11月14日 最低賃金引上げに伴い賃上げに取り組む企業への公的支援

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

2023年度の最低賃金は、過去最大の引上げ幅となりました。この引上げに伴い、賃上げに取り組む企業への公的支援が設けられています。助成金には予算額が設けられているため、いざ活用しようと考えたときに、受付が終了している可能性があります。
活用される場合は、早めに検討しましょう。

 

[1]業務改善助成金
業務改善助成金とは、事業場内で最も低い賃金を30円以上引き上げ、設備投資等を行った中小企業・小規模事業者等に、設備投資等の費用の一部を助成する制度です。
事業場内の最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内の事業場が対象となります。例えば地域別最低賃金が950円で、事業場内の最低賃金が985円の場合、差額が50円以内であることから対象となります。また、2023年8月31日より、事業場規模が50人未満で、2023年4月1日から2023年12月31日までに事業場内の最低賃金の引き上げを実施した場合は、賃金引き上げ後に申請することも可能です。
費用の助成率は、下表のとおりです。なお、引き上げる労働者の数と引上げ額の区分に応じて、助成上限額が設けられています。※図はクリックで拡大されます。

[2]キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金に設けられている「賃金規定等改定コース」は、有期雇用労働者等の基本給を定める賃金規定等を3%以上増額する形で改定し、その規定を適用させた場合に助成されるものです。要件としては、以下のすべてに当てはまる必要があります。

  1. キャリアアップ計画の作成・提出
    賃金規定等を増額改定する前日までにキャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局へ提出していること。
  2. 賃金規定等の適用
    有期雇用労働者等の基本給を賃金規定等に定めていること。
  3. 賃金アップ
    2.の賃金規定等を3%以上増額改定し、改定後の規定に基づき6ヶ月分の賃金を支給していること。

3%以上5%未満増額改定した場合に1人当たり5万円(大企業3.3万円)、5%以上増額改定した場合に6.5万円(大企業4.3万円)が助成されます。1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は100人までです。

 

■参考リンク
厚生労働省「最低賃金引き上げに伴う支援を強化しています
厚生労働省「業務改善助成金
厚生労働省「キャリアアップ助成金」

 

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11月7日 今年も11月に実施される過重労働解消キャンペーン

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

厚生労働省では、長時間労働の削減等の過重労働解消に向けた気運を更に高めるために、例年11月に実施している過重労働解消キャンペーンを、今年も2023年11月1日(水)から11月30日(木)までの1ヶ月間において実施することにしています。

 

[1]過重労働解消キャンペーン

このキャンペーンは、2014年に施行された過労死等防止対策推進法に基づき、11月が過労死等防止啓発月間となっていることから実施されるものであり、過労死等の一つの要因である長時間労働の削減等、過重労働解消に向けた取組を推進するため、使用者団体・労働組合への協力要請、リーフレットの配布などによる周知・啓発等の取組が集中的に実施されます。

[2]過重労働解消キャンペーンの実施内容

過重労働解消キャンペーンの一つとして、長時間労働が行われていると考えられる事業場等への重点監督が予定されています。監督の対象となる事業場等や確認される事項は以下のとおりです。

  1. 監督の対象となる事業場等
    1. 長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場や各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場等
    2. 労働基準監督署およびハローワークに寄せられた相談等から、離職率が極端に高いなど若者の「使い捨て」が疑われる企業等
  2. 重点的に確認される事項
    1. 時間外・休日労働が、時間外・休日労働に関する協定届(36協定)の範囲内であるか等について確認され、法違反が認められた場合は是正指導が行われる。
    2. 賃金不払残業が行われていないかについて確認され、法違反が認められた場合は是正指導される。
    3. 不適切な労働時間管理が行われているときは、労働時間を適正に把握するよう指導される。
    4. 長時間労働者に対しては、医師による面接指導等、健康確保措置を確実に講じるよう指導される。
  3. 書類送検
    監督指導の結果、重大・悪質な法違反が認められた場合は、送検され、公表される。

 なお、監督指導の結果、1年間に2回以上、同一条項の違反について是正勧告を受けた場合等は、ハローワークにおいて、求人を一定期間受理しないこととされています。また、職業紹介事業者や地方公共団体に対しても、ハローワークと同様の取組を行うように要請されています。

 

 この機会に、自社の労働時間の状況を把握し、適正な労働時間の管理が行われているかも確認しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「過重労働解消キャンペーン
厚生労働省「11月は「過労死等防止啓発月間」です

 

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10月31日 協会けんぽの被扶養者資格の再確認

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

全国健康保険協会(以下、「協会けんぽ」という)では、健康保険の被扶養者になっている人について、毎年一定の時期に被扶養者の要件に該当しているかの確認を行っています。
今年度は、10月下旬から11月上旬にかけて確認のための被扶養者状況リストが送付されることになっていることから、今回は、再確認の実施状況とその際の注意点をとり上げます。

 

[1]再確認の目的と2022年度実施の状況
健康保険の被扶養者は、健康保険料を支払うことなく、一定の保険給付が受けられます。そのため、要件に該当しない被扶養者が被扶養者となっていると、医療費および高齢者の医療費への拠出金が不当に高くなり、保険料が増加することとなります。被扶養者資格の再確認は、それを防止する目的で実施されています。
昨年度(2022年度)実施の際には、被扶養者から削除となった人は約7.8万人(2023年3月31日現在)となっており、結果、9億円程度の前期高齢者納付金の負担削減効果が見込まれたと公表されています。被扶養者から削除となった主な理由としては、「就職して健康保険の資格を取得したものの、被扶養者から削除する届出を年金事務所へ提出していない」というものが大半でした。

 

[2]再確認時の注意点
再確認は協会けんぽから会社に送付されてくる状況リストに従い、被扶養者の要件を満たしているかについて、書面や口頭で、各被保険者(従業員)に対して行います。
再確認時の注意点として、被保険者と別居している被扶養者がいるケースでは、仕送りの事実と仕送り額の確認できる書類を提出する必要があります(※)。具体的には、振込の場合は預金通帳の写し、送金の場合は現金書留控えの写しを提出する必要があります。預金通帳の写しを提出する場合で、仕送りとは関係のない箇所が見られたくないときはマスキング(黒く塗りつぶす等)をして差し支えありません。

※学生の場合はこの添付を省略できます。

提出期限は2023年12月8日ですが、従業員に被扶養者の要件を満たしていることが確認できる書類を準備してもらうケースがあるため、早めに依頼しましょう。

 

[3]被扶養者認定を円滑化へ 年収の壁見直し策
 被扶養者の認定には、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書などの確認が必要ですが、政府は2023年10月から「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」という暫定的な取り組みを始めます。
パート・アルバイトで働く人が、繁忙期に労働時間を延ばすなどして一時的に130万円以上となっても事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けられるようにします。これにより、パート・アルバイトで働く人は国民年金・国民健康保険の保険料支払いの負担を回避できます。扶養されている主婦だけでなく、学生も対象となります。注意点は以下の通りです。
1. 「一時的な収入変動」として認められる必要がある
2. 「一時的な事情」の認定は連続2年まで
3. フリーランス・個人事業主は対象外

1. 「一時的な収入変動」として認められる必要がある
厚労省によると、一時的な収入変動とは、以下のような理由で、主に時間外勤務(残業)手当や臨時的に支払われる繁忙手当などが想定されています。

  • ほかの従業員が退職したことで、当該労働者の業務量が増加した
  • ほかの他の従業員が休職したことで、当該労働者の業務量が増加した
  • 業務の受注が好調だったことで、当該事業所全体の業務量が増加した
  • 突発的な大口案件により、当該事業所全体の業務量が増加した

 一方で、基本給が上がった場合や、恒常的な手当が新設された場合など、今後も引き続き収入が増えることが確実な場合は、一時的な収入増加とは認められません。
 また、被扶養者が被保険者と同一世帯に属している場合、被扶養者の年間収入が被保険者の年間収入を上回る場合は被扶養者から外れることになります。
 ただし、「一時的な収入変動」の具体的な上限額は明らかになっていません。仮に上限を設けた場合、当該上限が新たな「年収の壁」となりかねず、一時的な事情によるものかどうかは収入金額のみでは判断が困難であることためだといいます。

2. 「一時的な事情」の認定は連続2年まで
 事業主の証明による被扶養者認定の円滑化は「一時的な事情」としての認定のため、同一の者について原則として連続2回までとなります。
 社会保険の被扶養者の収入確認は、少なくとも年1回は保険者が確認し、被扶養者の要件を引き続き満たしていることを確認することが望ましいとされています。そのため、被扶養者の収入確認を年1回実施する場合は、連続2年までとなります。

3. フリーランス・個人事業主は対象外
 厚労省によると、事業主の証明による被扶養者認定の円滑化は、あくまでも事業主の人手不足などによる一時的な収入変動を対象としています。そのため、特定の事業主と雇用関係にない人は対象となりません。ただし、フリーランスや自営業者としての収入と、勤務先からの給与収入の両方がある場合、給与収入が一時的な収入変動で増加したことにより被扶養者の認定基準額を超えた場合は、対象になります。

事業主の証明による被扶養者認定の円滑化は、2023年10月からの被扶養者認定や被扶養者の収入確認に適用します。なお、それ以前の扶養認定や被扶養者の確認には遡及しません。被扶養者認定の円滑化は暫定的な対応ですが、政府は2025年に予定している次期年金制度改正に向けて、議論を開始しています。その制度改正も踏まえて、今後の方針が決まる見込みです。

■参考リンク
協会けんぽ「事業主・加入者のみなさまへ「令和5年度被扶養者資格再確認について」
協会けんぽ「事業主・加入者のみなさまへ「令和4年度被扶養者資格の再確認にご協力いただきありがとうございました

 

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10月24日 12月から始まるアルコール検知器によるアルコールチェック

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

2022年10月からアルコール検知器によるアルコールチェックの義務化は、アルコール検知器の供給状況から、当分の間、目視等で行うことが認められていました。今回、十分なアルコール検知器が市場に流通するようになる見通しが立ったことから、2023年12月よりアルコール検知器によるアルコールチェックが始まります。以下では、改めてこの内容をとり上げます。

 

[1]安全運転管理者とは
乗車定員が11名以上の自動車を1台以上使用している事業所、その他の自動車を5台以上(自動二輪車は、原動機付自転車は除き1台を0.5台で計算)使用している事業所は、安全運転管理者を選任する必要があります。さらに、自動車20台以上を使用している事業所は、20台ごとに副安全運転管理者を1人選任することになっています。
この安全運転管理者は自動車使用の本拠ごとに選任する必要があり、例えばA市にある本社(使用車両10台)、B市にある支店(使用車両5台)であった場合、それぞれで選任する必要があります。この台数の判断に当たっては、使用するすべての自動車が対象となり、従業員の持ち込み車両やリース車両も含まれます。なお、安全運転管理者の業務として、以下の9つがあります。

  1. 運転者の状況把握
  2. 安全運転確保のための運行計画の作成
  3. 長距離、夜間運転時の交代要員の配置
  4. 異常気象時等の安全確保の措置
  5. 点呼等による過労、病気その他正常な運転をすることができないおそれの有無の確認と必要な指示
  6. 運転者の酒気帯びの有無の確認(アルコールチェック)
  7. 酒気帯びの有無の確認内容の記録・保存
  8. 運転日誌の備え付けと記録
  9. 運転者に対する安全運転指導

 

[2]12月からの変更点
上記6のアルコールチェックについて、現在は、運転前後の運転者の状態を目視等で確認することで、酒気帯びの有無を確認することが認められています。2023年12月より、運転者の状態を目視等で確認するほか、国家公安委員会が定めるアルコール検知器を用いて確認し、さらにアルコール検知器を常時有効に保持する必要があります。
この国家公安委員会が定めるアルコール検知器とは、呼気中のアルコールを検知し、その有無またはその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器であれば足りるとされています。そして、アルコール検知器を常時有効に保持する際には、正常に作動し、故障がない状態で保持しておくことが求められます。そのため、安全運転管理者は、アルコール検知器の取扱説明書に基づき、適切に使用し、検知器に定められた使用期限や使用回数を厳守しつつ、定期的に故障の有無を確認するなどの保守管理を行っていくことが必要です。

12月に向けて、これからアルコール検知器を用いて運用していく企業もあるでしょう。安全運転管理者の業務内容を確認したり、アルコールチェックを記録するためのフォーマットを見直したりするなど、準備を進めていきましょう。

 

■参考リンク
警察庁「事業主・職業運転者の交通事故防止関連

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10月17日 厚生労働省が乗り出した扶養の壁対策

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

社会保険には、年収106万円以上で健康保険・厚生年金保険に加入することになることから、社会保険料の負担を避けて就業調整をするいわゆる「106万円の壁」と、年収130万円以上で国民年金・国民健康保険に加入することになることから、社会保険料の負担を避けて就業調整をするいわゆる「130万円の壁」があります。
9月下旬、厚生労働省からこれらの壁を意識せずに働くことのできる環境づくりを後押しするための施策「年収の壁・支援強化パッケージ」が公表されました。

[1]106万円の壁への対応

[キャリアアップ助成金の変更]
現在あるキャリアアップ助成金に「社会保険適用時処遇改善コース」が新設されることとなりました。このコースは、短時間労働者が社会保険の加入により手取り収入が減少することを意識せず働くことができるよう、従業員の収入を増加させる取組みを行った会社に対して、従業員1人当たり最大50万円の支援を行うものとなっています。なお、実施に当たっては、支給申請の事務が簡素化される予定です。
また、従業員の収入を増加させる取組みとしては、賃金の引上げや所定労働時間の延長が考えられますが、これらのほか、社会保険の適用に伴う社会保険料の負担を軽減するために「社会保険適用促進手当」を支給する場合も、助成金の支給対象にするとしています。

[社会保険適用促進手当]
この「社会保険適用促進手当」については、新たに発生した本人負担分の社会保険料相当額を上限として、従業員の標準報酬月額・標準賞与額の決定の際には考慮しない取扱いとなります。この取扱いの適用は最大2年間とされています。

[2]130万円の壁への対応
被扶養者の認定の基準の1つに「年収130万円未満であること」があります。この被扶養者の認定基準について、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入の変動によるときは、その旨を会社の証明を添付することにより迅速で円滑な判断ができるように変更されます。

このほか、特に中小企業において、配偶者手当の見直しを後押しするために、見直しの手順をフローチャートで示す等のわかりやすい資料を作成・公表するといった対応も図られることになっています。詳細は今後示されることになりますので、厚生労働省のホームページで確認するとよいでしょう。

■参考リンク
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ

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10月10日 時間単位年休と子の看護休暇等の時間単位の取扱いの違い

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

各種休暇の中で、従業員が時間単位で取得できるものとして年次有給休暇(以下、「年休」という)と子の看護休暇・介護休暇(以下、「子の看護休暇等」という)があります。それぞれの違いに着目し、内容を確認しましょう。

[1]労使協定の位置づけ

年休は原則、暦日単位での取得になっており、時間単位で取得するには労使協定を締結する必要があります。

一方、子の看護休暇等については、2021年1月1日より、労使協定を締結することなく、時間単位でも取得できるようにすることが義務となりました。なお、子の看護休暇等を時間単位で取得させることが困難と認められる業務に従事する従業員を、時間単位での取得から除外することが可能ですが、その際は労使協定を締結することが必要です。

[2]取得単位の考え方
時間単位年休は、1時間未満を取得単位とすることはできず、1時間以上の単位での取得となります。例えば2時間単位での取得とすることもできますが、この場合、労使協定にその単位となる時間数を定めることが求められます。
子の看護休暇等は、1時間単位での取得が原則であり、年休のように2時間単位での取得とすることはできません。一方で、15分などの分単位で取得できるようにすることは、法令を上回る取扱いとして認められます。

 

[3]1日の時間数の取扱い
1日分の年休を時間単位年休に換算するときで、1時間未満の端数があるときは、時間単位に切り上げることとされています。例えば所定労働時間が7時間30分の場合、1日8時間に換算した上で、時間単位の取得をさせることになります。
一方、子の看護休暇等も同様に考えることが原則ですが、分単位で取得できるようにした場合については、1日の所定労働時間数に1時間に満たない端数があったとしても、従業員にとって不利益にならなければ、端数を時間単位に切り上げなくても差し支えないとされています。

 

[4]中抜けの取扱い
時間単位年休については、取得する時間帯を制限することはできません。そのため、所定労働時間の途中に時間単位年休を取得するいわゆる「中抜け」としての取得もできます。
子の看護休暇等については、始業時刻から連続、または終業時刻まで連続して取得することになっており、法令上は中抜けでの取得を認めていません。なお、会社が任意で、子の看護休暇等に対し、中抜けの取得を認めることは問題ありません。

時間単位年休と子の看護休暇等の時間単位での取得について、取扱いを整理すると、上記のようなさまざまな違いがあります。細かな点について、知識があいまいになっているケースもあるため、この機会に再確認しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト「時間単位の年次有給休暇制度とは
厚生労働省「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!

 

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10月3日 過去最大の引上げ幅となった2023年度の最低賃金

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。

仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。

したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。

[1]最低賃金の種類と改定タイミング
賃金については、都道府県ごとにその最低額(最低賃金)が定められており、企業はその額以上の賃金を労働者に支払うことが義務付けられています。
この最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類がありますが、このうち「地域別最低賃金」は、毎年10月に改定されることになっています。2023年度について全都道府県の「地域別最低賃金」が決定しました。

[2]2023年度の地域別最低賃金と発効日
2023年度の地域別最低賃金と発効日は、下表のとおりとなっています。改定額の全国加重平均額は1,004円(昨年度961円)となり、43円の引上げです。これは1978年度に現在の目安制度が始まって以降で最高額となります。
なお、最低賃金の地域間格差も課題とされていましたが、最高額(1,113円)に対する最低額(893円)の比率は、80.2%(昨年度79.6%)となり、9年連続の改善となっています。※図はクリックで拡大されます。

 

パートタイマー・アルバイト等の時給者の賃金が最低賃金を下回っていないかを確認するとともに、月給者についても1時間あたりの賃金額を算出し、確認するようにしましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧

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9月26日 有期契約労働者を雇用する際の注意点

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)については、契約更新を繰り返し、一定期間雇用をしていたにも関わらず、突然、契約更新をせずに期間満了をもって退職させるなどして、トラブルになることが少なくありません。以下では、有期契約労働者を雇用する際の注意点をとり上げます。

【1】契約締結時の労働条件の明示

有期契約労働者と労働契約を締結する際には、労働契約期間とあわせて、契約更新の有無と更新する際の判断基準を明示する必要があります。更新の判断基準については、例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 契約期間満了時の業務量により判断する
  • 労働者の勤務成績、態度により判断する
  • 労働者の能力により判断する
  • 会社の経営状況により判断する
  • 従事している業務の進捗状況により判断する

労働条件通知書が実態とあった内容となっているかを確認し、必要に応じ見直しをしましょう。

【2】雇止めにおける手続き

労働契約を更新してきた有期契約労働者を、現在の労働契約をもって更新せずに終了する。「雇止め」を行う場合には、契約期間が満了する。少なくとも30日前までに伝える必要があります(雇止めの予告)。この雇止め予告の対象は、以下のいずれかに該当する人です。

① 有期労働契約を3 回以上更新している人

② 1 年以下の契約期間の労働契約を更新し、1年を超えて雇用している人

③最初から1年を超える契約期間の労働契約を締結している人

 なお、現在の労働契約をもって契約更新をしない旨が明示されている場合は、この雇止め予告を行う必要はありません。

 

【3】雇止めに係る証明

雇止めの予告をした後に、有期契約労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合、会社は遅滞なくこの証明書を交付する必要があります(雇止めの理由の明示)。

また、雇止めの後についても、有期契約労働者から請求があれば証明書の交付が必要です。  

明示する雇止めの理由は、契約期間の満了とは別の具体的な理由とすることが必要です。例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 前回の契約更新時に、 本契約を更新しないことが合意されていたため
  • 契約締結当初から、 更新回数の上限を設けており、 本契約はその上限に係るものであるため
  • 担当していた業務が終了・中止したため
  • 事業縮小のため
  • 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
  • 職務命令に対する違反行為を行ったため

雇止めに関するトラブルを防ぐために、労働条件通知書に契約更新の判断基準を明示することと併せて、雇入れ時や契約更新時に、会社から有期契約労働者に対して、どのような契約内容かを分かりやすく説明しておくことが望まれます。

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9月19日 2022年度の労基署による賃金不払事案の指導金額は121億円

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

先月、厚生労働省は「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和4年)」を公表しました。これは2022年1月から2022年12月までに、全国の労働基準監督署が、賃金不払が疑われる事業場に対して実施した監督指導の結果を取りまとめたものです。この取りまとめは、これまで支払額が1企業で合計100万円以上の割増賃金不払事案のみが対象とされていましたが、今回から、それ以外の事案を含めた賃金不払事案全体が集計されています。以下ではその結果と実際の監督指導の事例をとり上げます。

 

[1]監督指導状況

 2022年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数及び金額は以下のとおりです。

  • 件数 20,531件
  • 対象労働者数 179,643人
  • 金額 121億2,316万円

 このうち、2022年中に労働基準監督署の指導により企業が賃金を支払い、解決されたものの状況は以下のとおりです。

  • 件数 19,708件(96.0%)
  • 対象労働者数 175,893人(98.0%)
  • 金額 79億4,597万円(65.5%)

 この支払われた金額の中で、1事案における最大支払金額は2.7億円でした。

[2]監督指導の対象となった事案
 本結果の中では「監督指導による是正事例」が紹介されていますが、自社の労働時間管理の在り方を見直す際の参考となりますので、ここでは労働時間の記録と労働実態の乖離の事例をとり上げます。

[概要]

  • 過重労働による労災請求を基に、労働基準監督署が監督指導を実施。
  • 労働時間はタイムカードにより出退勤時刻を把握し、残業時間は残業申請により把握。
  • 聴取調査において、管理者が出退勤時刻と残業申請の時刻に乖離があっても労働者への確認が不十分なまま黙認していたとのことであったため、出退勤記録と残業申請との間の乖離の原因究明や不払となっている割増賃金を支払うよう指導。

[企業が実施した解消策]

  • タイムカードによる出退勤記録と労働者からのヒアリングなどを基に乖離の原因や割増賃金の不払の有無について調査を行い、不払となっていた割増賃金を支払った。
  • 賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。
    1. 日々、出退勤時刻と残業申請の時刻に乖離があった場合には、管理者及び労働者に対し通知を行い、注意喚起を行うこととした。
    2. 毎月、人事担当部署において、出退勤時刻と残業申請の確認を行い、2つの記録に乖離がある場合については、労働者に乖離の理由を確認することとした。
    3. 管理者を集めた会議を開催し、部下とのコミュニケーションを促進することにより、適切な労働時間申請が行われる環境を整える必要性についての意識向上を図った。
    4. 全社員を集めた会議を開催し、労働時間管理の重要性を周知し、会社としてもワーク・ライフ・バランスを重視していることを説明し、労使一体となって適正な労働時間管理の重要性についての認識の共有を図った。

 労働時間の記録と労働実態の乖離がある場合は、上記の取組のように労働者に確認し、乖離を防止するため、労働者本人と管理者に対して注意喚起するなどの取組みが求められます。自社においても、労働時間記録と労働実態の乖離が生じていないか確認し、問題があれば早めに対応しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和4年)を公表します

 

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9月12日 改めて見直したい永年勤続表彰金の社会保険の取扱い

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

長期勤続をした従業員に対し、褒賞金(永年勤続表彰金)を支給したり、特別休暇を付与したりすることがあります。
福利厚生の一環として行われることが多いこれらの制度ですが、制度を運用する上で、社会保険・労働保険の取扱いに注意すべき点があります。以下では所得税のことにも触れつつ、この内容をとり上げます。

[1]社会保険の取扱い

社会保険(健康保険・厚生年金保険)では、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものを「報酬等」として扱います。
2023年6月27日に日本年金機構が公表している「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」が改正され、永年勤続表彰金について、以下の要件をすべて満たすような支給形態であれば、恩恵的に支給されるものとして、原則として報酬等に該当しないことが示されました。

  1. 表彰の目的
    企業の福利厚生施策又は長期勤続の奨励策として実施するもの。なお、支給に併せてリフレッシュ休暇が付与されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される。
  2. 表彰の基準
    勤続年数のみを要件として一律に支給されるもの。
  3. 支給の形態
    社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔が概ね5年以上のもの。

なお、これらの要件を一つでも満たさないことをもって、直ちに報酬等と判断するのではなく、その性質について十分確認した上で、総合的に判断するとされています。

 

[2]労働保険の取扱い

労働保険では、賃金、手当、賞与、その他名称を問わず、労働の対償として会社が従業員に支払うすべてのものを賃金として扱います。
賃金とするもの、賃金としないものは具体的に列挙されており、「勤続褒賞金」は、労働協約・就業規則等の定めがあるか否かを問わず、賃金としないとされています。永年勤続表彰金とは名称が異なりますが、勤続褒賞金と同義と考えられますので、賃金として扱わなくてもよいでしょう。

 

[3]所得税の取扱い
所得税については、国税庁のホームページで、以下のように示されています。

創業記念で支給する記念品や永年にわたって勤務している人の表彰に当たって支給する記念品などは、次に掲げる要件(※)をすべて満たしていれば、給与として課税しなくてもよいことになっています。
なお、記念品の支給や旅行や観劇への招待費用の負担に代えて現金、商品券などを支給する場合には、その全額(商品券の場合は券面額)が給与として課税されます。
※要件は「参考リンク」からご確認ください。

支給目的は同じであっても、それぞれの法令で取扱いが異なります。適切な運用がされているか、この機会に確認しておきましょう。

 

■参考リンク
日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集
厚生労働省「令和5年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方
国税庁「No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき

 

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