9月9日 2024年度の労基署監督指導における賃金不払事案件数は172億円

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

 

先月、厚生労働省は「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)」を公表しました。これは2024年1月から2024年12月までに、全国の労働基準監督署が、賃金不払が疑われる事業場に対して実施した監督指導の結果を取りまとめたものです。以下ではその結果と実際の監督指導の事例をとり上げます。

[1]監督指導状況
 2024年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数及び金額は以下のとおりです。

 件数 22,354件(前年比1,005件増)
 対象労働者数 185,197人(同3,294人増)
 金額 172億1,113万円(同70億1,760万円増)

 件数を業種別にみてみると、商業の4,494件がもっとも多く全体の20%を占め、製造業4,297件、保健衛生業3,416件、接客娯楽業2,832件、建設業2,213件と続いています。一方、金額を業種別にみてみると、運輸交通業の70.2億円がもっとも多く全体の41%を占め、保健衛生業25.6億円、製造業18.6億円、商業13.9億円、建設業9.2億円と続いています。

 

[2]監督指導の対象となった事案
 本結果の中では「監督指導による是正事例」が紹介されています。自社の労働時間管理の在り方を見直す際の参考となりますので、ここでは割増賃金の適正な支払と労働時間の適正な把握に関する指導事例をとり上げます。

[概要]
 始業前に清掃作業を命じられているにもかかわらず、賃金が支払われていないとの情報を受け、労働基準監督署が立入調査を実施したところ、以下の実態が認められた。
  • 使用者の指示により清掃作業が行われていたが、その分の割増賃金が支払われていなかった。
  • 当該清掃作業後にICカードを打刻しており、同作業が労働時間として記録されていなかった。

[労働基準監督署の指導]

  1. 割増賃金の適正な支払について是正勧告(労働基準法第37条第1項違反)等
     時間外労働に対する割増賃金を再計算した上で、実際の支払額との差額を支払うこと。併せて、過去に遡って各労働者から事実関係の聞き取りを行うなどの実態調査を実施し、実際の支払額との差額の割増賃金の支払が必要となる場合には、追加で支払うこと。
  2. 労働時間を適正に把握するため以下について指導
     使用者の指示により行われた清掃作業等は労働時間に該当することを説明し、労働時間を適正に把握するため、清掃時間も含めて正確な始業・終業時刻を記録すること。

 その後、事業場の対応として、清掃作業について労働者へのヒアリングを行い、正しい労働時間数に基づいた差額の割増賃金を支払ったとのことです。また今後、清掃作業は、就業開始後に行うよう管理者を含めた関係労働者に対して指示が行われました。

 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインの中は、労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」とされています。例えば、使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間は労働時間に該当します。改めて、労働時間の取り扱いに問題がないかを確認し、問題があればすぐに改善しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)を公表します

 

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9月2日 長時間労働が疑われる事業場への監督指導結果

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

先日、厚生労働省から長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の結果(2024年度)が公表されました。この資料は、どのような観点から労働基準監督署の監督指導が行われるかを知ることができるものであるため、そのポイントについて見ていきましょう。

 

[1]法違反の状況
 今回の監督指導の結果は、2024年4月から2025年3月までに、長時間労働が疑われる事業所に対し、労働基準監督署が行った監督指導の実施結果を取りまとめたものです。
 監督指導が実施された事業場のうち、労働基準法等の法令違反があった割合は、81.1%で、主な違反としては、「違法な時間外労働があったもの」が42.4%、「賃金不払残業があったもの」が8.0%、「過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの」が21.5%でした。この過重労働による健康障害防止措置が未実施については、以下の違反の件数等が計上されています。いずれも法違反が起きやすいポイントとなりますので、自社の対応に問題がないか確認しておくとよいでしょう。

  • 衛生委員会を設置していないもの等〔労働安全衛生法第18条違反〕
  • 健康診断を行っていないもの〔労働安全衛生法第66条違反〕
  • 1ヶ月当たり80時間を超える時間外・休日労働を行った労働者から、医師による面接指導の申出があったにもかかわらず、面接指導を実施していないもの〔労働安全衛生法第66条の8違反〕
  • 客観的な方法その他の適切な方法により労働時間の状況を把握していないもの〔労働安全衛生法第66条の8の3違反〕

[2]企業が実施した長時間労働削減のための自主的な取組事例
 公表された監督指導結果の中で、監督指導事例と、それに対し企業が実施した長時間労働削減のための自主的な取組事例が紹介されています。例えば、労働者数60人の建設事業者で、情報通信技術を利用し、インターネット上で情報共有を行うことのできるシステムである「ASP(Application Service Provider)」を活用したり、本社(バックオフィス)の人員を含めてタスクシェアを実施したりすることで、時間外労働が多かった部署の時間数が減少されたり、年次有給休暇の平均取得日数が増えたり等の効果が紹介されています。

 厚生労働省は今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行い、11月には「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行うとしています。長時間労働となっている企業は、他社の長時間労働削減のための自主的な取組事例等も参考にしながら、取組みを進める必要があります。

 

■参考リンク
厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和6年度の監督指導結果を公表します

 

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8月26日 40.5%まで上昇した男性の育児休業取得率

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近年、国は男性の育児休業の取得を促進しており、実際に多くの企業で育児休業を取得する男性従業員が増加しています。今回は、厚生労働省が先日公表した「令和6年度雇用均等基本調査」(以下、「調査」という)の中から、最新の男性の育児休業取得率について確認します。

[1]上昇する男性の育児休業取得率
 男性の育児休業の取得率は長年低迷していましたが、社会の変化や政策の後押しもあり、ここ数年、急速に上昇しており、2024年度は40.5%となりました(下図参照)。前年度(30.1%)から10.4ポイントの大幅上昇となり、調査以来、過去最高となっています。また、育児休業を開始した従業員のうち、出生時育児休業(産後パパ育休)を取得した割合は60.6%でした。この産後パパ育休は2024年10月に創設されたことから、産後パパ育休の取得割合の公表は、今回の調査結果が初めての公表となっています。
 政府は、男性の育児休業の取得率を、2025年度に50%、2030年度に85%という目標を掲げており、目標達成に向けて更なる後押しが続けられています。

[2]男性の育児休業等の取得率の公表
 2025年4月より、男性の育児休業等の取得率の公表が従業員数300人を超える企業に拡大されました。公表のタイミングについては、公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度(公表前事業年度)の状況について、公表前事業年度終了後、おおむね3ヶ月以内とされています。事業年度末(決算時期)に対応した公表期限の目安は下表のとおりです。対象となる企業は、公表期限までに対応できるように準備を進めましょう。

 育児休業に関しては、改正育児・介護休業法が今年4月と10月に段階的に施行され、今年4月には雇用保険の新しい給付金として、出生後休業支援給付金が創設されるといった制度の見直しが頻繁に行われています。最新の内容を確認しながら、対応を進めていきましょう。

 

■参考リンク:
厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査
厚生労働省「2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます
厚生労働省「育児・介護休業法について
厚生労働省「育児休業等給付について

 

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8月19日 スポットワークを利用する際の注意点

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最近、スポットワークを「利用している」、または、「利用していた」という話を耳にすることが増えています。スポットワークを利用する人が増加し、働き方への注目が高まる中、厚生労働省からもその活用における留意事項等をまとめたリーフレットが公開されるなどの動きも出ています。以下では、このリーフレットの中からスポットワークを利用する際の注意点を確認します。

 

[1]スポットワークとは
 厚生労働省から公開されたリーフレットでは、スポットワークについて以下のように定義されています。

  • スポットワークとは、短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働くこと
  • スポットワークの雇用仲介を行う事業者が提供する雇用仲介アプリを利用してマッチングや賃金の立替払を行うもの

[2]労務管理上の注意点
 スポットワークについては、スポットワークのサービスを提供している事業者(スポットワーク提供事業者)から人材を派遣してもらうイメージがありますが、実際には派遣ではなく、サービス提供を受けた企業による直接雇用であることに注意が必要です。また、労働契約の成立時期は個別の具体的な状況によりますが、以下のように判断されることと示されています。

面接等を経ることなく先着順で就労が決定する求人では、別途特段の合意がなければ、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点で労使双方の合意があったものとして労働契約が成立するものと一般的には考えられる。

 

 そのため、スポットワークのサービスの提供を受ける際には、応募があった時点で労働契約が成立するという認識をしておくことが求められます。その他、企業の都合で丸1日休業とする場合や、仕事の早上がりをさせることになった場合は、労働基準法第26条により休業手当を支払う必要があります。

 今回、厚生労働省からリーフレットが公開されたことを受けて、一般社団法人スポットワーク協会では今後、スポットワーク提供事業者に必要な対応を求めていくこととしています。そのため、直接労働契約を締結する企業としては、スポットワーク提供事業者からの適正な対応に関する案内の内容を確認し、ルールをしっかり理解した上で、スポットワークを活用することが求められます。

 

■参考リンク
厚生労働省「いわゆる「スポットワーク」の留意事項等
一般社団法人スポットワーク協会「2025年7月 「スポットワークサービスにおける適切な労務管理へ向けた考え方」を取りまとめました

 

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8月5日 1,000件超となった精神障害の労災支給決定件数

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従業員がメンタルヘルス疾患を発症し、欠勤や休職をするケースが増加しています。その中には、仕事による強いストレスがその原因となっている事例もあるようです。2025年6月に公表された厚生労働省の資料によると、精神障害を理由とした労災の請求件数、そして支給決定件数が大幅に増加しています。そこで以下では、公表された資料の内容を確認した上で、企業に求められる対策について見ていきます。

 

[1]精神障害の労災補償状況
 精神障害の労災補償状況は下図のとおりとなっています。2024年度の請求件数は3,780件で、前年度の3,575件から205件の増加となり、過去最多となりました。また、支給決定件数については1,055件となり、前年の883件から172件の大幅増加となりました。こちらも過去最多となり、今回1,000件を初めて超えました。
 支給決定件数の中で多い業種(中分類)の上位4つをみてみると、社会保険・社会福祉・介護事業152件、医療業118件、道路貨物運送業69件、総合工事業46件となっており、医療・福祉の業種で多いことが分かります。認定率(決定件数における支給決定件数の割合)については30.2%で、10件の申請があればそのうち3件が労災として認定されているという状況です。
※図はクリックで拡大されます。

[2]具体的な出来事
 支給決定は、その傷病に繋がる具体的な出来事があったかを確認して判断されますが、支給決定の内容を具体的な出来事別に分類すると、その上位は以下の通りとなっています。

  1. 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(224件)
  2. 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった(119件)
  3. 顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた(108件)
  4. セクシュアルハラスメントを受けた(105件)
  5. 業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(87件)

 支給決定件数(1,055件)のうち、上司等からのパワーハラスメントがトップで、4件に1件が上司等からのパワーハラスメントとなっています。また、3位については、今後、企業への対策が義務化されるカスタマーハラスメントに関係する項目となります。ハラスメントは従業員のメンタルヘルス不調にも繋がるリスクのある重大な問題であり、継続的な防止対策が求められます。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年度「過労死等の労災補償状況」を公表します

 

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7月29日 従業員の自宅に届く協会けんぽの資格確認書

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今年12月2日以降、医療機関等の窓口に提示している現在の健康保険証が、使用できなくなります。そのため、協会けんぽでは、マイナ保険証を利用できない従業員(被保険者)とその家族(被扶養者)に対して、資格確認書を送付する予定です。以下では、この内容を説明します。

 

[1]資格確認書とは
 資格確認書とは、マイナンバーカードの発行をしていない人や、マイナンバーカードに健康保険証の利用登録を行っていない等の理由により、マイナンバーカードを健康保険証として利用できない人等が、医療機関等へ提示することで保険診療を受けることができるものです。
 これまでは、原則として2024年12月2日以降に新たに資格を取得した人や、被扶養者としての認定を受けた人で、マイナンバーカードを健康保険証として利用できない人に発行されていました。今後、2024年12月1日以前に健康保険証が発行されていた人についても、2025年12月1日までに資格確認書が発行にも必要になるため、その発行が行われることになりました。

[2]今後の流れ
 今回、保険者が協会けんぽである事業所については、2025年7月下旬より順次、対象者の資格確認書が発行され、従業員の自宅へ送付されます。この対象者とは、現在、健康保険証を持っている人(2024年11月29日までに日本年金機構において新規に資格取得の決定または被扶養者の認定が行われた人)のうち、2025年4月30日時点でマイナンバーカードを健康保険証として利用できない人です。
 従業員の自宅には特定記録郵便で送付され、被扶養者の資格確認書も同封されます。送付する資格確認書が5枚以上の場合は複数の封筒での送付になります。従業員の住所に送付後、宛先不明等の理由で不着となった場合は、会社の方に再度送付され、会社から従業員に配布する必要が出てきます。

 

 送付の時期は、都道府県ごとに異なり、数回に分けて送付する支部もあるようです。送付の時期の詳細は、協会けんぽのホームページで公開されていますので、いつごろになるのか確認しておきましょう。また、送付対象となる従業員に対して、資格確認書が自宅に届く旨を事前に周知しておくとよいでしょう。

■参考リンク
協会けんぽ「マイナ保険証をお持ちでない方へ資格確認書を送付します(従前の健康保険証をお持ちの方)

 

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7月22日 重要度が増す仕事と育児・介護の両立に関する個別周知等

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2025年施行の改正育児・介護休業法では、仕事と育児・介護について、従業員に対する個別周知等の強化が行われました。そこで今回は、既存の個別周知等の内容も含め、確認しましょう。

 

[1]育児の個別周知・意向確認

 従業員から、本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があったときには、育児休業制度について個別に周知をし、取得に係る意向確認をする必要があります。
 これに加え、2025年10月1日からは、会社が選択した柔軟な働き方を実現するための措置について、従業員に個別に周知し、制度利用に関する意向確認をすることが義務になります。具体的には、子どもが3歳になるまでの適切な時期(従業員の子どもが1歳11ヶ月に達する日の翌々日から2歳11ヶ月に達する日の翌日までの1年間)に、以下の方法により行うこととなっています。

  1. 面談
  2. 書面交付
  3. FAX
  4. 電子メール等

 上記の1.面談についてはオンライン面談も可能です。3.FAXおよび4.電子メール等については、従業員が希望した場合のみ認められています。

 

[2]育児の個別の意向聴取と配慮
 2025年10月1日からは、個別周知・意向確認のみでなく、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と、聴取した意向に対する配慮も義務となります。
 具体的には、従業員から、本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があったときと、子どもが3歳になるまでの適切な時期に、子どもや各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する勤務時間帯や勤務地、両立支援制度等の利用期間、労働条件の見直し等について、個別にその意向を聴取することが必要です。その上で、聴取意向について、自社の状況に応じて配慮することが求められます。
 なお、聴取した意向への配慮は、意向の内容を踏まえた検討を行うことは必要ですが、その結果、何らかの措置を行うか否かは会社が自社の状況に応じて決定することになります。必ずしも意向どおりとしなければならないということではない点を押さえておきましょう。

 

[3]介護の個別周知等と情報提供
 個別周知・意向確認は、育児のみでなく、介護に直面した旨の申出をした従業員に対しても、介護休業制度等に関する事項を個別に周知し、介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を行うことが、2025年4月から義務化されています。
 さらには、介護に直面する前の早い段階(40歳等)に介護休業および介護両立支援制度等に関する情報提供を行うことも義務化されています。

 個別周知・意向確認、意向聴取および情報提供を行う際に利用できる書式については、厚生労働省のホームページに記載例が公開されています。自社に合わせたアレンジも可能ですので、記載例を参考に、早めに対応するとよいでしょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「育児・介護休業法について

 

 

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7月15日 今後、対応が必要となるカスハラ対策と就活セクハラ対策

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2025年の通常国会で改正労働施策総合推進法等が成立し、2025年6月11日に公布されました。以下では、公布された内容の中から、カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」という)対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(以下、「就活セクハラ」という)対策についてとり上げます。

 

[1]カスハラ対策
 現時点では、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、妊娠・出産・育児・介護休業等に関するハラスメントの対策が企業に対して義務化されていますが、今回、これにカスハラの対策が追加されます。
 この「カスハラ」とは、以下の3つの要素をすべて満たすものをいいます。

  1. 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う、
  2. 社会通念上許容される範囲を超えた言動により、
  3. 労働者の就業環境を害すること。

 

このカスハラ対策として、企業が講ずべき措置として、方針等の明確化とその周知・啓発、相談体制の整備・周知、発生後の迅速かつ適切な対応・抑止のための措置が挙げられていますが、具体的な内容については今後指針で示される予定です。

[2]就活セクハラ
 厚生労働省の「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、2020~2022年度卒業で就職活動(転職を除く)またはインターンシップを経験した男女の中で、インターンシップ中に就活セクハラを一度以上受けたと回答した人の割合は30.1%、インターンシップ以外の就職活動中に受けた人の割合は31.9%でした。

このような状況を解消するため、就活セクハラについても対策が義務化されました。
 この就活セクハラ対策についても、企業が講ずべき措置として、方針等の明確化とその周知・啓発、相談体制の整備・周知、発生後の迅速かつ適切な対応・抑止のための措置が挙げられていますが、具体的な内容についてはカスハラ対策と同様、今後指針で示される予定です。

 これらの施行については、公布後、1年6か月以内の政令で定める日となっており、2026年12月までには施行される予定です。厚生労働省からの今後の情報に注目をしておきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について
厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査について

 

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7月8日 高校生をアルバイトとして雇用する際の注意点

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

まもなく夏休みを迎え、高校生をアルバイトとして雇用する会社も増えてくる時季となりました。そこで今回は、高校生をアルバイトとして雇用する際の注意点を解説しましょう。

 

[1]労働基準法における年齢区分
 そもそも労働基準法では、以下のように年齢で区分し、満18歳未満の労働者について以下のように定義しています。

 児童:満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの者 
 年少者・未成年者:満18歳未満の者 

 

 このうち「児童」については、原則として労働させてはならないとされており、多くの高校生が該当する「年少者」についても、一定の規制が設けられています。そのため、その雇い入れにあたっては労働基準法における年少者(以下、「高校生」という)を雇用する際の遵守事項を理解しておく必要があります。

[2]雇入れにあたっての具体的な注意点
 具体的には、以下の3点について注意が求められます。

  1. 年齢確認と年齢を確認できる書面の備え付け義務
  2. 労働時間・休日に関する規制
  3. 深夜業の制限

 1については、高校生を雇い入れる場合にも、会社と本人との間で雇用契約を締結することになりますが、その際、併せて親権者等の同意を得ておく必要があります。また、年齢を確認できる公的な書面(住民票記載事項証明書等)を備え付けることが義務付けられています。なお、年齢を確認できる書類の備え付けがなされていなかった場合には、罰則(30万円以下の罰金)が設けられています。
 2については、高校生については、1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて勤務させることはできず、変形労働時間制を適用することも認められていません。なお、満15歳以上で満18歳に満たない者については、例外として以下の勤務を行うことが可能です。

  • 1週間の労働時間が40時間以内であり、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮すれば、同一週内の日について労働時間を10時間まで延長可能
  • 1日8時間、1週間48時間以内であれば、1ヵ月または1年単位の変形労働時間制を適用可能

 また、残業については満18歳以上の労働者の場合、36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることにより、法定労働時間を超えて時間外労働や休日労働をさせることができますが、高校生の場合、原則としてこれらが禁止されています。
 3については、高校生を深夜(午後10時から午前5時まで)に労働させることについても原則として禁止されています。これは、高校生が深夜の労働を希望したり、合意した場合であっても労働させることはできません。ただし、交替制で勤務する満16歳以上の男性等、一部に限り認められています。

 このように高校生には満18歳以上の労働者とは異なる法規制が設けられています。実際に高校生に指揮命令する上長にもこのような法規制を理解してもらい、日々の労務管理をしっかり行っていくことが求められます。

■参考リンク
厚生労働省「高校生等を使用する事業主の皆さんへ ~ 年少者にも労働基準法等が適用されます! ~

 

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7月1日 10月施行の改正育児・介護休業法「柔軟な働き方の実現するための措置」への対応

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改正育児・介護休業法の第1段階が4月に施行され、第2段階についても10月に施行されます。この10月施行の項目の1つである「柔軟な働き方を実現するための措置」への対応については、これから検討を行い、育児・介護休業規程等の見直しをされる企業も多くあるかと思います。そこで今回は、改正内容と検討する際のポイントを解説します。

 

[1]柔軟な働き方を実現するための措置への対応
 現行では、仕事と育児の両立を支援する制度として、育児休業、育児短時間勤務、所定外労働の免除、時間外労働の制限、深夜業の制限および子の看護等休暇がありますが、10月からは3歳から小学校就学前の子どもを養育する従業員に対して、柔軟な働き方を実現するための措置を講じること等が企業に義務づけられます。具体的には、以下の5つの選択肢の中から、企業が2つ以上の制度を選択して導入し、対象となる従業員がその中から1つを利用できるようにすることが必要です。

  1. 始業時刻等の変更
  2. テレワーク等(10日/月)
  3. 保育施設の設置運営等
  4. 養育両立支援休暇の付与(10日/年)
  5. 短時間勤務制度

 この5つの選択肢のうち、2.テレワーク等と4.養育両立支援休暇の付与については、原則として、時間単位で取得できるようにする必要があります。

[2]検討する際のポイント
 義務化される柔軟な働き方を実現するための措置は、全社統一の制度を導入するケースが多いと思われますが、業務の性質や業務の実施体制に照らして、事業所単位や職種ごとに措置の組み合わせを変えることも可能です。
 また、シフト制などの交代制勤務を行う従業員については、例えば早番と遅番があった場合に、通常であれば両方の勤務をシフトで設定するところ、早番の勤務のみとする措置を行う場合は、「1.始業時刻等の変更」の措置を行ったことになります。

 

[3]従業員代表の意見聴取
 企業が選択した措置については、育児・介護休業規程に盛り込む必要がありますが、その前に選択する制度について、従業員の過半数代表者等の意見を聴取する機会を設ける必要があります。この意見聴取の方法は、面談、書面、メール等が想定されますが、その方法について、法令上の特段の定めはありません。

 今回の柔軟な働き方を実現するための措置について、すでに法を上回る制度として導入している企業もあるでしょう。その場合、柔軟な働き方を実現するための措置として、すでに存在している制度を選択することはできますが、従業員の過半数代表者等の意見聴取を行う必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「育児・介護休業法について

 

 

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