8月19日 スポットワークを利用する際の注意点

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

 

最近、スポットワークを「利用している」、または、「利用していた」という話を耳にすることが増えています。スポットワークを利用する人が増加し、働き方への注目が高まる中、厚生労働省からもその活用における留意事項等をまとめたリーフレットが公開されるなどの動きも出ています。以下では、このリーフレットの中からスポットワークを利用する際の注意点を確認します。

 

[1]スポットワークとは
 厚生労働省から公開されたリーフレットでは、スポットワークについて以下のように定義されています。

  • スポットワークとは、短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働くこと
  • スポットワークの雇用仲介を行う事業者が提供する雇用仲介アプリを利用してマッチングや賃金の立替払を行うもの

[2]労務管理上の注意点
 スポットワークについては、スポットワークのサービスを提供している事業者(スポットワーク提供事業者)から人材を派遣してもらうイメージがありますが、実際には派遣ではなく、サービス提供を受けた企業による直接雇用であることに注意が必要です。また、労働契約の成立時期は個別の具体的な状況によりますが、以下のように判断されることと示されています。

面接等を経ることなく先着順で就労が決定する求人では、別途特段の合意がなければ、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点で労使双方の合意があったものとして労働契約が成立するものと一般的には考えられる。

 

 そのため、スポットワークのサービスの提供を受ける際には、応募があった時点で労働契約が成立するという認識をしておくことが求められます。その他、企業の都合で丸1日休業とする場合や、仕事の早上がりをさせることになった場合は、労働基準法第26条により休業手当を支払う必要があります。

 今回、厚生労働省からリーフレットが公開されたことを受けて、一般社団法人スポットワーク協会では今後、スポットワーク提供事業者に必要な対応を求めていくこととしています。そのため、直接労働契約を締結する企業としては、スポットワーク提供事業者からの適正な対応に関する案内の内容を確認し、ルールをしっかり理解した上で、スポットワークを活用することが求められます。

 

■参考リンク
厚生労働省「いわゆる「スポットワーク」の留意事項等
一般社団法人スポットワーク協会「2025年7月 「スポットワークサービスにおける適切な労務管理へ向けた考え方」を取りまとめました

 

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8月5日 1,000件超となった精神障害の労災支給決定件数

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

従業員がメンタルヘルス疾患を発症し、欠勤や休職をするケースが増加しています。その中には、仕事による強いストレスがその原因となっている事例もあるようです。2025年6月に公表された厚生労働省の資料によると、精神障害を理由とした労災の請求件数、そして支給決定件数が大幅に増加しています。そこで以下では、公表された資料の内容を確認した上で、企業に求められる対策について見ていきます。

 

[1]精神障害の労災補償状況
 精神障害の労災補償状況は下図のとおりとなっています。2024年度の請求件数は3,780件で、前年度の3,575件から205件の増加となり、過去最多となりました。また、支給決定件数については1,055件となり、前年の883件から172件の大幅増加となりました。こちらも過去最多となり、今回1,000件を初めて超えました。
 支給決定件数の中で多い業種(中分類)の上位4つをみてみると、社会保険・社会福祉・介護事業152件、医療業118件、道路貨物運送業69件、総合工事業46件となっており、医療・福祉の業種で多いことが分かります。認定率(決定件数における支給決定件数の割合)については30.2%で、10件の申請があればそのうち3件が労災として認定されているという状況です。
※図はクリックで拡大されます。

[2]具体的な出来事
 支給決定は、その傷病に繋がる具体的な出来事があったかを確認して判断されますが、支給決定の内容を具体的な出来事別に分類すると、その上位は以下の通りとなっています。

  1. 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(224件)
  2. 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった(119件)
  3. 顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた(108件)
  4. セクシュアルハラスメントを受けた(105件)
  5. 業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(87件)

 支給決定件数(1,055件)のうち、上司等からのパワーハラスメントがトップで、4件に1件が上司等からのパワーハラスメントとなっています。また、3位については、今後、企業への対策が義務化されるカスタマーハラスメントに関係する項目となります。ハラスメントは従業員のメンタルヘルス不調にも繋がるリスクのある重大な問題であり、継続的な防止対策が求められます。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年度「過労死等の労災補償状況」を公表します

 

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7月29日 従業員の自宅に届く協会けんぽの資格確認書

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

今年12月2日以降、医療機関等の窓口に提示している現在の健康保険証が、使用できなくなります。そのため、協会けんぽでは、マイナ保険証を利用できない従業員(被保険者)とその家族(被扶養者)に対して、資格確認書を送付する予定です。以下では、この内容を説明します。

 

[1]資格確認書とは
 資格確認書とは、マイナンバーカードの発行をしていない人や、マイナンバーカードに健康保険証の利用登録を行っていない等の理由により、マイナンバーカードを健康保険証として利用できない人等が、医療機関等へ提示することで保険診療を受けることができるものです。
 これまでは、原則として2024年12月2日以降に新たに資格を取得した人や、被扶養者としての認定を受けた人で、マイナンバーカードを健康保険証として利用できない人に発行されていました。今後、2024年12月1日以前に健康保険証が発行されていた人についても、2025年12月1日までに資格確認書が発行にも必要になるため、その発行が行われることになりました。

[2]今後の流れ
 今回、保険者が協会けんぽである事業所については、2025年7月下旬より順次、対象者の資格確認書が発行され、従業員の自宅へ送付されます。この対象者とは、現在、健康保険証を持っている人(2024年11月29日までに日本年金機構において新規に資格取得の決定または被扶養者の認定が行われた人)のうち、2025年4月30日時点でマイナンバーカードを健康保険証として利用できない人です。
 従業員の自宅には特定記録郵便で送付され、被扶養者の資格確認書も同封されます。送付する資格確認書が5枚以上の場合は複数の封筒での送付になります。従業員の住所に送付後、宛先不明等の理由で不着となった場合は、会社の方に再度送付され、会社から従業員に配布する必要が出てきます。

 

 送付の時期は、都道府県ごとに異なり、数回に分けて送付する支部もあるようです。送付の時期の詳細は、協会けんぽのホームページで公開されていますので、いつごろになるのか確認しておきましょう。また、送付対象となる従業員に対して、資格確認書が自宅に届く旨を事前に周知しておくとよいでしょう。

■参考リンク
協会けんぽ「マイナ保険証をお持ちでない方へ資格確認書を送付します(従前の健康保険証をお持ちの方)

 

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7月22日 重要度が増す仕事と育児・介護の両立に関する個別周知等

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2025年施行の改正育児・介護休業法では、仕事と育児・介護について、従業員に対する個別周知等の強化が行われました。そこで今回は、既存の個別周知等の内容も含め、確認しましょう。

 

[1]育児の個別周知・意向確認

 従業員から、本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があったときには、育児休業制度について個別に周知をし、取得に係る意向確認をする必要があります。
 これに加え、2025年10月1日からは、会社が選択した柔軟な働き方を実現するための措置について、従業員に個別に周知し、制度利用に関する意向確認をすることが義務になります。具体的には、子どもが3歳になるまでの適切な時期(従業員の子どもが1歳11ヶ月に達する日の翌々日から2歳11ヶ月に達する日の翌日までの1年間)に、以下の方法により行うこととなっています。

  1. 面談
  2. 書面交付
  3. FAX
  4. 電子メール等

 上記の1.面談についてはオンライン面談も可能です。3.FAXおよび4.電子メール等については、従業員が希望した場合のみ認められています。

 

[2]育児の個別の意向聴取と配慮
 2025年10月1日からは、個別周知・意向確認のみでなく、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と、聴取した意向に対する配慮も義務となります。
 具体的には、従業員から、本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があったときと、子どもが3歳になるまでの適切な時期に、子どもや各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する勤務時間帯や勤務地、両立支援制度等の利用期間、労働条件の見直し等について、個別にその意向を聴取することが必要です。その上で、聴取意向について、自社の状況に応じて配慮することが求められます。
 なお、聴取した意向への配慮は、意向の内容を踏まえた検討を行うことは必要ですが、その結果、何らかの措置を行うか否かは会社が自社の状況に応じて決定することになります。必ずしも意向どおりとしなければならないということではない点を押さえておきましょう。

 

[3]介護の個別周知等と情報提供
 個別周知・意向確認は、育児のみでなく、介護に直面した旨の申出をした従業員に対しても、介護休業制度等に関する事項を個別に周知し、介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を行うことが、2025年4月から義務化されています。
 さらには、介護に直面する前の早い段階(40歳等)に介護休業および介護両立支援制度等に関する情報提供を行うことも義務化されています。

 個別周知・意向確認、意向聴取および情報提供を行う際に利用できる書式については、厚生労働省のホームページに記載例が公開されています。自社に合わせたアレンジも可能ですので、記載例を参考に、早めに対応するとよいでしょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「育児・介護休業法について

 

 

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7月15日 今後、対応が必要となるカスハラ対策と就活セクハラ対策

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

2025年の通常国会で改正労働施策総合推進法等が成立し、2025年6月11日に公布されました。以下では、公布された内容の中から、カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」という)対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(以下、「就活セクハラ」という)対策についてとり上げます。

 

[1]カスハラ対策
 現時点では、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、妊娠・出産・育児・介護休業等に関するハラスメントの対策が企業に対して義務化されていますが、今回、これにカスハラの対策が追加されます。
 この「カスハラ」とは、以下の3つの要素をすべて満たすものをいいます。

  1. 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う、
  2. 社会通念上許容される範囲を超えた言動により、
  3. 労働者の就業環境を害すること。

 

このカスハラ対策として、企業が講ずべき措置として、方針等の明確化とその周知・啓発、相談体制の整備・周知、発生後の迅速かつ適切な対応・抑止のための措置が挙げられていますが、具体的な内容については今後指針で示される予定です。

[2]就活セクハラ
 厚生労働省の「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、2020~2022年度卒業で就職活動(転職を除く)またはインターンシップを経験した男女の中で、インターンシップ中に就活セクハラを一度以上受けたと回答した人の割合は30.1%、インターンシップ以外の就職活動中に受けた人の割合は31.9%でした。

このような状況を解消するため、就活セクハラについても対策が義務化されました。
 この就活セクハラ対策についても、企業が講ずべき措置として、方針等の明確化とその周知・啓発、相談体制の整備・周知、発生後の迅速かつ適切な対応・抑止のための措置が挙げられていますが、具体的な内容についてはカスハラ対策と同様、今後指針で示される予定です。

 これらの施行については、公布後、1年6か月以内の政令で定める日となっており、2026年12月までには施行される予定です。厚生労働省からの今後の情報に注目をしておきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について
厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査について

 

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7月8日 高校生をアルバイトとして雇用する際の注意点

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まもなく夏休みを迎え、高校生をアルバイトとして雇用する会社も増えてくる時季となりました。そこで今回は、高校生をアルバイトとして雇用する際の注意点を解説しましょう。

 

[1]労働基準法における年齢区分
 そもそも労働基準法では、以下のように年齢で区分し、満18歳未満の労働者について以下のように定義しています。

 児童:満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの者 
 年少者・未成年者:満18歳未満の者 

 

 このうち「児童」については、原則として労働させてはならないとされており、多くの高校生が該当する「年少者」についても、一定の規制が設けられています。そのため、その雇い入れにあたっては労働基準法における年少者(以下、「高校生」という)を雇用する際の遵守事項を理解しておく必要があります。

[2]雇入れにあたっての具体的な注意点
 具体的には、以下の3点について注意が求められます。

  1. 年齢確認と年齢を確認できる書面の備え付け義務
  2. 労働時間・休日に関する規制
  3. 深夜業の制限

 1については、高校生を雇い入れる場合にも、会社と本人との間で雇用契約を締結することになりますが、その際、併せて親権者等の同意を得ておく必要があります。また、年齢を確認できる公的な書面(住民票記載事項証明書等)を備え付けることが義務付けられています。なお、年齢を確認できる書類の備え付けがなされていなかった場合には、罰則(30万円以下の罰金)が設けられています。
 2については、高校生については、1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて勤務させることはできず、変形労働時間制を適用することも認められていません。なお、満15歳以上で満18歳に満たない者については、例外として以下の勤務を行うことが可能です。

  • 1週間の労働時間が40時間以内であり、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮すれば、同一週内の日について労働時間を10時間まで延長可能
  • 1日8時間、1週間48時間以内であれば、1ヵ月または1年単位の変形労働時間制を適用可能

 また、残業については満18歳以上の労働者の場合、36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることにより、法定労働時間を超えて時間外労働や休日労働をさせることができますが、高校生の場合、原則としてこれらが禁止されています。
 3については、高校生を深夜(午後10時から午前5時まで)に労働させることについても原則として禁止されています。これは、高校生が深夜の労働を希望したり、合意した場合であっても労働させることはできません。ただし、交替制で勤務する満16歳以上の男性等、一部に限り認められています。

 このように高校生には満18歳以上の労働者とは異なる法規制が設けられています。実際に高校生に指揮命令する上長にもこのような法規制を理解してもらい、日々の労務管理をしっかり行っていくことが求められます。

■参考リンク
厚生労働省「高校生等を使用する事業主の皆さんへ ~ 年少者にも労働基準法等が適用されます! ~

 

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7月1日 10月施行の改正育児・介護休業法「柔軟な働き方の実現するための措置」への対応

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

改正育児・介護休業法の第1段階が4月に施行され、第2段階についても10月に施行されます。この10月施行の項目の1つである「柔軟な働き方を実現するための措置」への対応については、これから検討を行い、育児・介護休業規程等の見直しをされる企業も多くあるかと思います。そこで今回は、改正内容と検討する際のポイントを解説します。

 

[1]柔軟な働き方を実現するための措置への対応
 現行では、仕事と育児の両立を支援する制度として、育児休業、育児短時間勤務、所定外労働の免除、時間外労働の制限、深夜業の制限および子の看護等休暇がありますが、10月からは3歳から小学校就学前の子どもを養育する従業員に対して、柔軟な働き方を実現するための措置を講じること等が企業に義務づけられます。具体的には、以下の5つの選択肢の中から、企業が2つ以上の制度を選択して導入し、対象となる従業員がその中から1つを利用できるようにすることが必要です。

  1. 始業時刻等の変更
  2. テレワーク等(10日/月)
  3. 保育施設の設置運営等
  4. 養育両立支援休暇の付与(10日/年)
  5. 短時間勤務制度

 この5つの選択肢のうち、2.テレワーク等と4.養育両立支援休暇の付与については、原則として、時間単位で取得できるようにする必要があります。

[2]検討する際のポイント
 義務化される柔軟な働き方を実現するための措置は、全社統一の制度を導入するケースが多いと思われますが、業務の性質や業務の実施体制に照らして、事業所単位や職種ごとに措置の組み合わせを変えることも可能です。
 また、シフト制などの交代制勤務を行う従業員については、例えば早番と遅番があった場合に、通常であれば両方の勤務をシフトで設定するところ、早番の勤務のみとする措置を行う場合は、「1.始業時刻等の変更」の措置を行ったことになります。

 

[3]従業員代表の意見聴取
 企業が選択した措置については、育児・介護休業規程に盛り込む必要がありますが、その前に選択する制度について、従業員の過半数代表者等の意見を聴取する機会を設ける必要があります。この意見聴取の方法は、面談、書面、メール等が想定されますが、その方法について、法令上の特段の定めはありません。

 今回の柔軟な働き方を実現するための措置について、すでに法を上回る制度として導入している企業もあるでしょう。その場合、柔軟な働き方を実現するための措置として、すでに存在している制度を選択することはできますが、従業員の過半数代表者等の意見聴取を行う必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「育児・介護休業法について

 

 

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6月24日 4年連続増加となった休業4日以上の死傷者数

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7月1日から7日までは全国安全週間とされており、厚生労働省・都道府県労働局から各事業場に対して、労働災害防止活動の実施が積極的に働きかけられることになっています。これに関連して、先日、厚生労働省より昨年(2024年)の労働災害発生状況が公表されました。以下では、労働災害による死傷者数の現状と厚生労働省の取組みについてとり上げます。

 

[1]労働災害による死傷者数
 2024年1月から12月までの労働災害(新型コロナウイルス感染症へのり患によるものを除く)による休業4日以上の死傷者数(以下、「死傷者数」という)は135,718人で、前年より347人の増加となりました。増加は、4年連続です。
 業種別でみてみると、製造業の26,676人(対前年比518人減)が一番多く、小売業を含む商業が22,039人(同366人増)、社会福祉施設を含む保健衛生業が18,867人(同81人増)、陸上貨物運送事業が16,292人(同77人増)と続いています。
 業種別に事故の型別死傷災害発生状況をみると、製造業では機械等による「はさまれ・巻き込まれ」が最多で、「転倒」が続いています。小売業では「転倒」が最も多く、「動作の反動・無理な動作」、「墜落・転倒」と続いています。社会福祉施設では「転倒」が最も多く、「動作の反動・無理な動作」も同程度あります。

[2]エイジフレンドリー補助金「転倒防止・腰痛予防のための運動指導コース」
 労働災害の原因となる転倒を防止するための取組みを支援するものとして、エイジフレンドリー補助金に「転倒防止・腰痛予防のための運動指導コース」が設けられています。このコースは、労働者の身体機能低下による転倒災害や腰痛災害を防止するため、専門家による身体機能のチェックおよび専門家による運動指導に要する経費を補助するものです。
 補助対象となる取組は以下の3つをすべて実施する必要があります。

  1. 専門家を事業場に招き、対象労働者に対する身体機能のチェック評価を受ける。
  2. 専門家が、1の結果に基づき、対象労働者に対して運動指導(対面指導)を実施する。
  3. 2の効果の確認のため、専門家による対象労働者の身体機能の改善等のチェックを受ける。

 補助率は要した経費の4分の3となっており、上限額は100万円です。
 この補助金の申請受付期間は、2025年10月31日までとなっており、あらかじめ決まっている予算額に達した場合は、受付期間の途中であっても申請受付が終了されることがあります。
(※エイジフレンドリー補助金の申請手続きにつきましては、申請手続きに関するアドバイスは可能ですが、社会保険労務士による代理申請は認められておりません。
そのため、申請書類の作成および提出は、必ず事業主ご本人または法人の代表者様に行っていただく必要がありますのであらかじめご了承くださいますようお願い申し上げます。)

 エイジフレンドリー補助金には、高年齢労働者の労働災害防止のための設備改善や専門家による指導を受けるための経費の一部を補助するもので、「転倒防止・腰痛予防のための運動指導コース」のほかにも、総合対策コース、職場環境改善コース、コラボヘルスコースがあります。複数コースを併せて申請することはできないため、申請を検討する際には、補助金の全体を確認した上で、自社に適したコースを選択するようにしましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況を公表
厚生労働省「エイジフレンドリー補助金

 

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6月17日 見直しが濃厚となった大学生の健康保険の扶養年収基準

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健康保険は、従業員(被保険者)のみならず、一定範囲の家族についても被扶養者として保険給付を受けることができます。2025年の税制改正により所得税における扶養関連の見直しが行われたことに伴い、これに合わせるような形で、健康保険の被扶養者の範囲となる要件の一部が見直しされることが濃厚となったことから、以下ではその内容を確認しておきます。

 

[1]被扶養者の主な要件
 健康保険の被扶養者に該当するためには、日本国内に住所(住民票)を有しており、被保険者により主として生計を維持されていることという条件があります。また生計を維持されていると認められるには、以下の「収入要件」および「同居要件」を満たすことが必要です。

[収入要件]
 家族の年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)であること。また、従業員と家族が同居の場合には、家族の収入が従業員の収入の半分未満であり、従業員と家族が別居の場合には、家族の収入が従業員からの仕送り額未満であること。
[同居要件]

 

 同居  家族の範囲
 不要  配偶者、子ども、孫および兄弟姉妹、父母、祖父母などの直系尊属
 必要  同居不要の家族を除き従業員と3親等内の親族(おじおば、甥姪とその配偶者等)や内縁関係の配偶者の父母および子ども(※)の場合

※配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む

 

[2]変更が予定される収入要件
 2025年の税制改正において、大学生のアルバイトの就業調整に対応することを目的とし、19歳以上23歳未満の大学生年代の子ども等について合計所得金額が85万円(給与収入150万円に相当)までは、その子どもの親等が特定扶養控除と同額の所得控除を受けられる仕組み(特定親族特別控除)が導入されることになりました。
 健康保険の被扶養者の収入要件についても、これに合わせるような形で、2025年10月1日から19歳以上23歳未満の家族(配偶者を除く)については、現状の年間収入130万円未満から150万円未満に引き上げられることが予定されています。なお、この取扱いは19歳以上23歳未満という年齢での判断であり、学生であるか否かは問われないものとなっています。

 この取り扱いについて、2025年6月10日現在、正式な公表はありませんが、従業員の関心の高いテーマになります。対象となる家族がいる従業員には、変更される見込みであることを早めに伝えておくとよいでしょう。

 

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6月10日 改正労働安全衛生法の成立と7月から始まる全国安全週間

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改正労働安全衛生法及び作業環境測定法が成立し、2025年5月14日に公布されました。以下では、公布された改正労働安全衛生法の中から特に押さえておきたい内容と、7月から始まる全国安全週間の取り組みについてとり上げます。

 

[1]押さえておきたい改正労働安全衛生法
 改正労働安全衛生法の中で、実務上の影響が大きく、特に押さえておきたい項目として「個人事業者等に対する安全衛生対策の推進」と「ストレスチェックの実施」の2点があります。
 まず、1点目の個人事業者等に対する安全衛生対策の推進については、既存の労働災害防止対策に個人事業者等も取り込み、労働者だけでなく個人事業者等による災害の防止を図るため、以下の措置を行う必要があります。

  1. 注文者等が講ずべき措置(個人事業者等を含む作業従事者の混在作業による災害防止対策の強化など)を定め、併せてILO第155号条約(職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約)の履行に必要な整備を行う。〔2027年4月1日施行〕
  2. 個人事業者等自身が講ずべき措置(安全衛生教育の受講等)や業務上災害の報告制度等を定める。〔一部2027年1月1日施行と2027年4月1日施行〕

 次に、2点目のストレスチェックの実施については、現在は労働者数50人以上の事業場に対して義務付けられているものを、今後、労働者数50人未満の事業場にも義務付けるものです。施行日については、公布後3年以内に政令で定める日とされています。今後、厚生労働省からはパンフレットなど様々な情報発信が行われる見込みですので、そうした資料も活用しながら、対策を進めましょう。

[2]7月から始まる全国安全週間
 厚生労働省では、7月1日から7日までを「全国安全週間」、6月1日から30日までを準備期間として定め、以下の事項を実施することをアナウンスしています。

  1. 安全広報資料等を作成し、配布する。
  2. 様々な広報媒体を通じて広報する。
  3. 安全パトロール等を実施する。
  4. 安全講習会や、事業者間で意見交換し、好事例を情報交換するワークショップ等を開催する。
  5. 安全衛生に係る表彰を行う。
  6. 「国民安全の日」(7月1日)の行事に協力する。
  7. 事業場の実施事項について指導援助する。
  8. その他「全国安全週間」にふさわしい行事等を行う。

 また6月より、熱中症予防対策が事業主に義務づけられましたが、これについては上記の全国安全週間の実施要綱の中で、事業場(事業主)が継続的に実施する事項のひとつに挙げられています。熱中症のおそれのある作業者の早期発見のための連絡体制の整備とその内容の周知など、対応ができていない場合は早急に行いましょう。

■参考リンク
厚生労働省「第217回国会(令和7年常会)提出法律案
厚生労働省「令和7年度「全国安全週間」を7月に実施
厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(職場における熱中症予防対策)

 

 

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