11月4日 今年も11月に実施される過重労働解消キャンペーン

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

厚生労働省では、長時間労働の削減等の過重労働解消に向けた気運を更に高めるために、例年11月に実施している過重労働解消キャンペーンを、今年も2025年11月1日(土)から11月30日(日)までの1ヶ月間において実施することになっています。以下では、この内容をとりあげます。

 

[1]過重労働解消キャンペーン
 このキャンペーンは、2014年に施行された過労死等防止対策推進法に基づき、11月が過労死等防止啓発月間とされていることから実施されるものであり、過労死等の一つの要因である長時間労働の削減等、過重労働解消に向けた取組を推進するため、使用者団体・労働組合への協力要請、リーフレットの配布などによる周知・啓発等の取組が集中的に実施されます。

[2]過重労働解消キャンペーンの実施内容
 過重労働解消キャンペーンの一つとして、長時間労働が行われていると考えられる事業場等への重点監督が予定されています。監督の対象となる事業場等や確認される事項は以下のとおりです。

  1. 監督の対象となる事業場等
    以下の事業場等に対して、重点監督が実施されます。
    1. 長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場や各種情報から時間外・休日労働時間数が1ヶ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場等
    2. 労働基準監督署およびハローワークに寄せられた相談等から、離職率が極端に高いなどの問題があると考えられる事業場等
  2. 重点的に確認される事項
    1. 時間外・休日労働が、時間外・休日労働に関する協定届(いわゆる36協定)の範囲内であるか等について確認され、法違反が認められた場合は是正指導が行われる。
    2. 賃金不払残業が行われていないかについて確認され、法違反が認められた場合は是正指導が行われる。
    3. 不適切な労働時間管理が行われているときは、労働時間を適正に把握するよう指導される。
    4. 長時間労働者に対しては、医師による面接指導等、健康確保措置を確実に講じるよう指導される。
  3. 厳正な対応
    監督指導の結果、重大・悪質な法違反が認められた場合は、送検され、公表される。

 なお、監督指導の結果、1年間に2回以上、同一条項の違反について是正勧告を受けた場合等は、ハローワークにおいて、求人を一定期間受理しないこととされています。また、職業紹介事業者や地方公共団体に対しても、ハローワークと同様の取組を行うように要請されています。

 この機会に、自社の労働時間の状況を把握し、適正な労働時間の管理が行われているかを確認し、問題があれば改善を進めましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「過重労働解消キャンペーン
厚生労働省「11月は「過労死等防止啓発月間」です

 

 

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10月28日 健康保険証の廃止と活用が期待されるマイナ保険証

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2025年12月1日で発行済みの健康保険証は使用できなくなります。そのため、12月2日以降は、医療機関等の窓口で、[1]資格確認書を提示する、[2]マイナ保険証を利用する、そして[3]スマホ保険証を利用する」といった方法により保険診療を受けることになります。以下ではこの3つの利用方法について整理しておきます。

 

[1]資格確認書
 マイナンバーカードの交付を受けていなかったり、交付を受けていても健康保険証の利用登録をしていない場合には、マイナ保険証を利用できないことから、健康保険の保険者から「資格確認書」が発行されます。
 資格確認書は健康保険証と同様に、医療機関等の窓口に提示することで、保険診療を受けることができます。健康保険証と同様に利用できますが、資格確認書には有効期間が設けられているため、その期間に合わせて差し替えが必要になります。

[2]マイナ保険証
 マイナ保険証は、健康保険証として利用登録を行ったマイナンバーカードのことをいいます。マイナ保険証は、医療機関等の窓口でマイナンバーカードを機器にかざすことで健康保険証の情報がオンラインで確認され、その情報を基に保険診療が受けられます。
 なお、マイナ保険証を利用するための機器は、既に多くの医療機関等で設置されています。

 

[3]スマホ保険証
 2025年9月19日から、マイナ保険証に続き、機器の準備が整った医療機関等で、順次、「スマホ保険証」が利用できるようになっています。
 「スマホ保険証」とは、健康保険証の利用登録がされたマイナンバーカードをスマートフォンに追加し、医療機関等の窓口でスマートフォンを機器にかざすことで、マイナ保険証と同様に利用できるというものです。これによりマイナンバーカードを医療機関等に持って行かなくとも、スマートフォンにより保険診療を受けられることもあり、利便性が上がると期待されています。
 なお、スマートフォンにマイナンバーカードを追加した場合でも、実物のマイナンバーカードは引き続き利用することができます。

 

 マイナンバーカードの交付申請、健康保険証の利用登録、さらにはスマートフォンへのマイナンバーカードの追加はすべて任意ですが、マイナンバーの活用が広まる中、企業としても活用が広がってきていることを従業員に案内してもよいかもしれません。

 

■参考リンク
厚生労働省「資格確認書について(マイナ保険証を使わない場合の受診方法)
厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用について
厚生労働省「スマートフォンのマイナ保険証利用について

 

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10月21日 厚生労働省調査からみる転職入職者の賃金変動状況

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先日、厚生労働省から「令和6年 雇用動向調査結果の概要」が公開されました。この雇用動向調査は、全国の主要産業における入職者数・離職者数、入職者・離職者の性・年齢階級、離職理由等の状況を明らかにすることを目的に、上半期と下半期の年2回実施されているものです。今回の結果は、2024年に実施された2回の調査結果を合算し、年計として取りまとめたものです。以下では、この中から入職と離職の状況、転職入職者の賃金変動状況をとり上げます。

 

[1]入職と離職の状況
 2024年における1年間の入職者数は約747.3万人、離職者数は約719.5万人となり、入職者が離職者を27.8万人上回りました。年初の常用労働者数に対する割合である入職率、離職率をみると、入職率は14.8%(前年比1.6ポイント低下)、離職率は14.2%(前年比1.2ポイント低下)と、いずれも前年を下回っています。また、入職超過率は0.6ポイントとなっており、前年と比べると0.4ポイント縮小しています。

[2]転職入職者の賃金変動状況
 このような状況の中で、転職入職者の賃金については、前職と比べて増加した割合が上昇しています。具体的には、2024年1年間の転職入職者の賃金変動状況をみると、前職の賃金と比べ「増加」した割合は40.5%、「減少」した割合は29.4%、「変わらない」の割合は28.4%となっています。さらに、「増加」した割合の40.5%をみてみると、「1割以上の増加」が29.4%、「1割未満の増加」が11.2%となっています。

 また、前年と比べると、「増加」した割合は3.3ポイント上昇し、「減少」した割合については3.0ポイント低下しています。過去10年間の転職入職者の賃金変動状況別割合の推移をみてみると、下図のようになっており、2019年から2021年にかけては前職より減少した割合が上昇した割合を上回っていましたが、2022年以降は逆転し、2024年は特にその差が顕著となりました。人手不足から、中途採用市場での賃金が上昇していることが分かります。

 これまでの賃金制度は内部公平性(社内の従業員間のバランス)が重視されていましたが、これからは従業員の離職を防止する観点から、外部相当性(労働市場における適正な賃金支給)が重要となっていきます。自社の賃金が地域や同業他社に比べて極端に低いなど問題がないか、定期的にチェックしましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要

 

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10月14日 9月5日から拡充された業務改善助成金

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今年度は過去最大規模での最低賃金の引き上げが行われることになりました。厚生労働省では、事業場内の最低賃金の引上げを行う中小企業を支援するために、業務改善助成金の拡充を行っています。以下ではこの内容をとり上げます。

[1]業務改善助成金とは
  業務改善助成金とは、生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行い、事業場内最低賃金(※)を一定額(各コースに定める金額)以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部が助成されるものです。
※事業場内最低賃金とは、事業場でもっとも低い時給のことを言い、地域別最低賃金と同じように計算します。

 

[2]9月5日から拡充内容
 業務改善助成金は、9月5日から以下の拡充が行われ、使いやすくなっています。
(1)対象事業場の拡大
 この助成金は従来、事業所内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内の事業所が対象となっていましたが、9月5日より対象が拡大され、事業場内最低賃金が改定後の地域別最低賃金額未満までの事業所が対象となりました。例えば、改定前の地域別最低賃金が1,000円で、改定後の地域別最低賃金が1,063円の場合、以前は、事業所内最低賃金が1,000円から1,050円までの事業所が対象でしたが、事業所内最低賃金が1,051円から1,062円までの事業所も対象となります。
(2)手続きの簡略化
 これまでは事前に賃金引上げ計画を作成・提出した上での助成金申請とされていましたが、9月5日から2025年度の該当する地域の最低賃金改定日の前日までに賃金の引上げを実施していれば、賃金引上げ計画の提出は不要となりました。 

 最低賃金引き上げに関しては、今回とり上げた業務改善助成金以外にも、中小企業庁では、ものづくり補助金、IT補助金、中小企業省力化投資補助金(一般型)について、要件の緩和や審査における優遇措置が行われています。また、各都道府県においても、独自の支援策を設けているところがあり、今後、設けるような動きも出てくるでしょう。最新情報を確認ながら、早めに対策を検討しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「業務改善助成金
厚生労働省「最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業
経済産業省「最低賃金引上げに対応する中小企業・小規模事業者への支援策を公表します

 

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10月7日 改めて確認しておきたい健康診断実施後の対応

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定期健康診断(以下、「健康診断」という)を秋に実施している企業も多いと思いますが、健康診断の受診後の結果に異常の所見があった場合の取扱いなど、健康診断実施後に求められる対応が適切にできていないケースが見受けられます。そこで今回は、健康診断の実施後の対応についてとり上げます。

 

[1]有所見者への対応
 健康診断を実施した後、医師等により異常の所見がある(有所見)かが判断され、有所見のときには、会社は医師等から就業に関する意見を聴取する必要があります。この聴取する意見については、就業上の措置に関して、その必要性の有無、講ずべき措置を聞き、その内容を健康診断結果へ記載してもらいます。講ずべき措置については下表の通りです。(※表はクリックで拡大されます)
 この医師等の意見を勘案し、会社が必要があると認めるときは、その従業員の実情を考慮して、労働時間の短縮、作業の転換、就業場所の変更、深夜業の回数の減少等の措置を講じたり、医師等の意見を衛生委員会等へ報告したりするなどの対応が求められます。

表 医師からの意見聴取の内容

就業区分 就業上の措置の内容 
区分 内容 
通常勤務 通常の勤務でよいもの
就業制限  勤務に制限を加える必要のあるもの 勤務による不可を軽減するため、労働時間の短縮、出張の制限、時間外労働の制限、労働負荷の制限、作業の転換、就業場所の変更、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換等の措置を講じる。
要休業 勤務を休む必要のあるもの 療養のため、休暇、休職等により一定期間勤務させない措置を講じる。

[2]再検査・精密検査となった従業員への対応
 健康診断の実施後に再検査・精密検査となった従業員に対して、会社はどのような対応が必要なのか、迷うケースが多いようです。定期健康診断については、会社に実施義務が課されていますが、この再検査・精密検査については会社に実施義務はなく、厚生労働省が公示する「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」の中で、会社に対して再検査・精密検査の受診を勧奨する努力義務が課されています。

[3]定期健康診断結果報告書の提出
 常時50人以上の労働者を使用している事業場については、健康診断実施後、遅滞なく、定期健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署へ提出しなければなりません。また、この提出は、2025年1月より電子申請での提出が義務となっています。

 労働基準監督署の調査では、有所見とされた後に医師等からの意見を聴取していないとして、是正勧告が行われる事例が見受けられます。健康診断結果が届いた際には、必ず医師等から意見を聴取するなど、必要な対応を進めましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断実施後の措置について
厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されます(令和7年1月1日施行)
厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(改正 平成29年4月14日 健康診断結果措置指針公示第9号)

 

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9月30日 異例づくしとなった2025年度の地域別最低賃金の改定

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[1]最低賃金の種類と改定のタイミング

 賃金額は本来、労使で自由に決めることができるものですが、「最低賃金」として企業が従業員に最低限支払うべき額が定められています。この最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があり、「地域別最低賃金」は、例年10月頃に効力が発生(発効)することが通例とされていました。しかし、2025年度については、発効予定を見ると11月や12月の発効、さらには2026年3月発効の県も出てきており、異例の事態になっています。

[2]2025年度の地域別最低賃金額と発効日
 2025年9月5日時点で確認できる2025年度の地域別最低賃金と発効日(答申状況)は、下表のとおりです。
 厚生労働省は地域別最低賃金額の改定の目安額を都道府県ごとにA~Cランクに分けて示し、その後、都道府県労働局において、地域別最低賃金額や発効日が決められます。
 2025年度の厚生労働省の示した目安額はAランク63円、Bランク63円、Cランク64 円とされていましたが、都道府県労働局での審議の結果、昨年の地域別最低賃金が相対的に低い県を中心に、大幅な引上げがされることになりました。なお、地域別最低賃金額と発効日は官報に公示されて正式な決定となります。

 

 昨年以上の大幅な引き上げとなっています。業務改善助成金を拡充するなどの情報が出ていますので、早めに助成金制度の活用などの対策を検討するとよいでしょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました
厚生労働省「9月5日から、事業場内最低賃金の引上げに取り組む中小企業等を 支援する「業務改善助成金」を拡充します

 

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9月24日 10月1日より創設される教育訓練休暇給付金

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

2025年10月1日より雇用保険の教育訓練休暇給付金が新たに始まります。そこで今回は、この内容を解説します。

 

[1]教育訓練休暇給付金とは
 教育訓練休暇給付金は、従業員が離職することなく教育訓練に専念するため、自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合に、基本手当に相当する給付として賃金の一定割合を支給するもので、訓練・休暇期間中の生活費を保障することを目的とした制度です。
 この教育訓練休暇給付金の支給対象となる休暇は、以下の1~3のすべての要件を満たしたものです。

  1. 就業規則等に規定された休暇制度に基づく休暇
  2. 従業員本人が教育訓練を受講するため自発的に取得することを希望し、会社の承認を得て取得する30日以上の無給の休暇
  3. 次に定める教育訓練等を受けるための休暇
    ・学校教育法に基づく大学、大学院、短大、専修学校または各種学校が提供する教育訓練等
    ・教育訓練給付金の指定講座を有する法人等が提供する教育訓練等
    ・職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの(語学留学など)

[2]給付金の対象となる従業員
 支給対象となる従業員は、休暇開始前2年間に12ヶ月以上の雇用保険の被保険者期間があり、休暇開始前に5年以上、雇用保険に加入していた期間がある人です。なお、過去に基本手当等を受給していた場合、通算できない期間が生じる等の注意点があります。

 

[3]給付額と給付日数
 給付額は基本手当に相当するものであり、原則として休暇開始日前6ヶ月の賃金に応じて算定される賃金日額を基に、給付日額が算定されます。その上で、給付日額に休暇日数を乗じて給付額が算出されます。休暇日数の上限は、雇用保険に加入していた期間に応じて、以下の日数になります。

 

 加入期間   5年以上 
 10年未満 
 10年以上 
 20年未満 
 20年以上 
 所定給付日数   90日   120日   180日 

 

[4]活用事例
 厚生労働省発行のリーフレット「教育訓練休暇給付金のご案内」では、以下のものが活用例として紹介されています。

  • 外国企業とのコミュニケーションが必要となる部署への異動を想定し、語学の習得に専念するため教育訓練休暇を取得し、その際に教育訓練休暇給付金を活用する
  • IT企業で勤務している労働者が、上位資格の取得のため、教育訓練休暇を取得し、その際に教育訓練休暇給付金を活用する

    ※図をクリックすると拡大されます。

 教育訓練休暇給付金は、会社に教育訓練休暇の制度が設けられていることが前提となります。従業員から制度を利用したいという申出が出てくる可能性があるため、制度の内容と、自社の制度として創設するかを検討しておきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「教育訓練休暇給付金

 

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9月16日 変更となる19歳以上23歳未満の健康保険の被扶養者要件

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健康保険では、被保険者である従業員が病気やけがをしたときや、亡くなったとき、出産したときに保険給付が行われます。また、一定の要件を満たした従業員の家族(被扶養者に限る)の病気・けが・死亡・出産についても保険給付が行われます。10月から扶養の認定を受けることのできる家族の要件の一部が変更になることから、その変更点をとり上げます。

 

[1]変更の背景
 2025年度の税制改正では、現下の厳しい人手不足の状況における就業調整対策等の観点から、19歳以上23歳未満の親族等を扶養する場合の、特定扶養控除の要件の見直し等が行われました。
 これを踏まえ、健康保険の被扶養者としての認定を受ける家族が19歳以上23歳未満である場合の年間の収入要件についても税制改正に合わせるような形で変更されることになりました。

[2]年間の収入要件の変更内容
 家族が被扶養者となる要件の一つに、年間の収入要件があります。2025年9月30日までは、年間の収入が130万円未満(60歳以上または一定の障害者は180万円未満)が要件です。
 この130万円未満という要件について、扶養の認定を受ける日が2025年10月1日以降であり、扶養の認定を受ける家族が19歳以上23歳未満の場合は、150万円未満に変更されます。
 なお、ここでいう「家族」には、19歳以上23歳未満である従業員の配偶者は含まれません。また、年間の収入要件以外の要件に変更はありません。

 

[3]年齢要件の判定
 今回、変更となる「19歳以上23歳未満」という年齢は、扶養の認定を受ける日が属する年の12月31日時点の年齢で判定されます。
 例えば、扶養の認定を受ける家族が2026年11月に19歳の誕生日を迎える場合には、2026年(1月1日~12月31日の暦年)における年間の収入要件が150万円未満となります。反対に、2026年11月に23歳の誕生日を迎える場合には、2026年(1月1日~12月31日の暦年)における年間の収入要件が130万円未満となります。
 年齢の判定は民法の期間に関する規定を準用することとされており、年齢は誕生日の前日において加算されます。そのため、1月1日が誕生日の人は、12月31日に年齢が加算されることに注意が必要です。

 所得税は一定の通勤手当や食事手当が非課税扱いとなるといった取扱いがありますが、健康保険の収入にはこれらも含めることになります。このように所得税と社会保険(健康保険)では、取扱いに細かな違いがあるため、従業員が誤った認識を持たないように通知文を出すなど注意喚起が必要になります。

 

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9月9日 2024年度の労基署監督指導における賃金不払事案件数は172億円

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先月、厚生労働省は「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)」を公表しました。これは2024年1月から2024年12月までに、全国の労働基準監督署が、賃金不払が疑われる事業場に対して実施した監督指導の結果を取りまとめたものです。以下ではその結果と実際の監督指導の事例をとり上げます。

[1]監督指導状況
 2024年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数及び金額は以下のとおりです。

 件数 22,354件(前年比1,005件増)
 対象労働者数 185,197人(同3,294人増)
 金額 172億1,113万円(同70億1,760万円増)

 件数を業種別にみてみると、商業の4,494件がもっとも多く全体の20%を占め、製造業4,297件、保健衛生業3,416件、接客娯楽業2,832件、建設業2,213件と続いています。一方、金額を業種別にみてみると、運輸交通業の70.2億円がもっとも多く全体の41%を占め、保健衛生業25.6億円、製造業18.6億円、商業13.9億円、建設業9.2億円と続いています。

 

[2]監督指導の対象となった事案
 本結果の中では「監督指導による是正事例」が紹介されています。自社の労働時間管理の在り方を見直す際の参考となりますので、ここでは割増賃金の適正な支払と労働時間の適正な把握に関する指導事例をとり上げます。

[概要]
 始業前に清掃作業を命じられているにもかかわらず、賃金が支払われていないとの情報を受け、労働基準監督署が立入調査を実施したところ、以下の実態が認められた。
  • 使用者の指示により清掃作業が行われていたが、その分の割増賃金が支払われていなかった。
  • 当該清掃作業後にICカードを打刻しており、同作業が労働時間として記録されていなかった。

[労働基準監督署の指導]

  1. 割増賃金の適正な支払について是正勧告(労働基準法第37条第1項違反)等
     時間外労働に対する割増賃金を再計算した上で、実際の支払額との差額を支払うこと。併せて、過去に遡って各労働者から事実関係の聞き取りを行うなどの実態調査を実施し、実際の支払額との差額の割増賃金の支払が必要となる場合には、追加で支払うこと。
  2. 労働時間を適正に把握するため以下について指導
     使用者の指示により行われた清掃作業等は労働時間に該当することを説明し、労働時間を適正に把握するため、清掃時間も含めて正確な始業・終業時刻を記録すること。

 その後、事業場の対応として、清掃作業について労働者へのヒアリングを行い、正しい労働時間数に基づいた差額の割増賃金を支払ったとのことです。また今後、清掃作業は、就業開始後に行うよう管理者を含めた関係労働者に対して指示が行われました。

 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインの中は、労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」とされています。例えば、使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間は労働時間に該当します。改めて、労働時間の取り扱いに問題がないかを確認し、問題があればすぐに改善しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)を公表します

 

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9月2日 長時間労働が疑われる事業場への監督指導結果

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先日、厚生労働省から長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の結果(2024年度)が公表されました。この資料は、どのような観点から労働基準監督署の監督指導が行われるかを知ることができるものであるため、そのポイントについて見ていきましょう。

 

[1]法違反の状況
 今回の監督指導の結果は、2024年4月から2025年3月までに、長時間労働が疑われる事業所に対し、労働基準監督署が行った監督指導の実施結果を取りまとめたものです。
 監督指導が実施された事業場のうち、労働基準法等の法令違反があった割合は、81.1%で、主な違反としては、「違法な時間外労働があったもの」が42.4%、「賃金不払残業があったもの」が8.0%、「過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの」が21.5%でした。この過重労働による健康障害防止措置が未実施については、以下の違反の件数等が計上されています。いずれも法違反が起きやすいポイントとなりますので、自社の対応に問題がないか確認しておくとよいでしょう。

  • 衛生委員会を設置していないもの等〔労働安全衛生法第18条違反〕
  • 健康診断を行っていないもの〔労働安全衛生法第66条違反〕
  • 1ヶ月当たり80時間を超える時間外・休日労働を行った労働者から、医師による面接指導の申出があったにもかかわらず、面接指導を実施していないもの〔労働安全衛生法第66条の8違反〕
  • 客観的な方法その他の適切な方法により労働時間の状況を把握していないもの〔労働安全衛生法第66条の8の3違反〕

[2]企業が実施した長時間労働削減のための自主的な取組事例
 公表された監督指導結果の中で、監督指導事例と、それに対し企業が実施した長時間労働削減のための自主的な取組事例が紹介されています。例えば、労働者数60人の建設事業者で、情報通信技術を利用し、インターネット上で情報共有を行うことのできるシステムである「ASP(Application Service Provider)」を活用したり、本社(バックオフィス)の人員を含めてタスクシェアを実施したりすることで、時間外労働が多かった部署の時間数が減少されたり、年次有給休暇の平均取得日数が増えたり等の効果が紹介されています。

 厚生労働省は今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行い、11月には「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行うとしています。長時間労働となっている企業は、他社の長時間労働削減のための自主的な取組事例等も参考にしながら、取組みを進める必要があります。

 

■参考リンク
厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和6年度の監督指導結果を公表します

 

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