1月16日 今後数年のうちに施行される人事労務関連の法令改正

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

人事労務管理を行う中で、実務に関連する法令改正の動向を押さえておくことはとても重要です。特に近年、人事労務分野においては様々な法令改正が頻繁に行われています。そこで、今回は今後数年のうちに施行が予定される法令改正の内容を確認しておきます。

 

[1]注目すべき法令改正
 現時点で施行が決定されている主な法令改正は下表のとおりです。細かな対応として、労働条件通知書のひな形を修正したり、障害者の法定雇用率が2024年4月と2026年7月に引き上げとなることから、法定雇用率を満たしていない場合は障害者雇用を強化したりしていくなどの必要があります。

表 今後の主な法令改正内容

施行時期 内容
2024年4月 建設業・自動車運転業務・医師等の限度基準適用除外の廃止
トラック・バス・タクシー運転者の拘束時間・休息期間の変更
障害者法定雇用率を2.5%に引き上げ
短時間労働者(週10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者)の実雇用率に算定する特例
労働条件の明示事項に、就業場所・業務の変更の範囲、更新上限の有無・内容、無期転換申込機会・無期転換後の労働条件が追加
通算契約期間・有期労働契約の更新回数について、上限を定めたり、引き下げたりしようとするときの理由の事前説明
募集時の明示事項に、就業場所・業務の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準が追加
裁量労働制の対象者の要件変更、手続き変更、報告期間変更、健康福祉確保措置導入、苦情処理措置導入等
障害者雇用調整金・報奨金の支給方法の見直し
2024年10月 社会保険加入(週20時間等の加入基準)の適用拡大(51人以上の従業員規模)
2025年4月 高年齢雇用継続給付の給付率を10%に縮小
障害者雇用における除外率の引き下げ
2026年7月 障害者法定雇用率を2.7%に引き上げ

 

[2]影響が大きい社会保険加入の適用拡大
 直近で企業に大きな影響が出ることが想定されるものとして、社会保険の適用拡大があります。2024年10月1日より、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業では、週の所定労働時間が20時間以上で、その他の要件を満たす従業員について、社会保険の加入が必要となります。新たに適用拡大の対象となる予定の企業で、例えば2024年4月からの労働条件について、週の所定労働時間を25時間、契約期間1年間で締結した場合、契約当初は社会保険の加入要件を満たさなくても、2024年10月1日からは加入要件を満たすことになります。

 厚生労働省では、年収の壁を意識せずに働ける環境づくりとして、年収の壁・支援強化パッケージを用意しています。従業員に大きな影響の出る内容です。こうした支援策の活用も含めて、早めに対応を検討していきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます
厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ

 

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1月9日 2024年4月1日より変わる裁量労働制

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

裁量労働制には、専門業務型裁量労働制(以下、「専門業務型」という)と企画業務型裁量労働制(以下、「企画業務型」という)という2つの制度があります。令和5年就労条件総合調査によると、専門業務型を採用している企業割合は2.1%、企画業務型を採用している企業割合は0.4%と採用している企業割合は少ないですが、今回、比較的大きな制度改正が行われ、2024年4月1日より施行されます。以下では、その主な変更点をとり上げます。

[1]専門業務型
 専門業務型とは、業務の性質上、その遂行の方法を大幅にその業務に従事する労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務の遂行の手段や時間配分の決定等に関して、会社が具体的な指示をすることが困難なものとして定められた業務の中から、対象となる業務等を労使協定で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使協定であらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度です。
 2024年4月1日より、この対象業務にいわゆるM&Aアドバイザーの業務が加わります。そして、この専門業務型を適用する場合には、労働者本人の同意が必要になります。その際、会社は労使協定の内容等の制度の概要、賃金・評価制度の内容、同意しなかった場合の配置・処遇について明示した上で説明することが求められています。


 

また、以下の事項を労使協定に追加する必要があります。

  • 労働者本人の同意を得ること
  • 労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと
  • 同意の撤回の手続き
  • 同意とその撤回に関する記録を協定の有効期間中およびその期間満了後3年間保存すること

[2]企画業務型
 企画業務型とは、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査および分析の業務であって、業務の性質上、これを適切に遂行するには、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務遂行の手段や時間配分の決定等に関し、会社が具体的な指示をしないこととする業務等について労使委員会で決議し、労働基準監督署に決議の届出を行い、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使委員会の決議であらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度です。


 もともとこの企画業務型は労働者本人の同意が必要とされていますが、2024年4月1日からは同意の撤回手続きを定める必要があります。
 また、労使委員会で決議が必要となる事項として、以下の3点が追加されます。

  • 同意の撤回の手続き同意とその撤回に関する記録を協定の有効期間中およびその期間満了後3年間保存すること
  • 対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと
  • 同意とその撤回に関する記録を協定の有効期間中・その期間満了後3年間保存すること

 これら以外にも細かな変更点があります。2024年4月1日以降、新たにまたは継続して導入する企業は、早めに法改正対応の準備を進めましょう。

■参考リンク
厚生労働省「裁量労働制の概要

 

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■年始のご挨拶■

あけましておめでとうございます。
福岡助成金支援センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

新しい年が始まりました。

2024年は・・・

4月から時間外労働の上限規制(建設事業、自動車運転の業務、医師)の適用、労働条件明示のルールの追加、裁量労働制の導入・継続の手続きの見直し、障害者雇用率の変更があります。

10月から社会保険加入対象企業の拡大があります。

今年も法改正を含め、お役に立てる情報をお届けして参りますので、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

12月26日 拡充されたキャリアアップ助成金「正社員化コース」

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

有期雇用労働者等を正社員に登用したり、処遇改善の取組を実施したりする企業への支援としてキャリアアップ助成金が設けられていますが、2023年11月29日に、キャリアアップ助成金の「正社員化コース」が拡充されました。以下ではこの内容をとり上げます。

[1]キャリアアップ助成金の正社員化コース
 「正社員化コース」とは、就業規則等で規定した制度に基づき、有期雇用労働者等を正社員化した場合に助成されるものです。有期雇用労働者以外にも、無期雇用労働者を正社員に転換した場合、また、正社員への転換だけでなく、多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)に転換した場合等も「正社員化コース」の対象となります。

[2]拡充された内容
 今回、拡充された内容は以下の4点です。

  1. 助成金の見直し
     支給対象期間が「6ヶ月」から「12ヶ月」に拡充されたことに伴い、助成金額も有期雇用労働者が正社員に転換した場合、6ヶ月(1期)で57万円(大企業の場合42.75万円)だったものが、12ヶ月(2期)で80万円(大企業の場合60万円)に拡充されました。また、無期雇用労働者が正社員に転換した場合についても、6ヶ月(1期)で28.5万円(大企業の場合21.375万円)だったものが、12ヶ月(2期)で40万円(大企業の場合30万円)に拡充されています。
  2. 対象となる有期雇用労働者の要件緩和
     有期雇用労働者から正社員に転換する場合、有期雇用の期間が6ヶ月以上で、通算3年以内という要件が設けられていましたが、「6ヶ月以上」に緩和されました。なお、有期雇用の期間が通算5年を超えた有期雇用労働者を正社員に転換する場合、助成金額は、無期雇用労働者が正社員に転換した場合と同額になります。
  3. 正社員転換制度の規定に関する加算措置
     今回、新たに正社員転換制度の導入に取り組む場合に、20万円(大企業の場合15万円)が加算されます。なお、1事業所あたり1回のみです。
  4. 多様な正社員制度規定に関する加算措置
     多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)制度を新たに規定し、この雇用区分に転換等した場合の助成金額が、9.5万円(大企業の場合7.125万円)から40万円(大企業の場合30万円)に大幅拡充されました。なお、これも1事業所あたり1回のみです。

    このキャリアアップ助成金を利用する際は、事前にキャリアアップ計画書を管轄の労働局へ提出することが必要です。手続きについては、キャリアアップ計画書がチェックボックス式に変更され、記載方法が簡素化されています。

■参考リンク
厚生労働省「キャリアアップ助成金「正社員化コース」を拡充しました!2023年11月29日以降における変更点のご案内

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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12月19日 退職後に引き続き傷病手当金を受給する際のポイント

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

健康保険の傷病手当金を受給している従業員が、職場復帰の目途が立たないことから退職するケースがありますが、一定の要件を満たすことで、退職後も引き続き傷病手当金を受給することが可能です。以下では、退職後に引き続き傷病手当金を受給する際のポイントを解説します。

[1]傷病手当金を受給するための要件
 傷病手当金は、被保険者である従業員が病気やけがによる療養のために会社を休み、給与を受けられないときに、その所得の補てんとして受けることできるものです。この給付を受けるためには以下の4つの要件をすべてを満たす必要があります。

  1. 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  2. 仕事に就くことができないこと
  3. 連続する3日間(待期期間)を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  4. 休業した期間について給与の支払いがないこと


[2]継続給付の要件
 [1]の受給要件を満たした上で、退職後も引き続き傷病手当金を受給するためには、更に以下の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 健康保険の資格喪失日の前日(退職日等)までに被保険者期間が継続して1年以上あること
  2. 健康保険の資格喪失日の前日(退職日等)に傷病手当金の支給を受けているか、または、受けられる状態にあること

 上記の2.について、退職日に引継ぎ等で出勤した場合は、医師が労務不能と証明していたとしても、仕事ができる状態になったと判断され、退職後に傷病手当金を受給できなくなります。

 

[3]傷病手当金を受給しないまま退職した場合の取扱い
 傷病手当金を受給しないまま、年次有給休暇を取得し、退職となるようなケースがありますが、傷病手当金の受給は[1]でとり上げたとおり、連続する3日間の待期期間と4日目以降に傷病手当金を受給できる状態であれば、傷病手当金を受給していなかったとしても退職後に受給することが可能です。年次有給休暇を取得して退職したときは、給与が支払われていることになるため[1]の4.の要件について該当せず、受給できる状態であるものの、不支給という判断が行われます。そして、給与が支払われなくなった退職後から支給が開始されます。

 

[4]傷病手当金の受給期間
 2021年1月より、傷病手当金の受給期間は、同一傷病について受給を開始した日から、支給期間を通算して1年6ヶ月とされています。そのため、退職後は、残りの期間について傷病手当金を受給することができます。

 私傷病により退職する場合には、この継続給付は貴重な収入となります。対象となる従業員には、要件を確認の上、通常の退職手続きに加えて説明をすることが求められます。

 

■参考リンク
協会けんぽ「傷病手当金について

 

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12月12日 2024年4月から変わる有期労働契約の更新上限に関する事項

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2024年4月から労働条件の明示ルールが変わり、すべての労働者に対し、「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要になりますが、これ以外にも、有期契約労働者に対して新しく追加される明示事項があります。そこで今回は、追加される更新上限に関連する事項についてとり上げます。

[1]更新上限の明示事項
 パートタイマーやアルバイト、契約社員などの有期契約労働者について、「契約期間は通算4年を上限とする」、「契約の更新回数は3回まで」といった更新上限を設定しているケースがありますが、このように更新上限を設定しているときは、2024年4月から労働条件通知書にこの更新上限の明示が必要になります。
 実際に記載する際に、労働契約の当初から数えた回数を記載するのか、残りの契約更新回数を記載するのかなど対応に迷うことがありますが、記載方法は、労働者と会社の認識が一致するような明示となっていれば差し支えないとされています。例えば、契約の当初から数えた更新回数または通算契約期間の上限を明示し、その上で、現在が何回目の契約更新であるか等を併せて示しておくと、認識のズレを避けることができるでしょう。

[2]更新上限を新設・短縮する場合の説明事項
 現在締結している労働契約には更新上限を設定していないものの、何らかの理由があり今後について、更新上限を新設するといったケースもあり得ます。例えば、当初予定していた出資が受けられず、担当してもらう予定の事業を縮小することになったため、更新上限を設定するケースや、通算契約期間の上限を5年としていたが3年に短縮したいといったケースなどが考えられます。このような更新上限を新設・短縮しようとする場合には、その理由を労働者に説明することが必要になります。
 説明方法については、文書を交付して個々の労働者ごとに面談等により説明を行う方法が基本とされていますが、説明資料を交付する方法や説明会を行う等の方法も考えられます。会社としては、労働者に対して分かりやすく説明することが求められます。

 有期契約労働者の労働条件通知書については、以前から明示が必要となっている雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口の項目が漏れているケースが見受けられます。この機会に、ひな形に不備がないか点検し、問題があれば改善しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます

 

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12月5日 年休の取得率 初めて60%超え

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

就職活動における企業選びの条件として、労働時間の短さや休日の多さを重視する傾向が強まっています。厚生労働省では「令和5年就労条件総合調査」において、年間休日総数や年次有給休暇(以下、「年休」という)の取得状況などの調査結果を公表しており、自社の状況を一般的な水準と比較することができます。そこで以下では、この調査の中から年間休日総数、年休の取得状況、特別休暇制度の運用状況をとり上げます。

[1]1企業平均の年間休日総数
 令和4年(または令和3会計年度)の1企業平均の年間休日総数は110.7日となりました。前年調査は107.0日でしたので、3.7日増えたことになります。この年間休日総数を従業員規模別にみてみると、30~99人が109.8日、100~299人が111.6日、300~999人が115.7日、1,000人以上が116.3日となっています。

[2]年休の取得状況
 年休の取得状況について、令和4年(または令和3会計年度)の1年間に企業が付与した年休の日数(繰越日数は除く)は、労働者1人平均で17.6日(前年調査も17.6日)となりました。そのうち労働者が取得した日数は10.9日(同10.3日)で取得率は62.1%(同58.3%)となりました。取得率については、昭和59年以降、過去最多となり、初めて60%を超えました。この取得率を従業員規模別にみてみると、30~99人が57.1%、100~299人が62.1%、300~999人が61.8%、1000人以上が65.6%となっています。

 年次有給休暇以外の休暇として、会社が恩恵的に設けているものとして特別休暇制度があります。今回の調査結果では、夏季休暇、病気休暇等の特別休暇がある企業の割合は55.5%(前年58.9%)となっており、種類別にみると下表のようになっています。※表はクリックで拡大されます。

 人材採用において休日日数は重要な判断要素となっています。採用力を確保するためにも、こうした調査資料を活用し、自社の課題を検討するとよいでしょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況

 

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11月28日 事業主の証明により円滑化される被扶養者認定

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複数ある年収の壁のうち、「130万円の壁」は健康保険の被扶養者および国民年金第3号被保険者の壁であり、年収130万円(※)以上となることで、国民健康保険および国民年金の保険料の支払いが生じ、手取り収入が減ってしまうというものです。これまでも年収の壁への課題認識はあったものの、最低賃金の大幅な引上げにより就業調整の問題が大きくなり、年収の壁の存在がこれまで以上にクローズアップされています。今回、その対策として被扶養者認定の円滑化が行われることになりました。
※認定・確認対象者が60歳以上または一定の障害者の場合は180万円

※図はクリックで拡大されます。

 

[1]130万円の壁への対応
 130万円の年収の壁については、被扶養者の収入が一時的に増加した場合に、すぐに被扶養者から外すことのないように、厚生労働省から被用者保険の保険者に通知がされていました。ただし、雇用契約書等の書類の提出が求められるなど、認定や資格確認に多くの時間を要することもありました。
 そこで今回、パートタイマーやアルバイト等が繁忙期に労働時間を延ばすことなどにより、収入が一時的に増加したとしても、事業主がその旨を証明することで、認定や資格確認が円滑に進む仕組みが設けられました。

[2]一時的な収入の増加
 一時的な収入増加とは、主に時間外勤務手当や臨時的に支払われる繁忙手当等が支給されたことが想定されています。主なケースとしては、以下が示されています。

  • 他の従業員が退職したため、労働者の業務量が増加した
  • 他の従業員が休職したため、労働者の業務量が増加した
  • 業務の受注が好調だったことにより、会社全体の業務量が増加した
  • 突発的な大口案件により、会社全体の業務量が増加した

 ただし、基本給が上がった場合や、恒常的に支給される手当が新設された場合など、引き続き収入が増えることが確実な場合は、一時的な収入増加とは認められません。

 

[3]事業主が行う証明
 被扶養者については、新たに被扶養者の認定を受ける際や被用者保険の保険者が被扶養者の資格確認を行う際に年間収入が確認されます。このタイミングで、被扶養者が勤務する会社で一時的な収入変動である旨の証明(厚生労働省から様式の公開あり)を発行してもらい、被保険者である家族が勤務している会社を通じて各被用者保険の保険者に対して、通常提出が求められる書類と併せて、この事業主の証明を提出することになります。
 このため、各被用者保険の保険者が行う被扶養者の資格確認のタイミング等に合わせて、被扶養者の勤務する事業主から一時的な収入増加である旨の証明を取得することになります。

 最終的な被扶養者の認定や資格確認の判断は、被用者保険の保険者が行うことになります。事業主の証明があれば必ず認められるとは限りませんので、運用する際には十分な注意が必要になります。なお、事業主の証明で認められるのは連続2回までとされています。

■参考リンク
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ

 

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11月21日 2024年4月から変わる労働条件「就業場所・業務の変更の範囲」の明示ルール

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

労働契約締結の際や有期労働契約の更新のタイミングごとに、すべての労働者に対し労働条件を明示する必要があります。
明示事項である「就業場所」と「業務の内容」は、現在は雇入れ直後のものを明示すれば足りるとされていますが、2024年4月以降は、これらに加えて「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要となります。そこで今回は、その具体的な記載方法や注意点についてとり上げます。

[1]就業場所・業務の変更の範囲の記載方法
今回追加となる「就業場所・業務の変更の範囲」とは、今後の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や従事する業務の範囲のことを指します。そのため、将来の可能性も含めたうえで、その範囲を明示していくことになりますが、就業場所・業務がどの程度限定されるかによって、記載が異なります。以下ではいくつか記載例を紹介します。

  1. 就業場所・業務に限定がない場合
    • 就業場所
       (雇入れ直後)〇〇営業所 (変更の範囲)会社の定める営業所
    • 従事すべき業務
       (雇入れ直後)〇〇に関する業務 (変更の範囲)会社の定める業務
  2. 就業場所・業務の一部に限定がある場合
    • 就業場所
       (雇入れ直後)〇〇営業所 (変更の範囲)◇◇県内の営業所
    • 従事すべき業務
       (雇入れ直後)〇〇企画業務 (変更の範囲)本社における〇〇または△△の企画業務
  3. 就業場所や業務の変更が想定されない場合
    • 就業場所
       (雇入れ直後)〇〇営業所 (変更の範囲)〇〇営業所
    • 従事すべき業務
       (雇入れ直後)〇〇企画業務 (変更の範囲)〇〇企画業務

正社員については、上記1の「就業場所・業務に限定がない場合」に該当することが多いかと思いますが、「会社の定める営業所」「会社の定める業務」と記載するほか、変更の範囲を一覧表として添付することも考えられます。後になってトラブルとならないように、できる限り就業場所・業務の変更の範囲を明らかにし、労使で共通認識を持つことが求められます。

 

[2]適用のタイミング
今回の改正は、2024年4月1日以降に締結される労働契約から適用されます。そのため、2024年4月1日入社の従業員について、2024年3月31日以前に労働契約を締結する場合は改正前のルールが適用され、新たな明示ルールに基づく明示は不要です。
なお、労働条件に関する従業員の理解を深めるために、2024年3月31日以前から新たなルールにより対応することは、望ましい取組みとされています。

就業場所・業務の変更の範囲の明示方法については、厚生労働省発行のパンフレット「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」にもさまざまな記載例が紹介されています。早めにどのように記載する必要があるのかを検討し、労働条件通知書のひな形を直しておきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます
厚生労働省「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?

 

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11月14日 最低賃金引上げに伴い賃上げに取り組む企業への公的支援

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2023年度の最低賃金は、過去最大の引上げ幅となりました。この引上げに伴い、賃上げに取り組む企業への公的支援が設けられています。助成金には予算額が設けられているため、いざ活用しようと考えたときに、受付が終了している可能性があります。
活用される場合は、早めに検討しましょう。

 

[1]業務改善助成金
業務改善助成金とは、事業場内で最も低い賃金を30円以上引き上げ、設備投資等を行った中小企業・小規模事業者等に、設備投資等の費用の一部を助成する制度です。
事業場内の最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内の事業場が対象となります。例えば地域別最低賃金が950円で、事業場内の最低賃金が985円の場合、差額が50円以内であることから対象となります。また、2023年8月31日より、事業場規模が50人未満で、2023年4月1日から2023年12月31日までに事業場内の最低賃金の引き上げを実施した場合は、賃金引き上げ後に申請することも可能です。
費用の助成率は、下表のとおりです。なお、引き上げる労働者の数と引上げ額の区分に応じて、助成上限額が設けられています。※図はクリックで拡大されます。

[2]キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金に設けられている「賃金規定等改定コース」は、有期雇用労働者等の基本給を定める賃金規定等を3%以上増額する形で改定し、その規定を適用させた場合に助成されるものです。要件としては、以下のすべてに当てはまる必要があります。

  1. キャリアアップ計画の作成・提出
    賃金規定等を増額改定する前日までにキャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局へ提出していること。
  2. 賃金規定等の適用
    有期雇用労働者等の基本給を賃金規定等に定めていること。
  3. 賃金アップ
    2.の賃金規定等を3%以上増額改定し、改定後の規定に基づき6ヶ月分の賃金を支給していること。

3%以上5%未満増額改定した場合に1人当たり5万円(大企業3.3万円)、5%以上増額改定した場合に6.5万円(大企業4.3万円)が助成されます。1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は100人までです。

 

■参考リンク
厚生労働省「最低賃金引き上げに伴う支援を強化しています
厚生労働省「業務改善助成金
厚生労働省「キャリアアップ助成金」

 

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