10月7日 改めて確認しておきたい健康診断実施後の対応

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

 

定期健康診断(以下、「健康診断」という)を秋に実施している企業も多いと思いますが、健康診断の受診後の結果に異常の所見があった場合の取扱いなど、健康診断実施後に求められる対応が適切にできていないケースが見受けられます。そこで今回は、健康診断の実施後の対応についてとり上げます。

 

[1]有所見者への対応
 健康診断を実施した後、医師等により異常の所見がある(有所見)かが判断され、有所見のときには、会社は医師等から就業に関する意見を聴取する必要があります。この聴取する意見については、就業上の措置に関して、その必要性の有無、講ずべき措置を聞き、その内容を健康診断結果へ記載してもらいます。講ずべき措置については下表の通りです。(※表はクリックで拡大されます)
 この医師等の意見を勘案し、会社が必要があると認めるときは、その従業員の実情を考慮して、労働時間の短縮、作業の転換、就業場所の変更、深夜業の回数の減少等の措置を講じたり、医師等の意見を衛生委員会等へ報告したりするなどの対応が求められます。

表 医師からの意見聴取の内容

就業区分 就業上の措置の内容 
区分 内容 
通常勤務 通常の勤務でよいもの
就業制限  勤務に制限を加える必要のあるもの 勤務による不可を軽減するため、労働時間の短縮、出張の制限、時間外労働の制限、労働負荷の制限、作業の転換、就業場所の変更、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換等の措置を講じる。
要休業 勤務を休む必要のあるもの 療養のため、休暇、休職等により一定期間勤務させない措置を講じる。

[2]再検査・精密検査となった従業員への対応
 健康診断の実施後に再検査・精密検査となった従業員に対して、会社はどのような対応が必要なのか、迷うケースが多いようです。定期健康診断については、会社に実施義務が課されていますが、この再検査・精密検査については会社に実施義務はなく、厚生労働省が公示する「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」の中で、会社に対して再検査・精密検査の受診を勧奨する努力義務が課されています。

[3]定期健康診断結果報告書の提出
 常時50人以上の労働者を使用している事業場については、健康診断実施後、遅滞なく、定期健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署へ提出しなければなりません。また、この提出は、2025年1月より電子申請での提出が義務となっています。

 労働基準監督署の調査では、有所見とされた後に医師等からの意見を聴取していないとして、是正勧告が行われる事例が見受けられます。健康診断結果が届いた際には、必ず医師等から意見を聴取するなど、必要な対応を進めましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断実施後の措置について
厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されます(令和7年1月1日施行)
厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(改正 平成29年4月14日 健康診断結果措置指針公示第9号)

 

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9月30日 異例づくしとなった2025年度の地域別最低賃金の改定

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[1]最低賃金の種類と改定のタイミング

 賃金額は本来、労使で自由に決めることができるものですが、「最低賃金」として企業が従業員に最低限支払うべき額が定められています。この最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があり、「地域別最低賃金」は、例年10月頃に効力が発生(発効)することが通例とされていました。しかし、2025年度については、発効予定を見ると11月や12月の発効、さらには2026年3月発効の県も出てきており、異例の事態になっています。

[2]2025年度の地域別最低賃金額と発効日
 2025年9月5日時点で確認できる2025年度の地域別最低賃金と発効日(答申状況)は、下表のとおりです。
 厚生労働省は地域別最低賃金額の改定の目安額を都道府県ごとにA~Cランクに分けて示し、その後、都道府県労働局において、地域別最低賃金額や発効日が決められます。
 2025年度の厚生労働省の示した目安額はAランク63円、Bランク63円、Cランク64 円とされていましたが、都道府県労働局での審議の結果、昨年の地域別最低賃金が相対的に低い県を中心に、大幅な引上げがされることになりました。なお、地域別最低賃金額と発効日は官報に公示されて正式な決定となります。

 

 昨年以上の大幅な引き上げとなっています。業務改善助成金を拡充するなどの情報が出ていますので、早めに助成金制度の活用などの対策を検討するとよいでしょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました
厚生労働省「9月5日から、事業場内最低賃金の引上げに取り組む中小企業等を 支援する「業務改善助成金」を拡充します

 

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9月24日 10月1日より創設される教育訓練休暇給付金

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2025年10月1日より雇用保険の教育訓練休暇給付金が新たに始まります。そこで今回は、この内容を解説します。

 

[1]教育訓練休暇給付金とは
 教育訓練休暇給付金は、従業員が離職することなく教育訓練に専念するため、自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合に、基本手当に相当する給付として賃金の一定割合を支給するもので、訓練・休暇期間中の生活費を保障することを目的とした制度です。
 この教育訓練休暇給付金の支給対象となる休暇は、以下の1~3のすべての要件を満たしたものです。

  1. 就業規則等に規定された休暇制度に基づく休暇
  2. 従業員本人が教育訓練を受講するため自発的に取得することを希望し、会社の承認を得て取得する30日以上の無給の休暇
  3. 次に定める教育訓練等を受けるための休暇
    ・学校教育法に基づく大学、大学院、短大、専修学校または各種学校が提供する教育訓練等
    ・教育訓練給付金の指定講座を有する法人等が提供する教育訓練等
    ・職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの(語学留学など)

[2]給付金の対象となる従業員
 支給対象となる従業員は、休暇開始前2年間に12ヶ月以上の雇用保険の被保険者期間があり、休暇開始前に5年以上、雇用保険に加入していた期間がある人です。なお、過去に基本手当等を受給していた場合、通算できない期間が生じる等の注意点があります。

 

[3]給付額と給付日数
 給付額は基本手当に相当するものであり、原則として休暇開始日前6ヶ月の賃金に応じて算定される賃金日額を基に、給付日額が算定されます。その上で、給付日額に休暇日数を乗じて給付額が算出されます。休暇日数の上限は、雇用保険に加入していた期間に応じて、以下の日数になります。

 

 加入期間   5年以上 
 10年未満 
 10年以上 
 20年未満 
 20年以上 
 所定給付日数   90日   120日   180日 

 

[4]活用事例
 厚生労働省発行のリーフレット「教育訓練休暇給付金のご案内」では、以下のものが活用例として紹介されています。

  • 外国企業とのコミュニケーションが必要となる部署への異動を想定し、語学の習得に専念するため教育訓練休暇を取得し、その際に教育訓練休暇給付金を活用する
  • IT企業で勤務している労働者が、上位資格の取得のため、教育訓練休暇を取得し、その際に教育訓練休暇給付金を活用する

    ※図をクリックすると拡大されます。

 教育訓練休暇給付金は、会社に教育訓練休暇の制度が設けられていることが前提となります。従業員から制度を利用したいという申出が出てくる可能性があるため、制度の内容と、自社の制度として創設するかを検討しておきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「教育訓練休暇給付金

 

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9月16日 変更となる19歳以上23歳未満の健康保険の被扶養者要件

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健康保険では、被保険者である従業員が病気やけがをしたときや、亡くなったとき、出産したときに保険給付が行われます。また、一定の要件を満たした従業員の家族(被扶養者に限る)の病気・けが・死亡・出産についても保険給付が行われます。10月から扶養の認定を受けることのできる家族の要件の一部が変更になることから、その変更点をとり上げます。

 

[1]変更の背景
 2025年度の税制改正では、現下の厳しい人手不足の状況における就業調整対策等の観点から、19歳以上23歳未満の親族等を扶養する場合の、特定扶養控除の要件の見直し等が行われました。
 これを踏まえ、健康保険の被扶養者としての認定を受ける家族が19歳以上23歳未満である場合の年間の収入要件についても税制改正に合わせるような形で変更されることになりました。

[2]年間の収入要件の変更内容
 家族が被扶養者となる要件の一つに、年間の収入要件があります。2025年9月30日までは、年間の収入が130万円未満(60歳以上または一定の障害者は180万円未満)が要件です。
 この130万円未満という要件について、扶養の認定を受ける日が2025年10月1日以降であり、扶養の認定を受ける家族が19歳以上23歳未満の場合は、150万円未満に変更されます。
 なお、ここでいう「家族」には、19歳以上23歳未満である従業員の配偶者は含まれません。また、年間の収入要件以外の要件に変更はありません。

 

[3]年齢要件の判定
 今回、変更となる「19歳以上23歳未満」という年齢は、扶養の認定を受ける日が属する年の12月31日時点の年齢で判定されます。
 例えば、扶養の認定を受ける家族が2026年11月に19歳の誕生日を迎える場合には、2026年(1月1日~12月31日の暦年)における年間の収入要件が150万円未満となります。反対に、2026年11月に23歳の誕生日を迎える場合には、2026年(1月1日~12月31日の暦年)における年間の収入要件が130万円未満となります。
 年齢の判定は民法の期間に関する規定を準用することとされており、年齢は誕生日の前日において加算されます。そのため、1月1日が誕生日の人は、12月31日に年齢が加算されることに注意が必要です。

 所得税は一定の通勤手当や食事手当が非課税扱いとなるといった取扱いがありますが、健康保険の収入にはこれらも含めることになります。このように所得税と社会保険(健康保険)では、取扱いに細かな違いがあるため、従業員が誤った認識を持たないように通知文を出すなど注意喚起が必要になります。

 

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9月9日 2024年度の労基署監督指導における賃金不払事案件数は172億円

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先月、厚生労働省は「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)」を公表しました。これは2024年1月から2024年12月までに、全国の労働基準監督署が、賃金不払が疑われる事業場に対して実施した監督指導の結果を取りまとめたものです。以下ではその結果と実際の監督指導の事例をとり上げます。

[1]監督指導状況
 2024年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数及び金額は以下のとおりです。

 件数 22,354件(前年比1,005件増)
 対象労働者数 185,197人(同3,294人増)
 金額 172億1,113万円(同70億1,760万円増)

 件数を業種別にみてみると、商業の4,494件がもっとも多く全体の20%を占め、製造業4,297件、保健衛生業3,416件、接客娯楽業2,832件、建設業2,213件と続いています。一方、金額を業種別にみてみると、運輸交通業の70.2億円がもっとも多く全体の41%を占め、保健衛生業25.6億円、製造業18.6億円、商業13.9億円、建設業9.2億円と続いています。

 

[2]監督指導の対象となった事案
 本結果の中では「監督指導による是正事例」が紹介されています。自社の労働時間管理の在り方を見直す際の参考となりますので、ここでは割増賃金の適正な支払と労働時間の適正な把握に関する指導事例をとり上げます。

[概要]
 始業前に清掃作業を命じられているにもかかわらず、賃金が支払われていないとの情報を受け、労働基準監督署が立入調査を実施したところ、以下の実態が認められた。
  • 使用者の指示により清掃作業が行われていたが、その分の割増賃金が支払われていなかった。
  • 当該清掃作業後にICカードを打刻しており、同作業が労働時間として記録されていなかった。

[労働基準監督署の指導]

  1. 割増賃金の適正な支払について是正勧告(労働基準法第37条第1項違反)等
     時間外労働に対する割増賃金を再計算した上で、実際の支払額との差額を支払うこと。併せて、過去に遡って各労働者から事実関係の聞き取りを行うなどの実態調査を実施し、実際の支払額との差額の割増賃金の支払が必要となる場合には、追加で支払うこと。
  2. 労働時間を適正に把握するため以下について指導
     使用者の指示により行われた清掃作業等は労働時間に該当することを説明し、労働時間を適正に把握するため、清掃時間も含めて正確な始業・終業時刻を記録すること。

 その後、事業場の対応として、清掃作業について労働者へのヒアリングを行い、正しい労働時間数に基づいた差額の割増賃金を支払ったとのことです。また今後、清掃作業は、就業開始後に行うよう管理者を含めた関係労働者に対して指示が行われました。

 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインの中は、労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」とされています。例えば、使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間は労働時間に該当します。改めて、労働時間の取り扱いに問題がないかを確認し、問題があればすぐに改善しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)を公表します

 

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9月2日 長時間労働が疑われる事業場への監督指導結果

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

先日、厚生労働省から長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の結果(2024年度)が公表されました。この資料は、どのような観点から労働基準監督署の監督指導が行われるかを知ることができるものであるため、そのポイントについて見ていきましょう。

 

[1]法違反の状況
 今回の監督指導の結果は、2024年4月から2025年3月までに、長時間労働が疑われる事業所に対し、労働基準監督署が行った監督指導の実施結果を取りまとめたものです。
 監督指導が実施された事業場のうち、労働基準法等の法令違反があった割合は、81.1%で、主な違反としては、「違法な時間外労働があったもの」が42.4%、「賃金不払残業があったもの」が8.0%、「過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの」が21.5%でした。この過重労働による健康障害防止措置が未実施については、以下の違反の件数等が計上されています。いずれも法違反が起きやすいポイントとなりますので、自社の対応に問題がないか確認しておくとよいでしょう。

  • 衛生委員会を設置していないもの等〔労働安全衛生法第18条違反〕
  • 健康診断を行っていないもの〔労働安全衛生法第66条違反〕
  • 1ヶ月当たり80時間を超える時間外・休日労働を行った労働者から、医師による面接指導の申出があったにもかかわらず、面接指導を実施していないもの〔労働安全衛生法第66条の8違反〕
  • 客観的な方法その他の適切な方法により労働時間の状況を把握していないもの〔労働安全衛生法第66条の8の3違反〕

[2]企業が実施した長時間労働削減のための自主的な取組事例
 公表された監督指導結果の中で、監督指導事例と、それに対し企業が実施した長時間労働削減のための自主的な取組事例が紹介されています。例えば、労働者数60人の建設事業者で、情報通信技術を利用し、インターネット上で情報共有を行うことのできるシステムである「ASP(Application Service Provider)」を活用したり、本社(バックオフィス)の人員を含めてタスクシェアを実施したりすることで、時間外労働が多かった部署の時間数が減少されたり、年次有給休暇の平均取得日数が増えたり等の効果が紹介されています。

 厚生労働省は今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行い、11月には「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行うとしています。長時間労働となっている企業は、他社の長時間労働削減のための自主的な取組事例等も参考にしながら、取組みを進める必要があります。

 

■参考リンク
厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和6年度の監督指導結果を公表します

 

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8月26日 40.5%まで上昇した男性の育児休業取得率

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

近年、国は男性の育児休業の取得を促進しており、実際に多くの企業で育児休業を取得する男性従業員が増加しています。今回は、厚生労働省が先日公表した「令和6年度雇用均等基本調査」(以下、「調査」という)の中から、最新の男性の育児休業取得率について確認します。

[1]上昇する男性の育児休業取得率
 男性の育児休業の取得率は長年低迷していましたが、社会の変化や政策の後押しもあり、ここ数年、急速に上昇しており、2024年度は40.5%となりました(下図参照)。前年度(30.1%)から10.4ポイントの大幅上昇となり、調査以来、過去最高となっています。また、育児休業を開始した従業員のうち、出生時育児休業(産後パパ育休)を取得した割合は60.6%でした。この産後パパ育休は2024年10月に創設されたことから、産後パパ育休の取得割合の公表は、今回の調査結果が初めての公表となっています。
 政府は、男性の育児休業の取得率を、2025年度に50%、2030年度に85%という目標を掲げており、目標達成に向けて更なる後押しが続けられています。

[2]男性の育児休業等の取得率の公表
 2025年4月より、男性の育児休業等の取得率の公表が従業員数300人を超える企業に拡大されました。公表のタイミングについては、公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度(公表前事業年度)の状況について、公表前事業年度終了後、おおむね3ヶ月以内とされています。事業年度末(決算時期)に対応した公表期限の目安は下表のとおりです。対象となる企業は、公表期限までに対応できるように準備を進めましょう。

 育児休業に関しては、改正育児・介護休業法が今年4月と10月に段階的に施行され、今年4月には雇用保険の新しい給付金として、出生後休業支援給付金が創設されるといった制度の見直しが頻繁に行われています。最新の内容を確認しながら、対応を進めていきましょう。

 

■参考リンク:
厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査
厚生労働省「2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます
厚生労働省「育児・介護休業法について
厚生労働省「育児休業等給付について

 

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8月19日 スポットワークを利用する際の注意点

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最近、スポットワークを「利用している」、または、「利用していた」という話を耳にすることが増えています。スポットワークを利用する人が増加し、働き方への注目が高まる中、厚生労働省からもその活用における留意事項等をまとめたリーフレットが公開されるなどの動きも出ています。以下では、このリーフレットの中からスポットワークを利用する際の注意点を確認します。

 

[1]スポットワークとは
 厚生労働省から公開されたリーフレットでは、スポットワークについて以下のように定義されています。

  • スポットワークとは、短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働くこと
  • スポットワークの雇用仲介を行う事業者が提供する雇用仲介アプリを利用してマッチングや賃金の立替払を行うもの

[2]労務管理上の注意点
 スポットワークについては、スポットワークのサービスを提供している事業者(スポットワーク提供事業者)から人材を派遣してもらうイメージがありますが、実際には派遣ではなく、サービス提供を受けた企業による直接雇用であることに注意が必要です。また、労働契約の成立時期は個別の具体的な状況によりますが、以下のように判断されることと示されています。

面接等を経ることなく先着順で就労が決定する求人では、別途特段の合意がなければ、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点で労使双方の合意があったものとして労働契約が成立するものと一般的には考えられる。

 

 そのため、スポットワークのサービスの提供を受ける際には、応募があった時点で労働契約が成立するという認識をしておくことが求められます。その他、企業の都合で丸1日休業とする場合や、仕事の早上がりをさせることになった場合は、労働基準法第26条により休業手当を支払う必要があります。

 今回、厚生労働省からリーフレットが公開されたことを受けて、一般社団法人スポットワーク協会では今後、スポットワーク提供事業者に必要な対応を求めていくこととしています。そのため、直接労働契約を締結する企業としては、スポットワーク提供事業者からの適正な対応に関する案内の内容を確認し、ルールをしっかり理解した上で、スポットワークを活用することが求められます。

 

■参考リンク
厚生労働省「いわゆる「スポットワーク」の留意事項等
一般社団法人スポットワーク協会「2025年7月 「スポットワークサービスにおける適切な労務管理へ向けた考え方」を取りまとめました

 

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8月5日 1,000件超となった精神障害の労災支給決定件数

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従業員がメンタルヘルス疾患を発症し、欠勤や休職をするケースが増加しています。その中には、仕事による強いストレスがその原因となっている事例もあるようです。2025年6月に公表された厚生労働省の資料によると、精神障害を理由とした労災の請求件数、そして支給決定件数が大幅に増加しています。そこで以下では、公表された資料の内容を確認した上で、企業に求められる対策について見ていきます。

 

[1]精神障害の労災補償状況
 精神障害の労災補償状況は下図のとおりとなっています。2024年度の請求件数は3,780件で、前年度の3,575件から205件の増加となり、過去最多となりました。また、支給決定件数については1,055件となり、前年の883件から172件の大幅増加となりました。こちらも過去最多となり、今回1,000件を初めて超えました。
 支給決定件数の中で多い業種(中分類)の上位4つをみてみると、社会保険・社会福祉・介護事業152件、医療業118件、道路貨物運送業69件、総合工事業46件となっており、医療・福祉の業種で多いことが分かります。認定率(決定件数における支給決定件数の割合)については30.2%で、10件の申請があればそのうち3件が労災として認定されているという状況です。
※図はクリックで拡大されます。

[2]具体的な出来事
 支給決定は、その傷病に繋がる具体的な出来事があったかを確認して判断されますが、支給決定の内容を具体的な出来事別に分類すると、その上位は以下の通りとなっています。

  1. 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(224件)
  2. 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった(119件)
  3. 顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた(108件)
  4. セクシュアルハラスメントを受けた(105件)
  5. 業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(87件)

 支給決定件数(1,055件)のうち、上司等からのパワーハラスメントがトップで、4件に1件が上司等からのパワーハラスメントとなっています。また、3位については、今後、企業への対策が義務化されるカスタマーハラスメントに関係する項目となります。ハラスメントは従業員のメンタルヘルス不調にも繋がるリスクのある重大な問題であり、継続的な防止対策が求められます。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年度「過労死等の労災補償状況」を公表します

 

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7月29日 従業員の自宅に届く協会けんぽの資格確認書

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

今年12月2日以降、医療機関等の窓口に提示している現在の健康保険証が、使用できなくなります。そのため、協会けんぽでは、マイナ保険証を利用できない従業員(被保険者)とその家族(被扶養者)に対して、資格確認書を送付する予定です。以下では、この内容を説明します。

 

[1]資格確認書とは
 資格確認書とは、マイナンバーカードの発行をしていない人や、マイナンバーカードに健康保険証の利用登録を行っていない等の理由により、マイナンバーカードを健康保険証として利用できない人等が、医療機関等へ提示することで保険診療を受けることができるものです。
 これまでは、原則として2024年12月2日以降に新たに資格を取得した人や、被扶養者としての認定を受けた人で、マイナンバーカードを健康保険証として利用できない人に発行されていました。今後、2024年12月1日以前に健康保険証が発行されていた人についても、2025年12月1日までに資格確認書が発行にも必要になるため、その発行が行われることになりました。

[2]今後の流れ
 今回、保険者が協会けんぽである事業所については、2025年7月下旬より順次、対象者の資格確認書が発行され、従業員の自宅へ送付されます。この対象者とは、現在、健康保険証を持っている人(2024年11月29日までに日本年金機構において新規に資格取得の決定または被扶養者の認定が行われた人)のうち、2025年4月30日時点でマイナンバーカードを健康保険証として利用できない人です。
 従業員の自宅には特定記録郵便で送付され、被扶養者の資格確認書も同封されます。送付する資格確認書が5枚以上の場合は複数の封筒での送付になります。従業員の住所に送付後、宛先不明等の理由で不着となった場合は、会社の方に再度送付され、会社から従業員に配布する必要が出てきます。

 

 送付の時期は、都道府県ごとに異なり、数回に分けて送付する支部もあるようです。送付の時期の詳細は、協会けんぽのホームページで公開されていますので、いつごろになるのか確認しておきましょう。また、送付対象となる従業員に対して、資格確認書が自宅に届く旨を事前に周知しておくとよいでしょう。

■参考リンク
協会けんぽ「マイナ保険証をお持ちでない方へ資格確認書を送付します(従前の健康保険証をお持ちの方)

 

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