調査結果を集計したものが公表されています。
 調査結果によると、不妊治療のための制度がある企業は26.5%で、もっとも多く導入されている制度は、不妊治療に利用可能な休暇制度が47.8%、不妊治療に利用可能な勤務時間や場所等の柔軟性を高める制度(テレワークを含む)が19.4%、不妊治療に利用可能な通院や休息時間を認める制度が14.3%となりました。この不妊治療に利用可能な勤務時間や場所等の柔軟性を高める制度については、半日単位・時間単位の休暇制度がもっとも多く、テレワーク(在宅勤務)、短時間勤務、フレックスタイム制度と続いています。

[2]両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)
 このような企業の取組を支援する助成金として、両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)が設けられています。これは、不妊治療と仕事との両立に資する職場環境の整備に取り組み、不妊治療のために利用可能な休暇制度や両立支援制度を従業員に利用させた中小企業が対象となる助成金です。対象となる事業主の要件と支給額は以下の通りです。

[対象となる事業主]
次の1から6のいずれかまたは複数の制度を導入し、従業員に利用させた事業主です。
1.不妊治療のための休暇制度(多目的・特定目的とも可)
2.所定外労働制限制度
3.時差出勤制度
4.短時間勤務制度
5.フレックスタイム制度
6.テレワーク

[支給額]
A「環境整備、休暇の取得等」
 最初の従業員が休暇制度・両立支援制度を合計5日(回)利用 30万円
B「長期休暇の加算」
 Aを受給し、従業員が不妊治療休暇を20日以上連続して取得 30万円
※A・Bとも1事業主あたり1回限りの支給

 申請にあたっては、企業トップが制度の利用促進についての方針を全従業員に周知し、社内ニーズの調査を行い、制度の利用の手続き等を就業規則等に定めて周知することが必要です。このほか、両立支援担当者の選任、不妊治療両立支援プランの策定も必要です。

 厚生労働省のサイトには、事業主向けに「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」、本人、職場の上司、同僚向けに「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」が公開されています。今後、企業の支援制度を検討する際には、このようなマニュアル等も活用するとよいでしょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果について
厚生労働省「不妊治療と仕事との両立のために

 

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4月30日 今後注目が高まる仕事と介護の両立における課題

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異次元の少子化対策として、仕事と育児の両立に注目が寄せられていますが、一方で高齢化や高齢者雇用の増加に伴う仕事と介護の両立も、企業が取り組むべき重要課題となっています。そんな中、経済産業省は、仕事をしながら家族の介護に従事する従業員(ビジネスケアラー)を取り巻く課題への対応として、企業経営における仕事と介護の両立支援が必要となる背景・意義や両立支援の進め方などをまとめた「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表しました。以下では、この背景とポイントをとり上げます。

[1]ガイドライン策定の背景
 ビジネスケアラーの数は現在増加傾向であり、2030年時点では約318万人に上り、経済損失額は約9兆円という試算が出されています。このような労働損失の影響を抑えることが必要になっています。
 企業にとっても、従業員が抱える介護の問題は、従業員本人のパフォーマンスの低下や介護離職などに繋がり、結果として、事業活動の継続にも大きなリスクを生じさせることになります。そのため、企業としての取り組みを進めるべき重要な時期に来ています。

[2]ガイドラインのポイント
 ガイドラインでは、経営者層を対象に、企業が取り組むべき事項を以下の3つのステップで、具体的に示しています。
 
[STEP1]経営層のコミットメント
仕事と介護の両立支援において全社的に取り組む意向を示す
□経営者自身が知る
 「介護」を知り、企業活動への影響の可能性を認識しているか?
□経営者からのメッセージ発信
 仕事と介護の両立施策推進に向けて、ポリシーを発信しているか?
□推進体制の整備
 担当役員設置/担当者の指名、管理職層の巻き込みができているか?

[STEP2]実態の把握と対応
組織内での仕事と介護の両立における影響・リスクを把握
□アンケート・聴取
 社内の介護に関する状況をしっかりと把握できているか?
□人材戦略の具体化
 介護を行う従業員が活躍できるよう人材戦略を設計できているか?
□適切な指標の設定
 仕事と介護の両立支援に関して適切な指標を設定できているか?

[STEP3]情報発信
企業がプッシュ型の情報発信を行うことで、従業員個人の将来的なリスクを低減
□基礎情報の提供
 介護保険制度などの基礎情報をプッシュ型で提供できているか?
□研修の実施
 全社員向けにリテラシー向上の研修や管理職向けの両立支援推進に関する研修の機会を提供できているか?
□相談先の明示
 社内での相談先・プロセスを社員向けに明示的に伝えられているか?

 このステップに加え、企業の実情やリソースに応じて、人事労務制度の充実、個別相談の充実やコミュニティ形成等、企業独自の取組の充実も求められます。

 今国会には、育児・介護休業法の改正法案も提出され、成立すれば、介護離職を防止するための仕事と介護の両立支援制度の強化が企業に求められることになります。従業員の仕事と介護の両立への具体的対応が今後必要となります。

■参考リンク
経済産業省「「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表します

 

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4月23日 業務災害で死亡や休業が発生した場合に提出が求められる死傷病報告

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労働災害が発生し、労働者が休業したり、死亡したりした際には、労働基準監督署に労働者死傷病報告(以下、「死傷病報告」という)を提出することが義務付けられています。この提出を怠ると、「労災かくし」として問題になります。以下では、労災かくしとはどのようなものか、死傷病報告の提出に関して誤解しやすい点を確認します。

 

[1]労災かくしとは

 労災かくしとは、故意に死傷病報告を提出しないこと、虚偽の内容を記載した死傷病報告を提出することを言います。
 そもそも、この死傷病報告は労働安全衛生法において、同様の労働災害の再発防止のための対策を検討することを目的として提出義務が課せられています。死傷病報告には、労働災害の程度により2種類の様式があり、死亡および休業4日以上の場合(様式第23号)と休業4日未満の場合(様式第24号)とに分かれます。提出期限は、死亡および休業4日以上の場合は遅滞なく、休業4日未満の場合は四半期ごとの翌月末日までとなっています。なお、提出先はいずれも管轄する労働基準監督署です。

[2]死傷病報告の提出に際して誤解しやすい点
 死傷病報告は、労働災害が発生した際に提出すべきものであるため、休業4日未満で労災保険の休業補償給付を受けない場合であっても、提出する必要があります。労災保険の休業補償給付を受けたときに提出するものだと誤解しているケースがありますが、労災保険の給付の有無に関わらず、死亡または休業した場合に提出が必要です。なお、通勤途上の災害による休業や死亡の場合には、提出は不要です。
 また、派遣労働者が労働災害にあった場合は、派遣元事業主、派遣先事業主ともに管轄する労働基準監督署へ死傷病報告を提出する義務があります。流れとしては、まず派遣先事業主が、管轄する労働基準監督署に死傷病報告を提出し、その写しを派遣元事業主に送付します。そして、派遣元事業主は、その写しの内容を踏まえて死傷病報告を作成し、派遣元を管轄する労働基準監督署に提出を行います。

 死傷病報告をはじめとした労働安全衛生関係の一部の手続きについて、2025年1月1日より電子申請での提出が義務となります。詳細は今後公表されると思いますが、今のうちから電子申請に対応できるよう準備を進める必要があります。

 

■参考リンク
厚生労働省「労災かくしとは何ですか。
厚生労働省「「労災かくし」は犯罪です。
厚生労働省「労働者死傷病報告の提出の仕方を教えて下さい。
厚生労働省「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます

 

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4月16日 今すぐ確認したい転倒災害の現状と防止対策

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

労働災害における事故の型別では「転倒」が最多であり、2022年の発生状況では、死傷災害全体に占める割合で4分の1を超えています。そこで、転倒災害の実態と防止対策をとり上げます。

 

[1]転倒災害の実態
 2022年の発生状況における転倒の性別・年齢別の割合をみると、以下のようになっています。50歳以上の女性の割合が約47%を占めており、高齢者雇用が進む中、確実な対策が求められる事項となっています。

[男性]
 40歳~49歳 7.3%
 50歳~59歳 10.8%
 60歳以上  14.6%
[女性]
 40歳~49歳 6.6%
 50歳~59歳 18.5%
 60歳以上  29.1%

 転倒によるケガの内容としては「骨折」が約70%を占め、転倒災害による平均休業日数(※)47日です。また、転倒時の類型では「つまずき」が37.8%、「滑り」が31.8%となっています。
※労働者死傷病報告による休業見込日数

 

[2]必要となる防止対策
 厚生労働省発行のリーフレット「労働者の転倒災害(業務中の転倒による重傷)を防止しましょう」では、この「つまずき」や「滑り」について、次のように原因ごとに対策を挙げています。

[つまずき]

  • 何もないところでつまずいて転倒、足がもつれて転倒
    ⇒対策:転倒や怪我をしにくい身体づくりのための運動プログラム等の導入
  • 作業場・通路に放置された物につまずいて転倒
    ⇒対策:バックヤード等も含めた整理、整頓(物を置く場所の指定)の徹底

[滑り]

  • 凍結した通路等で滑って転倒
    ⇒対策:従業員用通路の除雪・融雪/凍結しやすい箇所への融雪マット等の設置
  • 作業場や通路にこぼれていた水、洗剤、油等により滑って転倒
    ⇒対策:水、洗剤、油等がこぼれていることのない状態の維持(清掃中エリアの立入禁止、清掃後乾いた状態を確認してからの開放の徹底)
  • 水場(食品加工場等)で滑って転倒
    ⇒対策:滑りにくい履き物の使用
        防滑床材・防滑グレーチング等の導入、摩耗している場合は再施工
        隣接エリアまで濡れないよう処置

[3]職場のチェックリスト
 転倒事故の防止のためには、以下のような項目についてチェックを行い、できていない項目については対策を行う必要があります。

  • 通路、階段、出口に物を放置していないか
  • 安全に移動できるように十分な明るさが確保されているか
  • 転倒を予防するための教育を行っているか
  • 作業靴は、作業に適したものを選んでいるか
  • ヒヤリハット情報を活用して、転倒しやすい場所の危険マップを作成・従業員に周知しているか

 従業員の転倒災害防止の取組を支援するものとして、エイジフレンドリー補助金があります。以前は60歳以上の労働者を雇用する中小事業者が対象でしたが、2024年度からは全ての中小事業者に拡充されています。このような補助金も活用しながら、転倒災害の防止対策を行っていきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和4年の労働災害発生状況を公表
厚生労働省「労働者の転倒災害(業務中の転倒による重傷)を防止しましょう
厚生労働省「エイジフレンドリー補助金について

 

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