8月22日 こども未来戦略方針から見る今後の社会保険制度の変更

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

2023年6月13日、大きな話題となっていた「こども未来戦略方針」(以下、「方針」という)が閣議決定され、正式な内容が公表されました。今後、この方針に沿った法改正等が進められることから、方針の中で触れられている社会保険に関連した内容をとり上げます。

 

[1]社会保険の2つの壁

従業員が加入する社会保険(健康保険・厚生年金保険)には、それぞれ加入基準が定められており、その基準を満たすことで、従業員自身が被保険者となり、会社とともに保険料を負担します。この保険料負担に関しては以下の2つの壁が存在しています。

  1. 106万円の壁
     厚生年金保険の被保険者数101人以上の企業(特定適用事業所)では、以下の3つの基準をすべて満たすことで、社会保険に加入し、保険料を負担することになっています。
    • 週の所定労働時間が20時間以上
    • 所定内賃金が月額8.8万円以上
    • 学生でない

     106万円とは、月額8.8万円を年間に換算した額であり、この壁を超える(年収が106万円以上となる)ことで、保険料の負担が発生することを示しています。

  2. 130万円の壁
     健康保険の被扶養者および国民年金の第3号被保険者として認定される要件の1つに、「年収が130万円未満であること」があります。被扶養者(第3号被保険者)は、健康保険料や国民年金保険料を直接負担する必要がありません。
     この壁を超える(年収が130万円以上となる)ことで、国民健康保険の被保険者や、国民年金の第1号被保険者となり、保険料の負担が生じることを示しています。

 

[2]社会保険の適用拡大
 106万円・130万円の壁があることで、これらの年収以上とならないように労働時間や賃金額を抑制する従業員が一定数存在しています。方針では、「いわゆる106万円・130万円の壁を意識せずに働くことが可能となるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大や最低賃金の引上げに取り組む」としています。そして、それにより男女ともにキャリアを築き、男女ともに育児を行うこと等を促進しようとしています。

 

[3]雇用保険の適用拡大
雇用保険は、週の所定労働時間が20時間以上であることが加入基準の一つとされており、加入し、支給要件を満たすことで失業等給付や育児休業給付等を受給することができます。
方針では、雇用保険の加入基準を拡大し、週の所定労働時間が20時間未満の従業員にも失業等給付や育児休業給付等を受給できるようにするとしています。
なお、拡大する範囲は「制度に関わる者の手続や保険料負担も踏まえて設定する」としており、施行時期は適用対象者数や事業主の準備期間等を勘案して2028年度までを目途としています。

上記[2]に関しては、被用者が新たに106万円の壁を超えても手取りの逆転を生じさせないための当面の対応が検討されており、今年中に実行するとしています。今後の動きにも注目しましょう。

■参考リンク
内閣官房「こども未来戦略方針

 

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8月15日 労働基準監督署の「定期監督等」における違反件数が多い項目

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

厚生労働省では、毎年、労働基準監督年報を発行しており、そこでは労働基準監督署等による様々な活動実績を見ることができます。今回は、令和3年版の労働基準監督年報の中から関心が高いであろう「定期監督等」の違反状況とその注意点をとり上げます。

[1]定期監督等の違反 上位10項目
 労働基準監督官が企業に訪問するような調査(監督)は、年間149,379件行われており、そのうち、毎月一定の計画に基づいて実施される「定期監督等」が122,054件(全体の81.7%)、労働者からの申告に基づいて実施される「申告監督」が16,101件、(全体の10.8%)、再監督が11,224件(全体の7.5%)となっています。このように見ると大半が「定期監督等」であることが分かります。
 そして、この「定期監督等」における違反状況について、件数の多いものからみてみると、以下のようになっています。

 項目  令和3年  令和2年
 1  労働安全衛生法20~25条(安全基準)  23,823件  22,432件
 2  労働安全衛生法66条~66条の6(健康診断)  22,139件  20,153件
 3  労働基準法32条(労働時間)  18,007件  19,493件
 4  労働基準法37条(割増賃金)  16,521件  16,701件
 5  労働基準法108条(賃金台帳)  10,030件  9,893件
 6  労働基準法15条(労働条件の明示)  10,025件  10,817件
 7  労働基準法39条(年次有給休暇)  9,783件  3,486件
 8  労働基準法89条(就業規則)  9,148件  9,088件
 9  労働基準法施行規則24条の7条(年次有給休暇管理簿)  7,370件  5,443件
 10  労働安全衛生66条の8の3(時間把握)  6,414件  5,607件

[2]特に注意したい「年次有給休暇」に関する違反
 上記10項目の中で、7位の労働基準法39条(年次有給休暇)は、前年に比べて2.8倍の大幅増となっています。また、9位の労働基準法施行規則24条の7条(年次有給休暇管理簿)も前年に比べると1.4倍と急増しています。
 働き方改革関連法の中で改正が行われた年次有給休暇に関する指摘が増えていることから、年10日以上の年次有給休暇が付与されたすべての従業員について、付与した日から1年以内に5日の取得ができているのか、従業員ごとに年次有給休暇を取得した日付、取得日数、基準日が記載された年次有給休暇管理簿が作成されているのかなどについて確認しておきましょう。

 年次有給休暇以外の項目についても、法令の条文に立ち返って問題がないか確認し、労働基準監督署から指摘を受けないようにすることが求められます。

■参考リンク
厚生労働省「労働基準監督年報

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8月8日 増加する精神障害の労災支給決定件数 求められるハラスメント対策

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

従業員数にはよるもののメンタルヘルス疾患を発症し、従業員が欠勤したり、休職したりする企業は少なくありません。
また、その原因が仕事による強いストレスとなっている事例もあるようです。
2023年6月に発表された厚生労働省の資料によると、精神障害を理由として実際に労災の支給決定を受ける件数が増加しています。そこで以下では発表された資料の内容を確認した上で、企業に求められる対策について見ていきます。

[1]精神障害の労災補償状況

精神障害の労災補償状況は下図のとおりです。2022年度の請求件数は2,683件で、前年度の2,346件から337件増加しました。
請求件数が増えている理由には、精神障害における労災請求の仕組みが認知されるようになったと考えられます。
また、支給決定件数については710件となり、前年の629件から81件の増加となり、過去最多となりました。
支給決定件数の中で、多い業種(中分類)の上位3つをみてみると、社会保険・社会福祉・介護事業85件、医療業79件、道路貨物運送業37件で、医療・福祉の業種で多くなっています。認定率については35.8%で、申請の3件に1件の割合で労災として認定されています。

 

[2]具体的な出来事
支給の決定には、その傷病に繋がる具体的な出来事があったかを確認して判断されますが、支給決定件数を具体的な出来事別に分類すると、その上位は以下の通りとなっています。

  1. 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(147件)
  2. 悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(89件)
  3. 仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった(78件)
  4. 同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた(73件)
  5. セクシュアルハラスメントを受けた(66件)

支給決定件数(710件)のうち、パワーハラスメントやいじめ・嫌がらせ、セクシュアルハラスメントといったハラスメントに関するものが全体の4割を占めています。このように、職場におけるハラスメントの問題は、メンタルヘルス疾患の大きな原因となっています。ハラスメントを防止するための措置のひとつに、相談窓口の設置がありますが、改めて相談窓口の周知を行い、問題が発生する前や小さいうちに従業員から相談してもらえるようにしていきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省
令和4年度「過労死等の労災補償状況」を公表します
厚生労働省
職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

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8月1日 長時間労働者に対して求められる労務管理

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新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、一部の企業においては、需要の急回復による人手不足から長時間労働にならざるを得ないような状況が見られます。

そこで今回は、長時間労働者に対して企業が実施すべき労務管理の内容についてとり上げます。

[1]医師の面接指導
 医師の面接指導の対象となる従業員は、法令で時間外・休日労働時間が月80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者と定められています。時間外・休日労働時間が月80時間を超えた従業員が、疲労の蓄積があり、面接の希望を申し出した場合に、医師の面接指導を受けさせる必要があります。
 なお、対象となる従業員は、正社員やパート・アルバイトだけでなく、管理監督者も含まれます。

 

[2]労働時間に関する情報の通知
 面接指導の申出を促す目的から、時間外・休日労働時間が月80時間を超えた従業員に対して、会社は速やかに超えた時間に関する情報を通知する必要があります。通知は、労働時間に関する情報だけでなく、面接指導の実施方法・時期などの案内も併せて行うことが望まれます。
 この通知は、給与明細に時間外・休日労働時間数を記載している場合は、これを労働時間に関する情報の通知としても差し支えありません。また、労働時間の適用除外となっている管理監督者、事業場外労働のみなし労働時間制の適用者についてもこの通知の対象となっています。
 労働時間の状況の把握は、割増賃金の計算の目的以外の健康管理のためにも、必要かつ重要です。

 

[3]産業医等に対する必要な情報提供
 常時使用する労働者数が50人以上の事業場においては、産業医を選任する義務があります。そして、会社はこの産業医に対して、従業員の健康管理等に必要な情報を提供する義務があり、この必要な情報のひとつとして「時間外・休日労働時間が月80時間を超えた従業員の氏名」と、「その従業員の超えた時間に関する情報」があります。
 また、月80時間を超えた従業員がいなかった場合も、該当者がいなかった旨の情報を産業医に情報提供する必要があります。情報提供の漏れがないように、連絡する定例日を決めるなどして、確実に実施していきましょう。

 医師の面接指導については、時間外・休日労働時間が月80時間を超えると、従業員からの申出に関わらず実施しているケースや、月80時間の時間数を月60時間などに引き下げて実施しているケースなどがあります。健康障害の防止のためには、このように会社独自の基準を設けて、過重労働対策を行うことを効果的です。
※高度プロフェッショナル制度対象の従業員、研究開発業務従事者については、取り扱いが異なる場合があります。

■参考リンク
厚生労働省「働き方改革関連法により2019年4月1日から「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます

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7月25日 2024年4月から変わる求人を行う際の労働条件の明示ルール

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2024年4月より、労働条件の明示のルールが変更になることが既に決まっていますが、これと同様の趣旨で、求人を行う際の労働条件の明示についても変更となります。以下ではその内容をとり上げます。

1]業務・就業場所の変更の範囲の明示
求人を行う際に明示すべき労働条件として、「業務内容」と「就業場所」があります。現在は、各々雇入れ直後のものを明示すれば足りるとされていますが、2024年4月以降は、これらに加えて「業務内容の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」の明示も必要になります。この変更の範囲は、将来の配置転換など雇入れ後の見込みも含めた、締結する労働契約の期間中における変更の範囲のことをいいます。
例えば、雇入れ直後は法人営業を予定しているものの、締結する労働契約の期間中に、製造業務を除く業務全般に携わる可能性があれば、変更の範囲の箇所には、製造業務を除く当社業務全般のように明示することとなります。

 

2]有期労働契約を更新する場合の基準
2024年4月以降、有期契約労働者を雇入れたり、契約を更新したりする場合には、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容を明示する必要になります。そして、労働契約の更新がありうるとしたときは、その判断基準を明示する必要があります。求人を行う際も同様に、労働契約の更新を「あり」とした場合は、この更新の判断基準の明示が必要となります。

3]明示する際の注意点
2024年4月以降、ハローワーク等への求人の申込みや自社のホームページで募集等を行う場合、求人票や募集要領に、上記でとり上げた事項を明示する必要があります。その際、求人広告のスペースが足りない等、やむを得ない場合は、「詳細は面談時にお伝えします」のように記載した上で、別のタイミングで明示することも可能とされています。この場合、原則、面接などで求職者と最初に接触する時点までに、すべての労働条件を明示する必要があります。

求人を現場単位で行っている場合、明示すべき項目が網羅されているか把握・管理する必要が今後出てきます。いまのうちに求人を行う際の社内のフローを整理しておくとよいでしょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます

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7月18日 解雇を実施する際の留意点

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雇用契約の終了には、定年や自己都合退職の他、解雇や雇止めがあります。この中でも、解雇を行う際には様々な注意点があり、トラブルとならないようにする必要があります。
以下では、普通解雇・整理解雇を実施する際の留意点についてとり上げます。

 1]普通解雇
解雇とは、使用者(会社)からの申出による一方的な雇用契約の終了のことをいいます。使用者はいつでも自由に解雇を行えるというものではなく、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、解雇をしても無効となります。
また、一定の場合については法律で解雇が禁止されています。主なものは以下のとおりです。

[労働基準法]

  • 業務上の傷病による休業期間とその後 30日間の解雇
  • 産前産後の休業期間とその後 30 日間の解雇
  • 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇

[男女雇用機会均等法]

  • 労働者の性別を理由とする解雇
  • 婚姻・妊娠・出産・産前産後の休業をしたこと等を理由とする解雇

[育児・介護休業法]

  • 労働者が育児・介護休業等の申出等をしたこと、育児・介護休業等を取得したことを理由とする解雇

 解雇をするときは、合理的な理由があったとしても、原則として少なくともその30 日前に解雇の予告をすることが求められます。予告を行わない場合には、30 日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。なお、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)において、契約期間の途中で労働者を解雇することは、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。

2]整理解雇
解雇の一種に整理解雇があります。これは、使用者が不況や経営不振などの理由により、解雇せざるを得ない場合に人員削減のために行う解雇を指します。以下の4つの要素に照らして整理解雇が有効か厳しく判断されます。

  1. 人員削減の必要性
    人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいているか
  2. 解雇回避の努力
    配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のための努力をしているか
  3. 人選の合理性
    整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であるか
  4. 解雇手続の妥当性
    労働者等に対して、解雇の必要性とその時期、規模、方法について納得を得るために説明を行っているか

雇用契約の終了の一つで解雇に似ているものとして「退職勧奨」がありますが、これは使用者が労働者に対して退職を勧めることをいいます。労働者が自由意思によりその勧奨に応じる場合は問題となりませんが、使用者が労働者の自由な意思による決定を妨げる勧奨は、違法な権利侵害に当たると判断される場合があります。トラブルを避けるためには、対象となる労働者としっかり向き合い、丁寧に説明することが求められます。

 

■参考リンク
厚生労働省「労働契約の終了に関するルール

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7月11日 ハローワークを通じた障害者の就職件数 コロナ禍以前と近い水準に

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民間企業における法定雇用率については、2023年4月から1年間は2.3%で据え置きとなりましたが、2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%と段階的な引上げが行われることになっています。
こうした状況を受け、今後更なる障害者雇用を計画されている企業も多いと思われますので、今回は厚生労働省より公表された令和4年度のハローワークを通じた障害者の職業紹介状況について確認します。

[1]新規求職申込件数・就職件数
ハローワークへの新規求職申込件数は233,434件(前年度223,985件)となっており、対前年度に比べ4.2%増加しています。
次に、障害者の就職件数は102,537件(前年度96,180件)となっており、対前年度に比べ6.6%増加しています。この就職件数の内訳をみると、身体障害者が21,914件、知的障害者が20,573件、精神障害者が54,074件、その他の障害者が5,976件となっています。2013年度以降、精神障害者の就職件数が身体障害者の就職件数を上回っています。この10年間で、身体障害者の就職件数は減少傾向にあり、知的障害者の就職件数は横ばい、精神障害者の就職件数は増加傾向にあることが分かります(下図参照)。

 

[2]産業別・職業別の就職状況
産業別に就職状況を見てみると、就職件数全体(102,537件)のうち「医療、福祉」が 39,122件と全体の約3分の1を占めており、「製造業」12,765件、「卸売業、小売業」11,222件、「サービス業」10,723件と続いています。
また職業別に就職状況を見てみると、「運搬・清掃・包装等の職業」が33,097件と全体の約3分の1を占めており、「事務的職業」24,383件、「サービスの職業」12,877 件、「生産工程の職業」11,977 件と続いています。障害種別の就職状況では、身体障害者については「事務的職業」、知的障害者および精神障害者については「運搬・清掃・包装等の職業」の割合が、職業別の中で一番高くなっています。

障害者の採用にあたっては、企業はハローワークに障害者専用求人を出すことができますが、2022年度の専用求人数は240,486人で、前年度(213,416人)より12.7%増加しています。障害者法定雇用率の引き上げを受け、多くの企業が障害者雇用に力を入れている状況ですので、安定した雇用の確保のためには、早めの対応が求められます。

 

■参考リンク
厚生労働省
令和4年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめを公表します」 
ハローワークインターネットサービス
障害者の方の雇用に向けて

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7月4日 年次有給休暇の平均取得率 50%~75%未満が4割

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休暇の取りやすさは、働きやすさという点で従業員が企業に期待する大きな要素の一つに数えられます。年次有給休暇(以下、「年休」という)については、働き方改革関連法の中で1年に10日以上の年休が付与される従業員について、少なくとも1年に5日を取得させなければならないというルールが設けられました。
今回は厚生労働省の「令和4年度 仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書」(以下、「調査」という)の中から、年休の平均取得率について取り上げます。

 

[1]従業員規模別の年休の平均取得率
この調査は、従業員数50人以上の企業等を対象としたもので、2022年12月から2023年1月にかけて行われました。それによれば、正社員・職員の年休の平均取得率(令和3年度実績)は、「50%以上~75%未満」が 41.3%でもっとも回答割合が高く、次いで「25%以上~50%未満」が33.3%、「75%以上」が16.8%となっています。これを従業員規模別に見てみると、従業員規模が大きくなるにつれて、「50%以上~75%未満」と「75%以上」の占める割合が高くなっています(図1参照)。 

 

[2]業種別の年休の平均取得率
業種別の年休の平均取得率を見ると、業種によって大きな開きがあることが分かります。中でも、宿泊業、飲食サービス業では年休の平均取得率が他の業種よりも低くなっており、「0%超~25%未満」が42.0%、「25%以上~50%未満」が31.3%、「50%以上~75%未満」が8.5%、「75%以上」が18.4%となっています。

深刻な人手不足が続いており、年休の取得が進まないという企業も少なくありませんが、人材の採用・定着を考えた場合、年休取得率の引き上げは重要なテーマとなります。

 

■参考リンク
厚生労働省「仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業

 

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6月27日 治療と仕事の両立支援を検討する際のポイント

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労働者の約3人に1人が何らかの疾病を抱えながら働いているとされます。また職場において労働力の高齢化が進むことに伴い、今後、労働者が治療と仕事を両立していくことのできる環境の整備がより一層求められることになります。
そこで、今回は治療と仕事の両立支援を検討する際のポイントをとり上げます。

 

 1]両立支援の現状
厚生労働省が公表している「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」によると、傷病(がん、糖尿病等の私傷病)を抱えた何らかの配慮を必要とする労働者に対して、治療と仕事を両立できるような取組みが行われている事業所の割合は41.1%となっています。
その取組内容(複数回答)をみると、「通院や体調等の状況に合わせた配慮、措置の検討(柔軟な労働時間の設定、仕事内容の調整等)」が91.1%、「両立支援に関する制度の整備(年次有給休暇以外の休暇制度、勤務制度等)」が36.0%、「相談窓口等の明確化」が32.1%と続いています。

 

2]勤務制度・休暇制度を検討する際の選択肢
このように両立支援の取組としては、柔軟な勤務制度や特別休暇などの制度の導入が多く行われています。以下では、これらの具体的な選択肢について見ていきましょう。

  1. 勤務制度
    • 時差出勤制度
      通院のためや通勤による身体の負担を軽減するために始業・終業時刻を変更することです。時差出勤の場合、1日の所定労働時間に変更がないため、短時間勤務制度と異なり、給与が減額とならないというメリットがあります。
    • 短時間勤務制度
      フルタイム勤務が難しい場合、所定労働時間を短くして引き続き働くことができるようにするものです。
    • テレワーク
      通勤による身体の負担を軽減し、在宅勤務などリモートで働いてもらうというものです。

  1. 休暇制度
    • 時間単位の年次有給休暇
      年次有給休暇は1日単位で取得することを原則としていますが、労使協定を締結することで、年5日を上限として、1時間単位で取得することができるようになります。これにより、通院等で必要な時間を年次有給休暇で活用することができます。
    • 積立年次有給休暇
      年次有給休暇は付与日から2年が経過すると請求権がなくなりますが、この請求権がなくなった年次有給休暇を積み立てておき、病気治療による通院などの場合に利用できる制度を会社独自に設けておくものです。
    • 病気休暇
      会社独自の制度として、入院治療や通院のために利用できる休暇制度を設けておくものです。

こうした勤務制度や休暇制度については、運用方法と併せて管理職が制度を理解するための研修も必要になります。実際に運用していくまでには時間がかかることから、早めに検討を始めるとよいでしょう。

■参考リンク
厚生労働省「治療と仕事の両立について
厚生労働省「調査の概要

 

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6月20日 今後の最低賃金引き上げの方向性

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

近年、最低賃金は大幅な引上げが行われており、企業経営に大きな影響を与えています。
今年10月の最低賃金引き上げはどうなるのか、更にはその後も現在のような高水準での引上げが継続されるのかについて強い関心をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、2023年4月12日に、内閣官房新しい資本主義実現本部事務局が公表した「三位一体労働市場改革の論点案」の中から最低賃金に関する今後の論点について見ていきましょう。

[1]「三位一体労働市場改革の論点案」
最低賃金に関して「三位一体労働市場改革の論点案」の中に記載されている内容をまとめると、以下のとおりとなります。

  1. 今年は、全国加重平均1,000円を達成することを含めて、公労使三者構成の最低賃金審議会で、しっかりと議論してもらう。
  2. 地域間格差の是正を図るため、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げることも必要。
  3. 今夏以降は、1,000円達成後の最低賃金引上げの方針についても(新しい資本主義実現会議で)議論を行う。

これはあくまでも今後の議論の方向性ということで、実際には今後の議論が待たれるところではありますが、今年も例年相当、もしくはそれ以上の最低賃金引上げの可能性が出てきています。

 

[2]最低賃金の地域間格差縮小への動き
[1]の2.でも最低賃金の地域間格差是正が論点となっていますが、この点については既に具体的な動きが見られます。最低賃金は、中央最低賃金審議会から示される引上げ額の目安を参考にしながら、各都道府県の地方最低賃金審議会で地域の実情を踏まえた審議・答申を得た後、異議申出に関する手続きを経て、都道府県労働局長により決定される仕組みとなっています。

この目安については、従来A~Dの4区分が設けられており、東京・大阪などの都市部と地方では目安額に差が設けられることが通例となっていました。今回、この区分がA~Cの3区分へ再編されることとなり、最低賃金の地域間格差の縮小が図られることとなっています。

諸外国との賃金格差の縮小が大きな課題となる中、最低賃金に関しても、今後、大きな動きが予想されます。人手不足による採用難もあり、賃金は上昇傾向にありますので、今後の賃上げに備えた生産性の向上がまずは求められます。

 

■参考リンク
内閣官房新しい資本主義実現本部事務局
三位一体労働市場改革の論点案」 
厚生労働省
第65回中央最低賃金審議会 資料

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