10月8日 協会けんぽの被扶養者資格の再確認

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

全国健康保険協会(以下、「協会けんぽ」という)では、健康保険の被扶養者になっている人について、毎年一定の時期に被扶養者の要件に該当しているかの確認(以下、「再確認」という)を行っています。今年度は、10月下旬から11月上旬にかけて確認のための被扶養者状況リストが各事業所に送付されることになっていることから、今回は、再確認の実施状況とその際の注意点をとり上げます。

[1]再確認の目的と2023年度実施の状況
 健康保険の被扶養者は、健康保険料を支払うことなく、一定の保険給付が受けられます。そのため、要件に該当しない被扶養者が被扶養者となっていることで、医療費が増加し、さらには高齢者納付金も不当に高くなり、その結果、保険料が増加することとなります。被扶養者資格の再確認は、それを防止する目的で実施されています。
 昨年度(2023年度)実施の際には、被扶養者から削除となった人は約7.1万人(2024年3月31日現在)となっており、結果、10億円程度の前期高齢者納付金の負担削減効果が見込まれたと公表されています。被扶養者から削除となった主な理由としては、「就職して健康保険の資格を取得したものの、被扶養者から解除する届出を年金事務所へ提出していない」というものが多くを占めています。

[2]再確認時の注意点
 再確認は協会けんぽから会社に送付されてくる状況リストに従い、再確認時点で加入している被扶養者について、その要件を満たしているかを、書面や口頭で、各被保険者(従業員)に対して行います。
 再確認時の注意点として、被保険者と別居している被扶養者がいるケースでは、仕送りの事実と仕送り額の確認できる書類を提出する必要があります(※)。具体的には、振込の場合は預金通帳の写し、送金の場合は現金書留控えの写しを提出する必要があります。預金通帳の写しを提出する場合で、仕送りとは関係のない箇所が見られたくないときはマスキング(黒く塗りつぶす等)をして差し支えありません。
 ※学生の場合はこの提出を省略できます。

 また、昨年11月に厚生労働省より「年収の壁・支援強化パッケージ」が示され、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、迅速な被扶養者認定を可能とする方針が示されました。今回の書類の提出にあたって、被扶養者の収入確認を行った際に、年収が130万円(被扶養者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害を有する者の場合は180万円)以上の場合で、人手不足による労働時間の延長等に伴い、一時的に収入が増加していることが確認できた場合は、被扶養者が勤務する会社で一時的な収入変動である旨の証明を発行してもらい、併せて提出することが必要です。

 提出期限は2024年11月29日ですが、従業員に被扶養者の要件を満たしていることが確認できる書類を準備してもらうケースがあるため、早めに依頼しましょう。

 

■参考リンク
協会けんぽ「事業主・加入者のみなさまへ「令和6年度被扶養者資格再確認について」
協会けんぽ「事業主・加入者のみなさまへ「令和5年度被扶養者資格の再確認にご協力いただきありがとうございました

 

 

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10月1日 30.1%まで上昇した男性の育児休業取得率

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

近年、国として男性の育児休業の取得を促進しており、実際に多くの企業で育児休業を取得する男性従業員が増加しています。そこで、厚生労働省が先日公表した「令和5年度雇用均等基本調査」(以下、「調査」という)の中から、最新の男性の育児休業取得率と育児休業の取得期間、そして今後対象企業の拡大が予定される育児休業等の取得率の公表についてとり上げます。

[1]男性の育児休業取得率と育児休業の取得期間
 男性の育児休業の取得率は長年低迷していましたが、社会の変化や政策の後押しもあり、ここ数年、急速に取得率が上昇しており、2023年度は30.1%となりました。前年度(17.13%)から13.0ポイントの大幅上昇となり、調査以来、過去最高となりました。
 男性の育児休業はこれまで数日間など、非常に短いものが多いとされてきましたが、2023年度の育児休業の取得期間(2022年4月1日から2023年3月31日までの1年間に育児休業を終了し、復職した男性の育児休業期間)は長期化の傾向が見られ、「1ヶ月~3ヶ月未満」が最多となりました。育児休業の取得期間の割合を2018年度、2021年度と比較してみると、下表のようになります(※表はクリックで拡大されます)。2週間以上取得する人の割合が増えていることがわかります。

[2]男性の育児休業等の取得率の公表
 今回の男性の育児休業取得率の上昇の背景には、2022年10月に出生後育児休業が創設されたこともありますが、育児・介護休業法により従業員数1,000人を超える企業に対して、男性の育児休業等の取得率の公表が義務付けられたことが関係していると言われます。この公表義務の対象となる企業が、2025年4月より従業員数300人を超える企業に拡大されます。

 この公表の義務対象企業の拡大により、来年度以降、更なる男性の育児休業等の取得が進むことになるでしょう。男性も育児休業を取得するのは当たり前という雰囲気が社会的に醸成されることにより、公表義務のない中小企業においても男性からの育児休業等取得の申し出は増加するはずです。そのようなときに業務が混乱するようなことがないよう、いまから体制整備を行っておきたいものです。

■参考リンク
厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査
厚生労働省「育児・介護休業法について

 

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9月24日 マイナ保険証への一本化 健康保険証の廃止とその後の対応

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2024年12月2日から、現在の健康保険証の新規発行が廃止され、マイナンバーカードを健康保険証として利用登録した「マイナ保険証」の本格的な利用が始まります。
そこで、マイナ保険証の本格的な利用に合わせて確認しておきたい内容についてとり上げます。

[1]健康保険証の廃止
 従業員が健康保険の被保険者となり、また従業員の家族が健康保険の被扶養者となったときには、協会けんぽ等の健康保険の保険者から健康保険証が発行されます。
この健康保険証の新規発行が、2024年12月2日以降、行われなくなります。なお、2024年12月1日までに発行された健康保険証は、経過措置として2025年12月1日まで使用できます。
2025 年12月1日までに従業員が退職すること等で使用できなくなった健康保険証は、これまで通り、会社で回収する必要がありますが、2025年12月2日以降、使用できなくなった健康保険証は、従業員自身で破棄することが認められます。

 

[2]資格情報のお知らせ
 マイナ保険証の本格的な利用に伴い、2024年9月以降、協会けんぽから、会社を経由して、加入している被保険者および被扶養者の全員に「資格情報のお知らせ」が届く予定となっています。このお知らせには、被保険者資格等の基本情報が記載されており、マイナ保険証を安心して利用できるようにするとともに、協会けんぽに加入している人自身が、健康保険の資格情報を簡易に把握できるようにするために行われるものです。
お知らせの中には、医療保険のデータベースに登録されているマイナンバーの下4 桁も表示されることになっており、データベースにマイナンバーが登録されているかの確認もできます。
なお、マイナンバーを協会けんぽに提出していない場合は、当然記載されていません。マイナンバー提出のための申出書が同封されるため、この機会に提出し、マイナ保険証の利用を促し
たいところです。

 

[3]資格確認書
 マイナンバーカードを作っていない人や、マイナ保険証の利用登録をしていない人もいます。
このような人は、協会けんぽから交付される資格確認書を提示することにより、これまで通りの保険診療を受けられるようになります。ただし、資格確認書を用いるときには、マイナ保険
証を利用することで受けられるメリットを受けることができません。
協会けんぽの資格確認書は、従来の健康保険証と同じプラスチックカード型のもので、色が黄色となるとのことです。4~5年の有効期限が設けられるため、4 ~5年に1度の差し替え
が必要になります。

 健康保険証の廃止とその後の対応は、従業員やその家族に大きな影響があります。会社としても従業員に早めに周知し、マイナンバーカードの作成や、マイナ保険証の利用登録を勧めることを検討したいところです。

 

■参考リンク
厚生労働省「マイナンバーカードの保険証利用について(被保険者証利用について)」

 

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9月17日 企業に求められる過労死等防止のための対策

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2014年6月に過労死等防止対策推進法が成立してから10年が経過しました。これまで同法に基づき策定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(以下、「大綱」という)において、様々な取り組みが定められ、推進されてきましたが、この大綱が2024年8月に変更されました。そこで以下では、今回の変更箇所の中から主要な事項についてとり上げます。

 

[1]時間外労働の上限規制の遵守徹底
 今年4月より、すべての事業所で時間外労働の上限規制が適用されています。これを受けて、労働基準監督署において、その遵守徹底を図ることとしています。
 また、商慣行・勤務環境等を踏まえた取組みとして、以下のように業種等の分野ごとの取組事項が示されました。

【例:トラック運送業】

  • 緊急増員したトラックGメンによる是正指導の大幅強化や「標準的運賃」の8%引き上げ改定により、取引環境の適正化に向けた取組を推進する。
  • 2024年4月に、構造的な対策として、物流効率化や賃上げ原資確保のための適正な運賃導入を進める法律が成立したことを受け、同法の施行に向けて政省令等の整備を進める。
  • 2024年通常国会に、処遇改善に向けた賃金原資の確保と下請事業者までの行き渡り、資材価格転嫁の円滑化による労務費へのしわ寄せ防止、更には、働き方改革や現場の生産性向上を図ることを内容とする法律が成立したことを受け、それに基づく取組を推進する。 

[2]過労死等を発生させた企業に対する再発防止対策
 過労死等を発生させた事業場に対しては、監督指導または個別指導を実施し、企業本社における全社的な再発防止対策の策定を求める指導を実施するとしています。
 また、一定期間内に複数の過労死等を発生させた企業に対しては、企業の本社を管轄する都道府県労働局長から「過労死等の防止に向けた改善計画」の策定が求められ、同計画に基づく取組を企業全体に定着させるための助言・指導(過労死等防止計画指導)を実施するとしています。

 

[3]多様な働き方への対応
 テレワーク、副業・兼業、フリーランスといった多様な働き方について、それぞれの労働環境の状況に応じた取組みが推進されます。特にフリーランスについては今年11月に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」が施行されることから、この周知と施行後の履行確保に向けた取組みが行われます。

 

[4]過労死等防止対策の数値目標
 労働時間、勤務間インターバル制度、年次有給休暇、メンタルヘルス対策について、数値目標が設定されています。
 この中で労働時間については、2028年までに週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下(2023年8.4%)とすることが掲げられています。年次有給休暇については、2028年までに取得率を70%以上にすることが掲げられています。

 慢性的な人手不足に陥っている企業が増加しており、そうした企業においては残業や休日出勤によってサービスレベルを維持しているというケースも少なくありません。過重労働は従業員の命や健康を脅かす危険性がありますが、それ以前に従業員の離職の原因にもなります。安定的な人材確保のためにも、業務改善を通じた過重労働の防止を進めましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更が本日、閣議決定されました

 

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9月10日 2023年度の労基署監督指導における賃金不払事案件数は21,349件

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先月、厚生労働省は「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和5年)」を公表しました。これは2023年1月から2023年12月までに、全国の労働基準監督署が、賃金不払が疑われる事業場に対して実施した監督指導の結果を取りまとめたものです。以下ではその結果と実際の監督指導の事例をとり上げます。

 

[1]監督指導状況
 2023年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数及び金額は以下のとおりです。

 件数 21,349件(前年比 818件増)
 対象労働者数 181,903人(同 2,260人増)
 金額 101億9,353万円(同 19億2,963万円減)

 これらの賃金不払事案のうち、令和5年中に会社が賃金を支払い、解決した最大の事案の支払金額は2.3億円でした。一方、この件数を業種別にみてみると、商業の4,407件が一番多く全体の21%を占め、製造業4,174件、保健衛生業3,261件、接客娯楽業2,685件、建設業2,047件と続いています。

 

[2]監督指導の対象となった事案
 本結果の中では「監督指導による是正事例」が紹介されています。自社の労働時間管理の在り方を見直す際の参考となりますので、ここでは労働時間の適正な把握に関する指導事例をとり上げます。

[概要]
 過重労働による労災請求がなされたことを受け、労働基準監督署が立入調査を実施。

  • 労働時間は、勤怠システムにより管理を行っているが、当該システムに搭載された端数処理機能を用いて、日ごとの始業・終業時刻のうち15分未満は切り捨て、休憩時間のうち15分未満は15分に切り上げる処理が行われていた。
  • 着用が義務付けられている制服への着替えの時間を、労働時間としていなかった。

[労働基準監督署の指導]

  1. 労働時間を適正に把握するための具体的方策を検討・実施すること。
  2. 過去に遡って、労働時間の状況について労働者に事実関係の聞き取りを行うなど、実態調査を行い、実際の支払額との差額の割増賃金の支払いが必要になる場合は、追加で支払うこと。

 その後の対応として、会社は、正しい労働時間数を把握し、再計算の上、差額の割増賃金を支払ったようです。また、勤怠システムの設定を見直し、始業・終業時刻の切り捨て、休憩時間の切り上げ処理をやめ、1分単位で労働時間を管理することとし、制服への着替えの時間についても労働時間とすることとしました。

 労働時間管理は労務管理の基本となります。過重労働を防止すると共に、賃金不払残業を発生させないよう、労働時間の適正把握、管理を徹底していきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和5年)を公表します

 

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9月3日 無用な解雇トラブルを防止するために知っておきたい解雇予告の注意点

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

従業員が重大な問題を起こしたり、勤務成績や業務の能率が著しく不良で会社が何度も指導を行っていたにも関わらず、改善が見られないといった理由により、従業員を解雇せざるを得ないケースがあります。解雇は従業員の働く場を奪うことになり、大きなトラブルに発展することも少なくありません。そこで、今回は解雇を行う際に求められる手続きについて解説します。

 

[1]解雇と解雇予告
 そもそも解雇とは、会社から一方的に労働契約を終了させることですが、解雇するときには少なくとも30日前までに予告をするか(解雇予告)、30日前までに予告せず解雇する場合には30日分以上の平均賃金を支払う(解雇予告手当)必要があります。なお、解雇予告と解雇予告手当の支払いを併用することも可能であり、解雇予告手当を支払った日数について、解雇予告の日数を短縮する(例えば10日前に解雇の予告を行い、併せて20日分の平均賃金を支払う)ことも認められています。

[2]解雇予告を行う際の注意点
 解雇予告は、会社からの解雇する意思が従業員に伝わったところで効力が発生することから、いつの時点で伝わったかを確認しておく必要があります。通知方法には口頭によるものと文書によるものがあり、口頭の場合は申渡しがなされたとき、文書の場合は従業員にその文書が届き、その内容を知り得る状態におかれたときとなります。なお、口頭の場合は後々、「言った、言わない」などのトラブルに発展しやすいため、口頭で申渡した上で、文書を交付することが望ましいでしょう。

 

[3]解雇予告手当を支払う際の注意点
 事前に解雇予告を行わず、即時解雇を行う場合には解雇予告手当として30日分以上の平均賃金の支払いが必要となりますが、この解雇予告手当の支払いは、解雇の申渡しと同時に行うことになっています。なお、解雇予告と解雇予告手当の支払いを併用するときには、解雇日までに解雇予告手当を支払うことになっています。

 解雇を行う際の手続きはこのようになっていますが、そもそも解雇は会社が自由に行うことができるものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効となります。つまり、解雇事由の内容や程度がその有効性判断のポイントとなり、雇用を継続することができないという状況に至ってはじめて解雇を行うことが認められます。そのため、会社としては、問題行動が見られた際や勤務成績や業務の能率に問題があるときには、その都度注意・指導を行い、その際の対応記録を残しておくことが重要になります。解雇を行う際の手続きを守れば解雇ができるわけではない点に十分注意しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール

 

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8月27日 電子申請が義務となる労働安全衛生関係の手続き

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社会保険の手続きを始めとし、様々な手続きについて、徐々に電子化される流れが進んでいます。これは、電子申請の義務化や、電子申請の利便性が向上したことの影響が大きいと言われています。そして、2025年1月からは、労働安全衛生関係の一部の手続きについて電子申請が義務化されることが決まっています。

 

[1]電子申請の対象となる手続き
 電子申請が原則義務化されるのは以下の手続きです。

  • 労働者死傷病報告
  • 総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告
  • 定期健康診断結果報告
  • 心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)結果等報告
  • 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
  • 有機溶剤等健康診断結果報告
  • じん肺健康管理実施状況報告

 義務化される手続き以外にも、足場/局所排気装置等の設置・移転・変更届(労働安全衛生法第88条に基づく届出)、特定化学物質などにかかる各種特殊健康診断結果報告など、多くの届出が電子申請することができます。

[2]電子申請のメリット
 電子申請を活用することで、労働基準監督署へ出向くことなく、時間や場所にとらわれず手続きすることが可能となります。電子申請と聞くと、電子署名や電子証明書が必要なイメージがありますが、電子申請が義務化される手続きにおいては不要です。なお、電子申請を行う際には以下の3ステップが求められます。

STEP1 e-Govアカウント登録
STEP2 ブラウザの設定
STEP3 アプリケーションのインストール

[3]労働者死傷病報告の提出に際して誤解しやすい点
 電子申請が義務化される手続きのなかで、労働者死傷病報告の提出について誤解しやすいポイントがありますので、改めて確認しましょう。労働者死傷病報告は、労災保険の休業補償給付を受けたときに提出するものだと誤解されることがありますが、労働災害が発生した際に提出すべきものであるため、休業4日未満で労災保険の休業補償給付を受けない場合であっても、提出する必要があります。これは、労働者死傷病報告の目的が労災事故を把握し、事故の防止につなげることにあるためです。提出する根拠は、労災保険法ではなく、労働安全衛生法および労働安全衛生規則にあります。

 電子申請の義務化まで数ヶ月ありますが、今のうちから電子申請に対応できるように準備を進めておきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます
厚生労働省「労働局・労働基準監督署への申請・届出はオンラインをご活用ください

 

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8月20日 引き続きトップとなった「いじめ・嫌がらせ」の相談件数

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先月、厚生労働省より「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」の集計結果(以下、「集計結果」という)が公表されました。個別労働紛争解決制度とは、個々の労働者と事業主との間の労働に関する紛争について実情に即した迅速かつ適正な解決を図るためのものであり、具体的には、(1)都道府県労働局内や労働基準監督署内に設置された総合労働相談コーナーでの総合労働相談、(2)都道府県労働局長の助言・指導制度、(3)紛争調整委員会のあっせん制度の3つの仕組みがあります。

 

[1]集計結果の内容
 今回の集計結果をみると、令和5年度に寄せられた総合労働相談件数は1,210,400件と4年連続で120万件を超え、高止まりの状態となっています。
 また、労働基準法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げ等のいわゆる民事上の個別労働紛争に関する相談件数の推移をグラフ化したのが下図※になります。内容別で見ると、トップは「いじめ・嫌がらせ」に関する相談の122,976件で、不動の首位となっています(図はクリックで拡大されます)。
※2022年4月の改正労働施策総合推進法の全面施行に伴い、これまで「いじめ・嫌がらせ」に含まれていた同法上のパワーハラスメントに関する相談は全て別途集計することとなされたため、労働施策総合推進法に関するパワーハラスメントの相談件数(2022年は50,840件、2023年は62,863件)を加えています。

[2]パワーハラスメントの実態と防止措置
 「いじめ・嫌がらせ」は、パワーハラスメントの一類型となりますが、2024年5月に公表された令和5年度厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書によると、過去3年間に勤務先で受けたハラスメントとしては、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為の中では、パワーハラスメントが19.3%ともっとも多く、次いで顧客等からの著しい迷惑行為が10.8%、セクシュアルハラスメントが6.3%となっています。


 受けたパワーハラスメントの内容については、「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)」が48.5%ともっとも多くなっています。パワーハラスメントの防止対策のため、社内で研修を実施することがありますが、例えば「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)」との指摘を受けることなくコミュニケーションを図るため、どのように注意すべきかを具体的に解説して、受講する従業員に理解してもらうとよいでしょう。

 そもそも労働トラブルに発展させないための、予防的な労務管理が重要になってきます。取り組む際に何かお困りごとがございましたら早めに当事務所までご連絡ください。

 

■参考リンク
厚生労働省「「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します
厚生労働省「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況について
厚生労働省「「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します

 

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8月6日 2025年4月から厳格化される育児休業給付の延長手続き

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育児休業の延長・再延長時には、一定の要件を満たした場合、雇用保険の育児休業給付金についても支給が延長されることになっています。2025年4月1日より、この育児休業給付金の延長・再延長時の手続きが厳格化されます。以下では、この内容をとり上げます。

[1]手続き変更の背景

 今回、延長・再延長時の育児休業給付金の手続きの変更に関しては、令和5年の地方分権改革に関する提案募集において、自治体から「保育所等への入所意思がなく、給付延長のために申し込みを行う者への対応に時間が割かれる」、「意に反して保育所等への入所が内定となった方の苦情対応に時間を要している」として、見直しの要望があったという背景があります。これを受けて、「令和5年の地方からの提案等に関する対応方針」(2023年12月22日閣議決定)において、ハローワークで延長可否を判断することを明確化する方向で検討が行われ、検討の結果に基づいて必要な措置を講ずるとされていました。今回、これを受けて、雇用保険法施行規則が改正され、手続きの見直しが行われました。

[2]2025年4月以降の手続き
 2025年4月以降の延長時には、市区町村の発行する入所保留通知書などの確認に加え、保育所等の利用申し込みが、速やかな職場復帰のために行われたものであると認められることが必要になります。具体的には、次の書類を、延長時・再延長時の「育児休業給付金支給申請書」に必ず添付する必要があります。

  • 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
  • 市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し
  • 市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(入所保留通知書、入所不承諾通知書など)

 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書については、既に厚生労働省のホームページにおいて様式が公開されています。様式には保育所等の申込みの状況を記載することになります。裏面には記入する上での注意事項があり、従業員本人から会社に記載について質問が入る可能性があるため、先に目を通しておくとよいでしょう。

 今回の変更となる手続きの対象は、子が1歳に達する日または1歳6ヶ月に達する日が2025年4月1日以後となる従業員で、育児休業給付金の支給対象期間の延長を行う場合となります。円滑な手続きの実施のためには、書類を揃えておくように事前に従業員に案内しておくことが重要になります。厚生労働省から公開されているリーフレットを活用するなどして、早めに対象となる従業員に周知しておきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「育児休業給付金の支給対象期間延長手続き
厚生労働省「2025年4月から保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります

 

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7月30日 増加する精神障害の労災支給決定件数 求められるハラスメント対策

こんにちは、福岡支援助成金センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。

多くの企業で、従業員がメンタルヘルス疾患を発症し、欠勤や休職をするケースが増加しています。その中には、仕事による強いストレスがその原因となっている事例もあるようです。2024年6月に発表された厚生労働省の資料によると、精神障害を理由とした労災の請求件数、そして支給決定件数が大幅に増加しています。そこで以下では発表された資料の内容を確認した上で、企業に求められる対策について見ていきます。

 

[1]精神障害の労災補償状況
 精神障害の労災補償状況は図のとおりとなっています。2023年度の請求件数は3,575件で、前年度の2,683件から892件の大幅増加となりました。請求件数は過去最多となり、今回、3,000件を初めて超えています。

 また、支給決定件数については883件となり、前年の710件から173件の増加となり、こちらも過去最多となっています。そして、支給決定件数の中で、多い業種(中分類)の上位4つをみてみると、社会保険・社会福祉・介護事業112件、医療業105件、総合工事業57件、道路貨物運送業56件で、医療・福祉の業種で多いことが分かります。認定率については34.2%で、申請の3件に1件の割合で労災として認定されています。
※図はクリックで拡大されます。

 

[2]具体的な出来事
 支給の決定は、その傷病に繋がる具体的な出来事があったかを確認して判断されますが、支給決定の内容を具体的な出来事別に分類すると、その上位は以下の通りとなっています。

  1. 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(157件)
  2. 業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(111件)
  3. セクシュアルハラスメントを受けた(103件)
  4. 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった(100件)
  5. 特別な事情(71件)
  6. 同僚等から、暴行又はひどいいじめ・嫌がらせを受けた(59件)

 支給決定件数(883件)のうち、上司等からのパワーハラスメント(157件)がトップとなっています。近年は多くの企業でパワーハラスメント防止対策が進められていますが、この問題はまだまだ解決には至っていません。定期的に研修を開催したり、管理職同士で注意しあえる関係を作ったりするなど、継続的な防止対策が求められます。

 

■参考リンク
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

 

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